27 / 63
past2(ローランド)
episode27
しおりを挟む
「やれやれ、王子達のやりたい放題には困ったものですなッ!」
ローズ寮の管理長カルヴィンが大きなため息を漏らす。
「と、言いますと?」
理事長のフィリップが紅茶の入ったカップを机に置き、不機嫌そうな顔を誤魔化すようにカルヴィンの話に首を傾げた。
「アルマ様は他の王子と違って真面目な方であると思っていたが、どこを探しても見当たらないんです」
「見当たらない?」
「ええ、寮を隅から隅まで探しましたが。心配ですよ。・・・ああ、そう言えばアルマ様をお探ししている際にローランド殿下にお会いしましたな。それも隠し部屋で」
カルヴィンが不潔だと小声で吐き捨てる様に言うのをフィリップが咎める。
「・・・寮には在籍していた過去もある。いらっしゃってもおかしくないでしょう?」
フィリップが気付かれないようにカウチの方に視線を向け、小さくため息をつく。
「ローランド様の学生時代は今にもましてだいぶ荒れていたそうじゃないですか。彼が今もこの寮で生徒を誑かしているなら!それに、私が隠し部屋を見つけたのだって、生徒達が扉の向こうにアルマ様と見知らぬ美しい男が消えていくのを見たと言うからで──」
「カルヴィン管理長!」
フィリップが席を立ち、押し殺した声で相手をたしなめる。
カルヴィンは知らないが、彼が悪態をつく原因の男は同じ部屋のすぐ側のカウチで横になっているのだ。
「──フフ、俺は随分評判が悪い様だ」
「あッ、ろ───、」
夢中で口を動かしていたカルヴィンが絶句する。
冷えた赤い瞳が奥に置かれたカウチからじっと男を見つめていたからだ。
「アルマならもう教室に戻っている頃だろう。アイツとは自分の足で帰れなくなるほど楽しんでいないからな。そこまで間抜けではないだろ」
丸いテーブルを囲んでいた二人の男の視線が不機嫌そうな声の主に釘付けになる。
カウチが軋み、無造作に金髪をかきあげた男が気だるげに姿を現した。
「ローランド、殿下・・・」
「・・・・」
フィリップの目の前で足を止めたローランドが
、言葉を詰まらせるカルヴィンに見向きもせずに手の甲を差し出す。
「興がさめた。帰る」
「・・・っ」
名残惜しそうにフィリップがローランドの手に口付けると、カルヴィンを一瞥し部屋を出ていった。
ローズ寮の管理長カルヴィンが大きなため息を漏らす。
「と、言いますと?」
理事長のフィリップが紅茶の入ったカップを机に置き、不機嫌そうな顔を誤魔化すようにカルヴィンの話に首を傾げた。
「アルマ様は他の王子と違って真面目な方であると思っていたが、どこを探しても見当たらないんです」
「見当たらない?」
「ええ、寮を隅から隅まで探しましたが。心配ですよ。・・・ああ、そう言えばアルマ様をお探ししている際にローランド殿下にお会いしましたな。それも隠し部屋で」
カルヴィンが不潔だと小声で吐き捨てる様に言うのをフィリップが咎める。
「・・・寮には在籍していた過去もある。いらっしゃってもおかしくないでしょう?」
フィリップが気付かれないようにカウチの方に視線を向け、小さくため息をつく。
「ローランド様の学生時代は今にもましてだいぶ荒れていたそうじゃないですか。彼が今もこの寮で生徒を誑かしているなら!それに、私が隠し部屋を見つけたのだって、生徒達が扉の向こうにアルマ様と見知らぬ美しい男が消えていくのを見たと言うからで──」
「カルヴィン管理長!」
フィリップが席を立ち、押し殺した声で相手をたしなめる。
カルヴィンは知らないが、彼が悪態をつく原因の男は同じ部屋のすぐ側のカウチで横になっているのだ。
「──フフ、俺は随分評判が悪い様だ」
「あッ、ろ───、」
夢中で口を動かしていたカルヴィンが絶句する。
冷えた赤い瞳が奥に置かれたカウチからじっと男を見つめていたからだ。
「アルマならもう教室に戻っている頃だろう。アイツとは自分の足で帰れなくなるほど楽しんでいないからな。そこまで間抜けではないだろ」
丸いテーブルを囲んでいた二人の男の視線が不機嫌そうな声の主に釘付けになる。
カウチが軋み、無造作に金髪をかきあげた男が気だるげに姿を現した。
「ローランド、殿下・・・」
「・・・・」
フィリップの目の前で足を止めたローランドが
、言葉を詰まらせるカルヴィンに見向きもせずに手の甲を差し出す。
「興がさめた。帰る」
「・・・っ」
名残惜しそうにフィリップがローランドの手に口付けると、カルヴィンを一瞥し部屋を出ていった。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる