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弐
第13話
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ワーワーと騒ぐ音で目を覚ました。
寝すぎたのか瞼が重い。
目を擦らぼやけた視界で当たりを見渡すと、テレビからは再放送らしい夜のバラエティ番組が映っていた。
「・・・きじま」
小さい声で呟いてもう一度辺りを見渡す。
──カタッ
広縁の方からだ。
見ると障子が閉まっていて、陽の光で照らされた喜島の姿が影になって白い障子に写っていた。
足を組んでなにか電話をしているらしい。
あのへラリとした性格の喜島が真剣に話をしている。
「俺も、起きないと」
体を起こして立ちあがり、小さなローテーブルに置いてあった直刀を手に持った。
数時間前の情けない自分の姿を思い出してカァッと頬が熱くなる。
時計を確認すると昼の二時。
とっくに昼食の時間が終わっている。
「しまった、昼飯の手伝い!」
いつもは陽真がこの民宿の料理の手伝いや配膳を任されていたが、寝過ごしてしまったらしい。
電話をしている喜島を一瞥してから足早に部屋を出た。
階段を駆け下りると祖父がフロントから陽真の姿を見つけて驚いた顔をしていた。
「ごめん、じいちゃん。寝ちゃってて昼食の手伝いが・・・」
「部屋に起こしに行っても居ない。外に出かけたとばかり思ってたよ。なんだ、喜島さんと絵の話で盛り上がったのか?」
優しく笑う祖父にギクリとする。
「っ、そうじゃなッ・・・」
「いやぁ、そうなんですよ!今度私と街に行って展覧会を見に行く約束をしたんです」
「ッは、ぇ?」
慌てていつの間にか背後に立っていた喜島を振り返る。尾てい骨当たりをスリスリと撫でられる感覚。
「今朝、約束したよね」
「けさ・・・(ぁ、)」
陽真の腰をいやらしく撫でる喜島の手で察した。それと同時に、ストンと混乱していた気持ちが落ち着いた。
そうだ。これも仕事なんだから。
「ご主人、悠太君をお借りしても?」
陽真の体を抱き寄せた喜島が、人当たりのよさそうな笑顔を浮かべる。
陽真は知っている。悪い大人がいい大人の皮を被ってる時の顔だ。
「孫が良ければ、私は別に構いませんよ」
何も知らない祖父が台帳をめくりながら頷いた。
「それでは私がこの宿を出る一週間後にしましょう。悠太、それでいいね?」
「っうん・・・」
フロントに立つ祖父から見えないのをいい事に、喜島の手つきが陽真の反応を面白がるように少しずつ大胆になっていく。
穏やかな笑顔で陽真を見つめる喜島を、陽真が縋りつくように見つめ返す。
左手で何とか喜島の腕を祖父に見られないよう、後ろ手に止めようとするがビクともしない。
「ッ俺!じいちゃんの手伝いしないとッ!」
突き放すように喜島の腕を振り払って祖父に助けを求める。
「今日のお客さんは喜島さんだけなんだから、大丈夫。散歩がてらこのあたりの案内でもしてあげなさい」
「わぁ、良いですねぇ。私こう見えて長閑な場所好きなんですよ」
やっとの事で出したSOSに気づいて貰えず、陽真がフルフルと体を震わす。このままじゃここで───
撫でられるだけの軽いものだと最初は止めるのを諦めていたが、何故だかその手の動きに誘われる様に無意識のうちに腰が揺れる。気持ちいいの波が思考を侵食していく。
「ッぁ、ぅ・・・ッ!!」
ぴくんと小さく体が跳ねてヘナヘナと地面に座り込む。
ああ、真逆──
「ぁー、あと少しでイけたのに、なぁ?」
陽真の腕を持ち上げて、喜島が面白そうに呟いた。
悪い大人の顔だ。
寝すぎたのか瞼が重い。
目を擦らぼやけた視界で当たりを見渡すと、テレビからは再放送らしい夜のバラエティ番組が映っていた。
「・・・きじま」
小さい声で呟いてもう一度辺りを見渡す。
──カタッ
広縁の方からだ。
見ると障子が閉まっていて、陽の光で照らされた喜島の姿が影になって白い障子に写っていた。
足を組んでなにか電話をしているらしい。
あのへラリとした性格の喜島が真剣に話をしている。
「俺も、起きないと」
体を起こして立ちあがり、小さなローテーブルに置いてあった直刀を手に持った。
数時間前の情けない自分の姿を思い出してカァッと頬が熱くなる。
時計を確認すると昼の二時。
とっくに昼食の時間が終わっている。
「しまった、昼飯の手伝い!」
いつもは陽真がこの民宿の料理の手伝いや配膳を任されていたが、寝過ごしてしまったらしい。
電話をしている喜島を一瞥してから足早に部屋を出た。
階段を駆け下りると祖父がフロントから陽真の姿を見つけて驚いた顔をしていた。
「ごめん、じいちゃん。寝ちゃってて昼食の手伝いが・・・」
「部屋に起こしに行っても居ない。外に出かけたとばかり思ってたよ。なんだ、喜島さんと絵の話で盛り上がったのか?」
優しく笑う祖父にギクリとする。
「っ、そうじゃなッ・・・」
「いやぁ、そうなんですよ!今度私と街に行って展覧会を見に行く約束をしたんです」
「ッは、ぇ?」
慌てていつの間にか背後に立っていた喜島を振り返る。尾てい骨当たりをスリスリと撫でられる感覚。
「今朝、約束したよね」
「けさ・・・(ぁ、)」
陽真の腰をいやらしく撫でる喜島の手で察した。それと同時に、ストンと混乱していた気持ちが落ち着いた。
そうだ。これも仕事なんだから。
「ご主人、悠太君をお借りしても?」
陽真の体を抱き寄せた喜島が、人当たりのよさそうな笑顔を浮かべる。
陽真は知っている。悪い大人がいい大人の皮を被ってる時の顔だ。
「孫が良ければ、私は別に構いませんよ」
何も知らない祖父が台帳をめくりながら頷いた。
「それでは私がこの宿を出る一週間後にしましょう。悠太、それでいいね?」
「っうん・・・」
フロントに立つ祖父から見えないのをいい事に、喜島の手つきが陽真の反応を面白がるように少しずつ大胆になっていく。
穏やかな笑顔で陽真を見つめる喜島を、陽真が縋りつくように見つめ返す。
左手で何とか喜島の腕を祖父に見られないよう、後ろ手に止めようとするがビクともしない。
「ッ俺!じいちゃんの手伝いしないとッ!」
突き放すように喜島の腕を振り払って祖父に助けを求める。
「今日のお客さんは喜島さんだけなんだから、大丈夫。散歩がてらこのあたりの案内でもしてあげなさい」
「わぁ、良いですねぇ。私こう見えて長閑な場所好きなんですよ」
やっとの事で出したSOSに気づいて貰えず、陽真がフルフルと体を震わす。このままじゃここで───
撫でられるだけの軽いものだと最初は止めるのを諦めていたが、何故だかその手の動きに誘われる様に無意識のうちに腰が揺れる。気持ちいいの波が思考を侵食していく。
「ッぁ、ぅ・・・ッ!!」
ぴくんと小さく体が跳ねてヘナヘナと地面に座り込む。
ああ、真逆──
「ぁー、あと少しでイけたのに、なぁ?」
陽真の腕を持ち上げて、喜島が面白そうに呟いた。
悪い大人の顔だ。
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