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April
《女王様》は風紀副委員長①
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その後、俺たちは何かを話すでもなく、ただそれぞれぼーっと屋上で時間を潰した。
まぁ、蓮がほぼ寝てたから、話すこともできなかったんだけど。
さて、そろそろ4限目も終わる時間だ。
この後は昼休み。つまり、王道学園モノ恒例の【食堂イベント】が開幕する。
生徒会役員が、よく分からんそれぞれの価値観で王道マリモをお気に召す、BL王道学園モノには必要不可欠なイベント。
遂に王道転入生と生徒会メンバーが全員集合するんだ。楽しみ!
ニヤつく顔を必死に抑えながら、隣で爆睡している男を叩き起す。
「れーん。蓮~。起きろ~」
「…………あ"?」
「そんな睨むなって。昼飯行こうぜ」
「……行かねー」
「え? 何でだよ?」
蓮は大きな欠伸をしながら、俺を見やる。
寝るか食うか喧嘩するかしかしない蓮が、飯に行かないとは珍しい。
この学園の食堂は、お隣の中等部との境に建っている。
そのため中はかなり広く、そしてとても豪華だ。
高級レストランの如くおしゃれに並べられたテーブルや椅子は全て特注品らしいし、それを淡く優しい光で照らしているのは、特大シャンデリア。それを囲うように、小さなシャンデリアが天井を飾っている。
そして、料理は和食に洋食、中華にイタリアンなど何でもござれ。しかも全て一流シェフが作っているというから驚きだ。
と、そんなことはどうでもいい。
「蓮、本当に行かないのか?」
「あぁ」
「なんで?」
「……今日、うるせぇんだろ?」
「あ、なるほど。そうだな」
蓮は、俺が腐男子だと知っている数少ない友人だ。まぁクラスメートであり、去年度はルームメイトだったから、隠し通すことが出来なかっただけなのだが。
そう言えば寮の部屋で、王道転入生が来た時の展開について熱く語った覚えがある。
こいつ、相槌もしなかったから聞いてないと思っていたのに、覚えていたのか。
そもそも、極度の人見知りで人混みとうるさいところが嫌いな蓮。
俺が語っていた内容をどのくらい聞いていたのか分からないが、これから食堂でどんなことが起こるかはわかっている様子。
だから絶対行かないって言ってるんだな。なるほど。
「しかも、2階席行くんだろ」
「当たり前。王道展開の火の粉が飛んでこない席から、文字通り高みの見物ってな」
一般常識とはかけ離れたこの学園。
もちろん食堂にも、学園独特のヒエラルキーが存在している。
それは、席の種類だ。
ドーム状になっている広い広い食堂。
その席種は、1階席・2階席・VIPルームの3種類があり、例のランキングによって、ある程度使える席が分けられている。
1階席は、全生徒が使用可能。
2階席は、ランキング上位や名の通った人気者。
とはいえ、ここに明確な仕切りはなく、使おうと思えば一般生徒も2階に上がることは出来る。まぁ、この学園の暗黙のルールによって、そんなことをする人はほとんどいないけれど。
そんな中、生徒によって使える人が限られているのが、たった3部屋しかないVIPルームだ。全ての部屋が、防音や遮音が完璧で周りの目からも遮られる個室となっている。
利用可能なのは、生徒会役員と風紀委員。そして各委員会の委員長と、なぜか俺。
寮などと同じように、TSP端末を翳して、認証されないと開かない仕組みが取り入れられている。
俺が使えるようになったのは、例のミスコン以降。学園の状況を見て、友人の風紀副委員長が職権濫用したらしい。
本当にいいのかと聞いたら、むしろ保身のために使ってと言われたので、お言葉に甘えて主に蓮と共に使わせてもらっている。
VIPルームと言うだけあって、平々凡々の一般ピープルである俺から言わせてもらうと、ご飯を食べる部屋だけに留めるにはもったいなさすぎるほどにお金がかけられている。
3部屋とも無駄に広いし、天井も高いし。ってか、あれだ。その辺のワンルームよりも広いし豪華。必要なのか、ここまでの設備。
今日は、そんな贅沢極まりない部屋ではなく、音が筒抜けで視線も刺さりまくる2階席に行くつもりだ。食堂イベントをこの目で見なければならないからな。
まぁそれがわかっているのだから、蓮が嫌がるのも無理はない。
「1人で行ってこい。どうせ腐男子集まるんだろ」
「冷たいなぁ。わあったよ」
ここの鍵を投げ渡され、行く気がさらさらないのを確認する。
こうなったら何を言っても無駄だ。1年以上一緒にいるからそれくらいはわかる。
でもま、よくよく考えてみたら、蓮を連れて行ったらリスクが高いか。マリモに目ぇつけられてるしな。
ドアの前で振り返り、蓮に向かって声をかける。
「じゃーな、蓮。帰りになんか買ってこようか?」
「……いつもの」
「りょーかい」
まぁ、蓮がほぼ寝てたから、話すこともできなかったんだけど。
さて、そろそろ4限目も終わる時間だ。
この後は昼休み。つまり、王道学園モノ恒例の【食堂イベント】が開幕する。
生徒会役員が、よく分からんそれぞれの価値観で王道マリモをお気に召す、BL王道学園モノには必要不可欠なイベント。
遂に王道転入生と生徒会メンバーが全員集合するんだ。楽しみ!
