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弐
第6話
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「あーあ、逃げられちゃった。なぁ?喜島」
「・・・すんません。でも相手ガキですし、これ以上絞りとれないですよ。それに警察も介入してるんで、これ以上この件に深入りするのもマズイかと」
「でも?」
真正面に座る男にキッと睨まれ、ヤレヤレと肩をすくめる。
「親が自殺したからって、そう簡単に逃がしたらうちの組のメンツが丸潰れだろうが。それに金貸してるこっちだって資金には底がある」
「ですが、伊武」
「喜島お前、随分偉そうにものを言うようになったな。金融事業はお前の管轄だろ」
伊武恭介は全国に勢力を拡大させている伊武会の次期五代目・現若頭だ。
伊武に呼び出されて面倒くさそうに肩をすくめているのが、伊武恭介を幼い頃から補佐役として支えて来た喜島芥だった。
「金融事業はあなたが俺に無理矢理、、俺が一番嫌いなのを知ってて押し付けたんでしょう。・・・若は、俺にどうして欲しいんですか」
「金を回収してこい。ガキだろうがもう十八だ。オヤジの責任負う事くらい出来るはずだろ」
「貴方と、たった四つしか変わらない子供ですよ」
「・・・定期的に報告しろ。回収出来るまで帰ってこなくていい」
「はい」
耳元で囁かれた冷たい声に喜島は漏れそうになったため息を押し殺した。
「怒ってるんだろうな」心の中でそう思うと、またため息が漏れそうになる。
数ヶ月前、喜島は伊武恭介の告白を拒絶したのだ。
「伊武恭介の事は従うべき男だと言う以外、なんとも思っていない。拾ってくれた事は感謝している」
伊武のためを思って突き放したつもりだったが、伊武はそうは理解していないのだろう。
「昔は可愛かったんだがなぁ」
移動中、車の中で苦笑した喜島が小さく呟いた。
「・・・すんません。でも相手ガキですし、これ以上絞りとれないですよ。それに警察も介入してるんで、これ以上この件に深入りするのもマズイかと」
「でも?」
真正面に座る男にキッと睨まれ、ヤレヤレと肩をすくめる。
「親が自殺したからって、そう簡単に逃がしたらうちの組のメンツが丸潰れだろうが。それに金貸してるこっちだって資金には底がある」
「ですが、伊武」
「喜島お前、随分偉そうにものを言うようになったな。金融事業はお前の管轄だろ」
伊武恭介は全国に勢力を拡大させている伊武会の次期五代目・現若頭だ。
伊武に呼び出されて面倒くさそうに肩をすくめているのが、伊武恭介を幼い頃から補佐役として支えて来た喜島芥だった。
「金融事業はあなたが俺に無理矢理、、俺が一番嫌いなのを知ってて押し付けたんでしょう。・・・若は、俺にどうして欲しいんですか」
「金を回収してこい。ガキだろうがもう十八だ。オヤジの責任負う事くらい出来るはずだろ」
「貴方と、たった四つしか変わらない子供ですよ」
「・・・定期的に報告しろ。回収出来るまで帰ってこなくていい」
「はい」
耳元で囁かれた冷たい声に喜島は漏れそうになったため息を押し殺した。
「怒ってるんだろうな」心の中でそう思うと、またため息が漏れそうになる。
数ヶ月前、喜島は伊武恭介の告白を拒絶したのだ。
「伊武恭介の事は従うべき男だと言う以外、なんとも思っていない。拾ってくれた事は感謝している」
伊武のためを思って突き放したつもりだったが、伊武はそうは理解していないのだろう。
「昔は可愛かったんだがなぁ」
移動中、車の中で苦笑した喜島が小さく呟いた。
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