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April
《女神様》な俺と2-Aの愉快な仲間たち④
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それにしても、蓮様と《女神様》。
蓮はそのまま名前なのに、なんで俺は《女神様》なんだ。俺は男だって。せめて神様だろ。
いや、でもなんか神様っておじいさんぽいイメージだな……。つか、そもそも俺も名前でいいんだよなぁ。
《女神様》。
そう呼ばれるようになった理由は、正直言ってわからない。
初めの頃は、〈藤咲くん〉とか〈蒼葉くん〉とか、普通に呼ばれていた。
様付けする人もいたが、少数だった。様付けしちゃう件については、そういう風習なので仕方ない。
初めて《女神様》って呼ばれたのは、口を滑らせたガチムチ系クラスメートだったな。顔を真っ赤にして、おたおたしながら謝っていたのが、嫌に印象に残っている。
彼は今、俺の親衛隊の中でもかなりのガチ勢らしい。……うん、なんと言えばいいのか。
呼ばれ始めは、男なのに女神は恥ずかしいからやめてくれと言ったものだった。そんな女子力が高いとかでもないし。ってかむしろ無いに等しいし。
それが功を奏したのか、表向きは一時かなり治まったんだ。まぁ裏では変わっていなかったみたいだが。
そんな攻防に拍車がかかったのは、昨年の秋以降のこと。
イベント事の多いこの学園の中でも最大のイベントである【天照祭】。簡単に言えば文化祭。
その中の一番の目玉イベントであるミスコンに、クラスメートたちに勝手に推薦応募されていた。もちろん抗議はしたのだが、クラス優勝のためだと言われて渋々出ることに。
その結果、ミス天照に輝いてしまった俺。クラスは学年優勝をした。そんなにきちんとやった覚えはないのに、全くもって解せない。
この後から、向けられる視線は半端じゃないくらいに増え、クラスメート限定だった《女神様》呼びも、この頃から学園を歩いていたらどこからでも呼ばれるようになった。
一過性だろうと思っていた人気は、その後も無くなることなく、むしろ親衛隊はかなりの規模になったと聞いている。
その甲斐あってというか、そのおかげというか、そのせいというか。
遂に高等部からの外部生で一般生徒である俺が、年に一度の抱きたいランキング3位入賞なんていう快挙を成し遂げてしまった。
今まで、各ランキング5位以内は生徒会や風紀、少なくともSクラスメンバーで固まっているのが当たり前だったらしく。ランキング発表後の反響は凄まじかった。
休み時間とか、廊下の窓からいろんな人に見られて、まるで檻に入れられたパンダみたいな気分。まぁ、ミスコン後ほどではないけど。
もう今更、《女神様》呼びをやめてほしいと言っても無理なことはわかっている。でもだからと言って、呼ばれ方に慣れるのは難しい。だって俺は男だし。
少し眉を顰めたら、気付いた視線の先の蓮がふっと口角を上げる。
「……手ぇ離せよ。《女神様》?」
「その呼び方やめろ」
「みんな言ってる」
「分かってるけど。お前はやめろ」
睨みつけてやると、蓮は鼻で笑う。
紫がかった綺麗な瞳が、ものすごく愉しそうに光っている。
くそ。いつもいつも人の嫌がる顔を見て楽しみやがって。
何か言ってやろうと口を開いたところで、教室の扉が音を立てて開いた。
「HR始めるよ~」
蓮はそのまま名前なのに、なんで俺は《女神様》なんだ。俺は男だって。せめて神様だろ。
いや、でもなんか神様っておじいさんぽいイメージだな……。つか、そもそも俺も名前でいいんだよなぁ。
《女神様》。
そう呼ばれるようになった理由は、正直言ってわからない。
初めの頃は、〈藤咲くん〉とか〈蒼葉くん〉とか、普通に呼ばれていた。
様付けする人もいたが、少数だった。様付けしちゃう件については、そういう風習なので仕方ない。
初めて《女神様》って呼ばれたのは、口を滑らせたガチムチ系クラスメートだったな。顔を真っ赤にして、おたおたしながら謝っていたのが、嫌に印象に残っている。
彼は今、俺の親衛隊の中でもかなりのガチ勢らしい。……うん、なんと言えばいいのか。
呼ばれ始めは、男なのに女神は恥ずかしいからやめてくれと言ったものだった。そんな女子力が高いとかでもないし。ってかむしろ無いに等しいし。
それが功を奏したのか、表向きは一時かなり治まったんだ。まぁ裏では変わっていなかったみたいだが。
そんな攻防に拍車がかかったのは、昨年の秋以降のこと。
イベント事の多いこの学園の中でも最大のイベントである【天照祭】。簡単に言えば文化祭。
その中の一番の目玉イベントであるミスコンに、クラスメートたちに勝手に推薦応募されていた。もちろん抗議はしたのだが、クラス優勝のためだと言われて渋々出ることに。
その結果、ミス天照に輝いてしまった俺。クラスは学年優勝をした。そんなにきちんとやった覚えはないのに、全くもって解せない。
この後から、向けられる視線は半端じゃないくらいに増え、クラスメート限定だった《女神様》呼びも、この頃から学園を歩いていたらどこからでも呼ばれるようになった。
一過性だろうと思っていた人気は、その後も無くなることなく、むしろ親衛隊はかなりの規模になったと聞いている。
その甲斐あってというか、そのおかげというか、そのせいというか。
遂に高等部からの外部生で一般生徒である俺が、年に一度の抱きたいランキング3位入賞なんていう快挙を成し遂げてしまった。
今まで、各ランキング5位以内は生徒会や風紀、少なくともSクラスメンバーで固まっているのが当たり前だったらしく。ランキング発表後の反響は凄まじかった。
休み時間とか、廊下の窓からいろんな人に見られて、まるで檻に入れられたパンダみたいな気分。まぁ、ミスコン後ほどではないけど。
もう今更、《女神様》呼びをやめてほしいと言っても無理なことはわかっている。でもだからと言って、呼ばれ方に慣れるのは難しい。だって俺は男だし。
少し眉を顰めたら、気付いた視線の先の蓮がふっと口角を上げる。
「……手ぇ離せよ。《女神様》?」
「その呼び方やめろ」
「みんな言ってる」
「分かってるけど。お前はやめろ」
睨みつけてやると、蓮は鼻で笑う。
紫がかった綺麗な瞳が、ものすごく愉しそうに光っている。
くそ。いつもいつも人の嫌がる顔を見て楽しみやがって。
何か言ってやろうと口を開いたところで、教室の扉が音を立てて開いた。
「HR始めるよ~」
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