ニヤつく顔を必死に抑えながら、隣で爆睡している男を叩き起す。
「れーん。蓮~。起きろ~」
「…………あ"?」
「そんな睨むなって。昼飯行こうぜ」
「……行かねー」
「え? 何でだよ?」
蓮は大きな欠伸をしながら、俺を見やる。
寝るか食うか喧嘩するかしかしない蓮が、飯に行かないとは珍しい。
この学園の食堂は、お隣の中等部との境に建っている。
そのため中はかなり広く、そしてとても豪華だ。
高級レストランの如くおしゃれに並べられたテーブルや椅子は全て特注品らしいし、それを淡く優しい光で照らしているのは、特大シャンデリア。それを囲うように、小さなシャンデリアが天井を飾っている。
そして、料理は和食に洋食、中華にイタリアンなど何でもござれ。しかも全て一流シェフが作っているというから驚きだ。
と、そんなことはどうでもいい。
「蓮、本当に行かないのか?」
「あぁ」
「なんで?」
「……今日、うるせぇんだろ?」
「あ、なるほど。そうだな」
蓮は、俺が腐男子だと知っている数少ない友人だ。まぁクラスメートであり、去年度はルームメイトだったから、隠し通すことが出来なかっただけなのだが。
そう言えば寮の部屋で、王道転入生が来た時の展開について熱く語った覚えがある。
こいつ、相槌もしなかったから聞いてないと思っていたのに、覚えていたのか。
そもそも、極度の人見知りで人混みとうるさいところが嫌いな蓮。
俺が語っていた内容をどのくらい聞いていたのか分からないが、これから食堂でどんなことが起こるかはわかっている様子。
だから絶対行かないって言ってるんだな。なるほど。
「しかも、2階席行くんだろ」
「当たり前。王道展開の火の粉が飛んでこない席から、文字通り高みの見物ってな」
一般常識とはかけ離れたこの学園。
もちろん食堂にも、学園独特のヒエラルキーが存在している。
それは、席の種類だ。
ドーム状になっている広い広い食堂。
その席種は、1階席・2階席・VIPルームの3種類があり、例のランキングによって、ある程度使える席が分けられている。
1階席は、全生徒が使用可能。
2階席は、ランキング上位や名の通った人気者。
とはいえ、ここに明確な仕切りはなく、使おうと思えば一般生徒も2階に上がることは出来る。まぁ、この学園の暗黙のルールによって、そんなことをする人はほとんどいないけれど。
そんな中、生徒によって使える人が限られているのが、たった3部屋しかないVIPルームだ。全ての部屋が、防音や遮音が完璧で周りの目からも遮られる個室となっている。
利用可能なのは、生徒会役員と風紀委員。そして各委員会の委員長と、なぜか俺。
寮などと同じように、TSP端末を翳して、認証されないと開かない仕組みが取り入れられている。
俺が使えるようになったのは、例のミスコン以降。学園の状況を見て、友人の風紀副委員長が職権濫用したらしい。
本当にいいのかと聞いたら、むしろ保身のために使ってと言われたので、お言葉に甘えて主に蓮と共に使わせてもらっている。
VIPルームと言うだけあって、平々凡々の一般ピープルである俺から言わせてもらうと、ご飯を食べる部屋だけに留めるにはもったいなさすぎるほどにお金がかけられている。
3部屋とも無駄に広いし、天井も高いし。ってか、あれだ。その辺のワンルームよりも広いし豪華。必要なのか、ここまでの設備。
今日は、そんな贅沢極まりない部屋ではなく、音が筒抜けで視線も刺さりまくる2階席に行くつもりだ。食堂イベントをこの目で見なければならないからな。
まぁそれがわかっているのだから、蓮が嫌がるのも無理はない。
「1人で行ってこい。どうせ腐男子集まるんだろ」
「冷たいなぁ。わあったよ」
ここの鍵を投げ渡され、行く気がさらさらないのを確認する。
こうなったら何を言っても無駄だ。1年以上一緒にいるからそれくらいはわかる。
でもま、よくよく考えてみたら、蓮を連れて行ったらリスクが高いか。マリモに目ぇつけられてるしな。
ドアの前で振り返り、蓮に向かって声をかける。
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「りょーかい」
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