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past2(ローランド)
episode31
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「はっ、はっ、はぁっ」
唇が熱い。
兄であるローランドのあんなに怯えた顔は初めて見た。
静かにアルマを見下ろす視線が微かに揺れていた。
アルマの体を抱き上げた両腕も微かに震えていた。
なぜ?どうして?
ローランドに言われるままあの部屋を飛び出して息を切らしながら走った。
何時もはカーテンで目隠しがされているガラスの扉越しに中を伺うと、男が二人、テーブルを囲んで言い合いをしているようだった。
一人はローズ寮管理長のカルヴィン。
もう一人は学園の理事長であるフィリップだ。
意を決して扉を開ける。
「ッ彼とはどんなご関係で?・・・まさか、ッ」
「だからさっきも説明したでしょう!ここの学生の頃から私は殿下を慕っていますが、別に貴方が想像しているような関係では──、ん?」
大理石をアルマのローファーのヒールが叩き、言い争っていた二人の視線が傷だらけの少年に集まる。
「アルマ様ッ!?」
一番に駆け付けたカルヴィンが少年の身体中の傷に悲鳴を上げる。
「アルマ様、そんなに傷だらけで一体どこに──あ、」
カルヴィンは気付いていないようだったが、少年の傷やアザの付き方にフィリップは見覚えがあった。
太ももや首筋、鎖骨に集中する虫刺されのような赤い痕。
切れた唇に何より今にも泣き出してしまいそうな顔がいつかのローランドの姿と重なる。
「・・・ッカルヴィン殿、アルマ様に万が一があってはいけない。今すぐ医者とエドウィン殿に遣いを出してきて下さい」
「は?、、あぁ、わかりました」
少し不服そうな顔をしてカルヴィンが部屋を出ていくのをフィリップが見送り、再度アルマに向き直る。
「兄上が、兄上が、」
上気した顔で必死にフィリップに訴えかけるが、興奮しているのかイマイチ要領を得ない。
「・・・アルマ様、落ち着いて下さい。ローランド殿下がどうされたんですか?」
フィリップが焦りを押さえてじっとアルマを見つめる。
「アルマ様、兄君は今どこか分かりますか?」
唇を震わせたアルマがコクリと首を縦に振った。
「隠し部屋に──!」
唇が熱い。
兄であるローランドのあんなに怯えた顔は初めて見た。
静かにアルマを見下ろす視線が微かに揺れていた。
アルマの体を抱き上げた両腕も微かに震えていた。
なぜ?どうして?
ローランドに言われるままあの部屋を飛び出して息を切らしながら走った。
何時もはカーテンで目隠しがされているガラスの扉越しに中を伺うと、男が二人、テーブルを囲んで言い合いをしているようだった。
一人はローズ寮管理長のカルヴィン。
もう一人は学園の理事長であるフィリップだ。
意を決して扉を開ける。
「ッ彼とはどんなご関係で?・・・まさか、ッ」
「だからさっきも説明したでしょう!ここの学生の頃から私は殿下を慕っていますが、別に貴方が想像しているような関係では──、ん?」
大理石をアルマのローファーのヒールが叩き、言い争っていた二人の視線が傷だらけの少年に集まる。
「アルマ様ッ!?」
一番に駆け付けたカルヴィンが少年の身体中の傷に悲鳴を上げる。
「アルマ様、そんなに傷だらけで一体どこに──あ、」
カルヴィンは気付いていないようだったが、少年の傷やアザの付き方にフィリップは見覚えがあった。
太ももや首筋、鎖骨に集中する虫刺されのような赤い痕。
切れた唇に何より今にも泣き出してしまいそうな顔がいつかのローランドの姿と重なる。
「・・・ッカルヴィン殿、アルマ様に万が一があってはいけない。今すぐ医者とエドウィン殿に遣いを出してきて下さい」
「は?、、あぁ、わかりました」
少し不服そうな顔をしてカルヴィンが部屋を出ていくのをフィリップが見送り、再度アルマに向き直る。
「兄上が、兄上が、」
上気した顔で必死にフィリップに訴えかけるが、興奮しているのかイマイチ要領を得ない。
「・・・アルマ様、落ち着いて下さい。ローランド殿下がどうされたんですか?」
フィリップが焦りを押さえてじっとアルマを見つめる。
「アルマ様、兄君は今どこか分かりますか?」
唇を震わせたアルマがコクリと首を縦に振った。
「隠し部屋に──!」
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