とける。

壱

第1話

母さんは物心ついた頃にはもう居なかった。闇金で莫大な借金をこさえた父さんに呆れて家を出ていったんだって。

──ドンドンドンｯ！

『陽真はるまさーん！お金返してよー。俺アンタに裏切られて悲しいなァ。隠れてないで誠意見せろよー！』

『この前見たよ、あんた子供いるだろ？子供売ったら高いぜ～。女の子？男の子かな？なぁ！！』

父さんは、まだ小さかった俺の隣で布団を頭から被ってブルブル震えていた。

『すみませんｯ！！！もう少し待ってください！あと一週間だけ！！！子供は勘弁してくださいぃ・・・ｯ』

俺が産まれる前から闇金に追われているせいで、俺にとってこれが日常だった。

これが普通。

毎日電話がうるさくて眠れないのも普通。

父さんが俺に返事してくれなくなるのも普通。

怖いおじさんが家を訪ねてくるのも普通。

小学二年生から学校に行けなくなるのも普通。

怖いおじさんに暴力振るわれるのも普通。
体にイタズラされるのも普通。