とける。

おかだ。

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第50話

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【五年前】

定例会で伊武聡一郎含め公に悪事が知られてしまった事で会から追放された橘だったが、その後が問題だった。

手続きを踏み、全てを明らかにしてから手土産代わりに男を警察に突き出す筈だったが、男が雲隠れしてしまい連絡がつかなくなってしまったのだ。

『喜島、この地図の印をつけたあたりに橘の別荘がある。回って手掛かりがないか調べてこい。も喜島を手伝え』

男を逃がして不機嫌な聡一郎が、机の上へぶっきらぼうに印のつけた地図を放る。

警察も動き始めている為、先に見つかるとマズイ書類などの回収がメインだ。聡一郎からすれば、橘に巻き込まれて会が危険にさらされるのはたまったものでは無いだろう。
勿論、男の行方がわかるものが見つかればなおいい。

『はい!』

隣で元気よく返事をしたのは木下晃貴という男で、喜島は少し苦手だった。
伊武会の分家の子として生まれ、不自由がなかった木下の事を、喜島はあまり理解できなかった。

『喜島さん、分家の木下晃貴って言います。俺今回が仕事初めてで・・・。頼りないかと思いますが、よろしくお願いします』

『え?』

喜島が運転席に座ると、落ち着きがなさそうにおずおずと木下が口を開いた。

『え、あっ、ご挨拶遅くなってごめんなさい』

『いや、そうじゃなくて。俺より年上なんだから気を使わなくていいよ。それに、俺が伊武聡一郎あのひとの養子なの知ってるでしょ?ペコペコしないでいい』

呆気に取られたたまま喜島を見上げる木下の顔がパッと明るくなる。

『はい!』

助手席から聞こえた元気な返事に内心でため息をついて車を走らせ、一時間もすると別荘地が見えてくる。
別荘地から少し外れた林の中に隠れるようにその男の別荘があった。

『・・・あからさまだな』

『?』

車から降りて大きな別荘を見上げると、細長く小さな二階の格子付きの窓から子供の顔が覗いた。怯えた顔だ。

喜島が顔を顰めてぽつりと呟くと、車のトランクからバールを持って玄関に向かう。

『バールで鍵を開ける。危ないから下がってろ』

『?それくらい自分がしますよ』

『いいから、下がってろ』

サングラス越しに睨みつけられて木下が大人しく後ろに下がる。

思った通り別荘の玄関は頑丈に鍵が掛けられていて、ガラス部分も分厚く素材は強化ガラスだろう。

振り上げたバールを力いっぱいガラスに叩きつけるのを数回繰り返すと、蜘蛛の巣のようにひび割れたガラスが次の瞬間に地面にバラバラと崩れ落ちた。

割れた隙間から腕を入れて鍵を開けた。
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