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拾陸
第82話
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「お母さん、お腹減った・・・」
家具や家電が殆どない生活感ゼロのボロボロのアパートの一室。
机にはカップラーメンや弁当のゴミが散乱している。
「お母さん・・・」
「あ"~~も"~~!ママなんて言った?!」
「・・・「お仕事で疲れてるから声掛けないで」」
「そう。ママすっごく疲れてるの!芥はいい子だから分かるもんね?」
「・・・うん」
派手な衣装の母親が机に項垂れると、六,七歳頃の少年がグーグーと空腹を知らせる腹を抑えた。
「小学校行ってるよね?」
「うん」
「お昼ご飯食べてるからそれで満足でしょ?もうお腹すいたっての?」
母親の強い口調に体をビクつかせると、それを見た女が呆れるように笑った。
「そうやってスグ泣く~!鬱陶しい~!あーあ、せめて女の子産んでりゃ稼げたのにな~」
❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋
「おかえり、母さん。今日は遅かった・・・ね、」
乱暴に叩かれたドアを開けて、少年が静かに眉を寄せる。
「ただいまぁ~!!!芥~!ママにチューして~!」
「お、芥君も中学生か~!感慨深いね!・・・あれ、土曜日なのにどうして制服着てるの?」
母親を抱える男が芥の姿を捉え、ニタリと笑う。
「・・・今日は入学式だったので」
男の腕の中でぐったりとする母親を見つめ、芥が短く返答する。
「そっか~!なるほどね!・・・それとさ」
ホスト風のチャラチャラした茶髪の男で、たまに酔い潰れた母親を連れて帰ってきては、芥に遠慮すること無く所構わずセックスをする。
母もそれをわかって楽しんでいた。
だから、止めることはしなかった。
「俺、明日から学校なのでもう寝ますね」
「えー、寝るの早いじゃん!夜はこれからだよ~!」
男の手が芥の肩に触れ、少年の顔があからさまに嫌悪する。
止めても逆効果なのは随分昔に理解していた。
「今日はリビングですか?」
「・・・ここ?なにが?」
とぼけた男が聞き返す。
男の目は冷たい表情の芥を試すようにじっと見下ろしていて、ニヤニヤと口元が歪んでいる。
どうせ言えないだろうとでも思っているんだろう。
「セックスですよ。ヤるために来たんだろ?同じ部屋で寝るなんて真っ平だ」
表情ひとつ変えずにそう吐き捨てた芥を、男が不機嫌そうに睨みつけた。
「歪んでんなお前。母親に邪魔者扱いされてるのわかってる?」
「・・・っ」
小さなぼろアパートでリビング以外にはひとつしか部屋がなく、今日のように母と男がリビングを使う場合は小さな和室の押し入れに避難して寝ていた。
押し入れは人がひとり寝転がることが出来る位の狭い所だが家の中で一番落ち着ける場所だった。
部屋で寝ると聞こえて来る大きな嬌声も、押し入れに入ってしまえばいくらかマシになる。
それでもくぐもった母親の嬌声は耳にこびりつく。
男の情けない声に舌打ちをして枕を押し当てると、知らぬ間に眠っていた。
家具や家電が殆どない生活感ゼロのボロボロのアパートの一室。
机にはカップラーメンや弁当のゴミが散乱している。
「お母さん・・・」
「あ"~~も"~~!ママなんて言った?!」
「・・・「お仕事で疲れてるから声掛けないで」」
「そう。ママすっごく疲れてるの!芥はいい子だから分かるもんね?」
「・・・うん」
派手な衣装の母親が机に項垂れると、六,七歳頃の少年がグーグーと空腹を知らせる腹を抑えた。
「小学校行ってるよね?」
「うん」
「お昼ご飯食べてるからそれで満足でしょ?もうお腹すいたっての?」
母親の強い口調に体をビクつかせると、それを見た女が呆れるように笑った。
「そうやってスグ泣く~!鬱陶しい~!あーあ、せめて女の子産んでりゃ稼げたのにな~」
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「おかえり、母さん。今日は遅かった・・・ね、」
乱暴に叩かれたドアを開けて、少年が静かに眉を寄せる。
「ただいまぁ~!!!芥~!ママにチューして~!」
「お、芥君も中学生か~!感慨深いね!・・・あれ、土曜日なのにどうして制服着てるの?」
母親を抱える男が芥の姿を捉え、ニタリと笑う。
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「そっか~!なるほどね!・・・それとさ」
ホスト風のチャラチャラした茶髪の男で、たまに酔い潰れた母親を連れて帰ってきては、芥に遠慮すること無く所構わずセックスをする。
母もそれをわかって楽しんでいた。
だから、止めることはしなかった。
「俺、明日から学校なのでもう寝ますね」
「えー、寝るの早いじゃん!夜はこれからだよ~!」
男の手が芥の肩に触れ、少年の顔があからさまに嫌悪する。
止めても逆効果なのは随分昔に理解していた。
「今日はリビングですか?」
「・・・ここ?なにが?」
とぼけた男が聞き返す。
男の目は冷たい表情の芥を試すようにじっと見下ろしていて、ニヤニヤと口元が歪んでいる。
どうせ言えないだろうとでも思っているんだろう。
「セックスですよ。ヤるために来たんだろ?同じ部屋で寝るなんて真っ平だ」
表情ひとつ変えずにそう吐き捨てた芥を、男が不機嫌そうに睨みつけた。
「歪んでんなお前。母親に邪魔者扱いされてるのわかってる?」
「・・・っ」
小さなぼろアパートでリビング以外にはひとつしか部屋がなく、今日のように母と男がリビングを使う場合は小さな和室の押し入れに避難して寝ていた。
押し入れは人がひとり寝転がることが出来る位の狭い所だが家の中で一番落ち着ける場所だった。
部屋で寝ると聞こえて来る大きな嬌声も、押し入れに入ってしまえばいくらかマシになる。
それでもくぐもった母親の嬌声は耳にこびりつく。
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