とける。

おかだ。

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第11話

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初めて会った頃、自らの事をと言っていた割にはまだ顔も若い。

歳は、幾つなんだろう。

「喜島・・・」

背をかがめてもう少し近く、恐る恐る喜島の顔をのぞき込む。男の寝息が陽真の跳ねっ返りの赤髪をなびかせる。

「ん"ッ、あ、ちぃ・・・」

眠ったままの喜島の眉間にシワが出来る。寝苦しそうにグッと首を伸ばすと、左手が首筋を掻いた。

「っ(扇風機!)」

ほぅと眠っている男を見つめていたが、我に返って自分の行動にギョッとした。

誤魔化すように扇風機を探す。この宿にはエアコンはフロントにしかない。一番人の集まるロビーを効率よく冷やす為だ。

客室にはどの部屋にも扇風機がある。

慌てて顔を上げ、当たりを見渡す。

「(あった!)」

広縁ひろえんに置かれた扇風機を男の足元に設置してコンセントを繋げた。

腹や顔にあてると寝冷えをおこしたり喉を悪くしたりするからだ。昔祖父にそう教わった。

あとは電源ボタンを押すだけ。

──ピッ、ブォォオ

「ついた・・・」

「うん、ありがと」

帰ってこないはずの返事にサッと血の気が引き、咄嗟に尻ポケットに仕舞った直刀を探した。

「これか?物騒だな、小刀なんて隠して」

「ッぁ・・・、ぅあ、あ」

サングラスをかけた喜島が木鞘に収められた直刀を鞘から抜き、刃を確認する。

「刃がボロボロじゃないか」

「あ、ぁ、ころさないで・・・」

純粋な恐怖から出た言葉だった。

自分で言って悔しくて驚いた。自分の事はどうでもいい、祖父を守らないと。この場所を守らないと。そう思っていたのに。

顔を真っ赤にしてどうしようもなく喜島を見つめた。

喜島はと言うと、彼も彼で鳩が豆鉄砲を食らったようなとぼけた顔をして直刀を握りしめていた。

??俺が??」

「っえっと、ぁ、ぅ"」

頭が完全にショートして、陽真がペタンとその場にへたり込む。

「殺そうとしたのは悠太クンの方だろ。それにこんな刃の欠けた小刀じゃ人は殺せないね。少なくとも俺はな」

喜島が上半身を起こして左側の緩んだ掛衿かけえりを直し、帯をキツく結び直した。

「ま、俺が寝てる間に心臓刺せば死んでたかもな。この心許ない刃渡りでも、何度も刺せば肉がえぐれて心臓に届く」

喜島がサングラスを少しズラしてニヤリと笑った。イタズラっぽい、憎めない笑みだった。
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