30 / 89
伍
第30話
しおりを挟む
「ただいま・・・」
玄関の引き戸を開けて家の中に入る。いつもは大勢で出迎えをしてくるのに、庭に人一人いないどころか普段ならもうとっくに起きているはずの家主である聡一郎も喜島も見当たらない。
「──ッん、─・・・ぁ"、あッ・・─ぐ、クソッ──ぁっ、ぅ~、──はッは、ぁ」
喜島の部屋の前で足を止めた恭介が唾を飲み込んだ。この声は喜島の声だ。
喜島が悪夢でうなされることはよくあり、今回もそうだと思ったが、どこか様子が違う。苦しそうに喘ぐ声に、腹の底を掻き乱されるような色気が混じる。
「・・・・ッ(え?、え)」
その場にへたりこんでズキズキと痛む股間を押さえる。
あがる息を必死に殺して室内の音に耳をすますと、喜島の苦しそうに喘ぐ声と一緒にグチュグチュといやらしい水音が聞こえてくる。
「(これって、兄さん一人で・・・)」
頭が勝手に喜島の乱れる姿を想像し、股間を押さえていた手を上下に緩く動かす。
腰がカクカクと情けなく揺れるのも今は気にならなかった。
「ンッ、──はっ、はっ、ぅ・・・あっ!く、ぅ・・・!!」
「ッぁ・・・、ぅ!(っ兄さん!兄さん兄さん!)」
くぐもった声と濡れた音にウットリと耳を傾けて自身の性器を激しく上下に扱く。
恭介の声と水音は喜島の自慰の音にちょうどかき消され、喜島が果てるのとほぼ同時に恭介も体を震わせて掌の中に欲を吐き出した。
茫然と掌を見つめ、罪悪感でいっぱいになる。
とりあえずその場から立ち去ろうと中の様子を伺うと、シンと静まり返った室内から喜島のすすり泣く声が聞こえ、恭介の肩が小さく跳ねた。
「ッぅう"・・・なんで、だよ、変わった、のに・・・変わった筈、なのにッ!」
今まで聞いた事もない喜島の弱気な声に、恭介が静かに息を飲む。「いやだ、いやだ」と何度も幼い子供のように繰り返し静かに泣いている。
詳しくは教えて貰えなかったが、喜島は幼い頃複雑な環境で育ったと聞いていた。この家に来てから続いている悪夢も今回の自慰での事も、ソレと関係しているのだろうか。
布団が畳と擦れる音がしてすすり泣く声が小さくなり消えていくのを確認すると、恭介が腰を上げて静かにその場をあとにした。
玄関の引き戸を開けて家の中に入る。いつもは大勢で出迎えをしてくるのに、庭に人一人いないどころか普段ならもうとっくに起きているはずの家主である聡一郎も喜島も見当たらない。
「──ッん、─・・・ぁ"、あッ・・─ぐ、クソッ──ぁっ、ぅ~、──はッは、ぁ」
喜島の部屋の前で足を止めた恭介が唾を飲み込んだ。この声は喜島の声だ。
喜島が悪夢でうなされることはよくあり、今回もそうだと思ったが、どこか様子が違う。苦しそうに喘ぐ声に、腹の底を掻き乱されるような色気が混じる。
「・・・・ッ(え?、え)」
その場にへたりこんでズキズキと痛む股間を押さえる。
あがる息を必死に殺して室内の音に耳をすますと、喜島の苦しそうに喘ぐ声と一緒にグチュグチュといやらしい水音が聞こえてくる。
「(これって、兄さん一人で・・・)」
頭が勝手に喜島の乱れる姿を想像し、股間を押さえていた手を上下に緩く動かす。
腰がカクカクと情けなく揺れるのも今は気にならなかった。
「ンッ、──はっ、はっ、ぅ・・・あっ!く、ぅ・・・!!」
「ッぁ・・・、ぅ!(っ兄さん!兄さん兄さん!)」
くぐもった声と濡れた音にウットリと耳を傾けて自身の性器を激しく上下に扱く。
恭介の声と水音は喜島の自慰の音にちょうどかき消され、喜島が果てるのとほぼ同時に恭介も体を震わせて掌の中に欲を吐き出した。
茫然と掌を見つめ、罪悪感でいっぱいになる。
とりあえずその場から立ち去ろうと中の様子を伺うと、シンと静まり返った室内から喜島のすすり泣く声が聞こえ、恭介の肩が小さく跳ねた。
「ッぅう"・・・なんで、だよ、変わった、のに・・・変わった筈、なのにッ!」
今まで聞いた事もない喜島の弱気な声に、恭介が静かに息を飲む。「いやだ、いやだ」と何度も幼い子供のように繰り返し静かに泣いている。
詳しくは教えて貰えなかったが、喜島は幼い頃複雑な環境で育ったと聞いていた。この家に来てから続いている悪夢も今回の自慰での事も、ソレと関係しているのだろうか。
布団が畳と擦れる音がしてすすり泣く声が小さくなり消えていくのを確認すると、恭介が腰を上げて静かにその場をあとにした。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる