とける。

おかだ。

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第36話

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「んッ、やっっめ!!は、なれろ!!」

力が抜けて言う事を聞かない腕の代わりに、足を使って思いっきり突っ張る。

自分を押し倒す男の胸板にいつの間にか裸足にされた自分の足が当たるのが見えて、喉の奥が恐怖で震える。

「んだよ!これからだって時にっ!!」

「暴れやがって。抑えといてやるから静かにさせろ!」

「ッおい!酒よこせ!!それぶっかけてまた黙らせればいい」

四方八方から三人の男の腕が伸びてきて陽真の手足をベッドに縫い付ける。

「っやだ!やめろッ離せ!さわるなぁ!!」

じたばたと両手両脚をばたつかせて力の限り声を張り上げる。

必死に顔を背けるが、伸びてきた男の手が陽真の頬を掴み酒を流し込もうとする。
陽真はかたく口を閉じて抵抗するが、零れた酒が唇の隙間を縫ってナカに侵入してくる。

「う"っやめ!ッぷぁ・・・ぁ、ぅ」

悔しげに男を睨み付けていた陽真の瞳が熱を帯び段々ととろんとしてくる。

息があがり、口から荒い息が漏れる。

体の力が抜け、意識が遠くなっていく。

「ったく、殴らないだけマシだと思えよ?・・・へへへ、いまからお前の腹ん中にコレ挿れるからな!見ろ!ちゃんと見とけよッ?」

男が自身の性器をゴシゴシと扱く音が聴こえる。
ぐったりとする陽真の下腹部へそ下あたりに、男のかたく張りつめた性器があてがわれる。

「・・・・って、、待ってよ。あんた達、組員ってほんと?・・・うそ、じゃ、ないよね?」

不安げに男を見上げる陽真に、その場がシンと静まりかえる。

「あ・・・?当たり前だろ。ま、いい子で大人しくしてれば教えてやるよ。知りたいんだろ?」

「っ、」

陽真の体から力が抜け、瞼を伏せた。

その時。

「困るなー。俺が喜島の兄さんに殺されるって」

「へ、、ぇ?」

「・・・あ?」

いつの間にか三人の男に交じって若い男が一人、部屋の椅子に腰かけていた。

若い男と陽真の視線が合うと、煙草を咥えた唇の端がキュッと上がり、若い男が場の雰囲気に不釣り合いな無邪気な笑みを浮かべた。

「陽真悠太君、俺ぜんって言うんだけど。覚えてない?一回会ったよね。っていえば分かるかな・・・」

「ぇ・・・・、あ、」

酒で酔っているのか、陽真がぽやんとした顔のままゆっくりと首を縦に振る。

「わかる?・・・そっか。良かった」

陽真の反応に善のキュッと吊った目尻と細い瞳孔が満足気に細まる。
アッシュブロンドの柔らかそうな髪がセンターで分けられていて、唇に掛かった前髪が善の吐く落ち着いた息でふわふわ揺れる。

ニコニコと笑っている善の目は笑っておらず、服が乱れた状態でピンク色のベッドにくったりとしている陽真をなんの感情も抱いていないかのようにじっと見つめている。

「なんだテメェ!無視してんじゃねぇぞっ!」

「・・・うるせぇな。俺は陽真悠太と話をしてるんだ。一人でマス掻いてろ、おっさん」

「ッ~ガキがっ!!お前も滅茶苦茶に犯してやるッ」

相手を煽る善に怒りの頂点に達した男が一人、若い男の白い首筋に手を掛け床に押し倒す。

善の身体が力任せに床に押し倒されてゴンッと鈍い音が響き、倍はあるだろう男が善の上に覆い被さる。

「善ッ!」

外で待機していた善の仲間 が駆けつけ、覆い被さる男を蹴り飛ばそうとした瞬間。

「木下ぁ!お前は入ってくるなって言ったろ。場がややこしくなる」

「っでも!!」

食い下がる男に善がいっそう機嫌悪そうに舌打ちをする。

「陽真悠太連れて出てけ。お前、言うこと聞けるよな?」

「・・・っはい」

「喜島の兄さんには連絡するな。俺が戻ったら悠太ソイツどうするか決めるから。・・・服貸してやれ。丁寧に扱えよ」

呼吸ひとつ乱さないまま善が男を見上げる。

善を押さえ付けている男とは対照的に、今の状況がなにも問題ないとでも言う様に善は落ち着き払っていた。

「あっ、あの、善さんが!」

善の部下、木下晃貴きのしたあきたかが陽真に駆け寄り「大丈夫か?」「怪我はないか?」と丁寧に声をかけ、濡れた服に身体を小さく震わせた陽真を見て一回り大きなジャケットを肩にかける。

「あの人は大丈夫。それよりお前だ。無茶なことしやがって・・・」

「でもッ!・・・わっ」

木下が暴れる陽真をふわりと抱き上げて善を一瞥する。

「閉めてけよ」

男を睨み上げたまま不敵な笑みを浮かべた善が木下にそう告げると、グッと眉間に皺を寄せた男が静かにドアを閉めた。
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