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愛少女・姫菜
六
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女医が一枚の紙を渡した。一読する。
「ふむ」
なかなか興味深い結果だ。
「ヒナ」
「はい」
まるで小鳥が飛ぶようにやって来る。最近、やっと床の上には座らなくなった。
「この間、採血されただろ?」
「はい、痛くて辛かったです」
恨めし気な顔で、じとーっと私を見る。
「別に私が刺したわけではない」
とぼけて言った。
「でも、ご主人様の指示だと聞きました」
「バレていたか」
「はい」
「その結果だが……。実は重要なことがわかった」
真顔になってヒナを見る。
「重要なこと?え、まさか……」
真っ青になったヒナに言う。
「安心しろ。ヒナが病気というわけではない」
「はあっ、良かった。ではどんなことですか?」
「まず、この動画を見ろ」
「はい」
次の瞬間、ヒナが叫んだ。
「ひ、仁志!」
それはヒナの弟が医師の説明を受けている映像だった。
「あなたの病気は、いま薬によって抑え込まれています。しかし、一生飲み続ける必要があり、効かなくなる可能性もあります。今回、この病気について、完全に治ることを目指す臨床試験が行われることになりました。あなたはまだ若いし、この試験に参加するにはとても条件が良いと思います」
「うまくいけば、完全に治るのですね?」
「はい、その望みは十分にあります。
母と息子は顔を見合わせている。
「それはぜひ参加したいですが、費用などは?」
「臨床試験ですので、この部分について、ほとんど負担はありません」
「では、お願いしたいと思います」
「ただ、この治療の前提として骨髄移植をしなければなりません。ご兄弟は?」
「姉がいますが……、いまは遠い国にいます」
「そうですか。それでは骨髄バンクを当たってみましょう」
映像はそこで一区切りになった。
「仁志……」
「というわけで、この前血液検査をしたわけだ。すると、骨髄のタイプが一致して、移植可能だとわかった」
「では、日本に?」
私はため息をついた。
「可哀そうだが、そういうわけにはいかんのだ。ヒナは生涯、この組織に拘束されている」
「でも、弟が……」
「この施設の医療エリアで、ヒナの骨髄液を採取する。それをプライベートジェットとヘリコプターで病院に届ける。それなら可能だそうだ」
「うれしいけど、費用が……」
「それは心配するな。私が負担する」
「でも……」
「可愛い妻のためだ」
「ご主人様……」
ヒナは感涙にむせんでいる。
「そのかわり、一生私に奉仕するんだぞ」
「はい」
私の乳首をついばんでくる。その一所懸命さがいじらしい。
「では、あちらと日程を打ち合わせるとしよう。実はこの病院、私の会社でかなりの資金を出していてな。弟がいい部屋に入れるよう手配してやろう」
「ありがとうございます。この御恩は忘れません……」
「弟には、骨髄バンクでドナーが見つかったことにしておく。いいな?」
「はい」
この施設で採られた骨髄液は弟の病院に届けられ、移植は無事に終わった。私たちはヒナの体力の回復を待って、新居に移ることにした。
「この部屋で過ごすのも今夜が最後だな」
「はい」
「いろんなことがあったな」
「ええ」
「絶望したり、死にたいと思ったり、腹が痛くなったり、姫貝を洗われたり、処女喪失の時は痛くて泣きわめいたり……」
「でも、ご主人様に可愛がられて私は幸せになれた」
「そして、弟に骨髄液を与えることができた」
「うれしかった……」
ヒナの髪を撫で、キスをする。
「辛い人生だったけど、生きていればやっぱり良いこともあるだろう?」
ヒナは、黙ってしがみついてくる。涙が両目から溢れている。
「体温高いな、ヒナ。まるで小鳥のようだ」
ひっく、ひっくと泣き続けるヒナ。
「まあ、しばらく泣けばいい」
翌朝、動画が届いた。ヒナの弟が、ドナーになってくれた人物へ感謝する内容だった。
「治療の経過は、これからも届くだろう。楽しみだな」
「本当に……」
朝食の後、ロビーで出入国管理官の審査を受けた。ヒナは本人のパスポートがあるわけで、もちろんパス。私もほぼ顔パスだ。
「タン様、良い性奴隷が見つかって良かったですね」
万理華が笑いながら言う。そしてヒナに向かって、
「あなたも、不思議な運を持っているのね。表参道で会った時は暗い顔をしていたけど、まさかこんな運命が待っているとは」
「自分でも不思議です」
「まあ、運も実力のうちよ。そうそう、タン様、書面の審査では飼育環境に問題はありません」
「まあ、我が友、レオナルド・チャンが作った邸宅なら抜かりはないだろう」
「確かに。ただし」
「わかっている、ヒナは決して外には出さない」
「はい、皆の幸福のために」
屋上にはチャン財閥のヘリコプターが待機していた。ヒナは真新しい純白のワンピースを着ている。それはまるで主人に全てを委ねる、手乗りの白文鳥のようだった。
二人が乗せ、ヘリが大空に舞い上がる。
「わあ、きれい。鳥になったみたい」
ヒナがはしゃいでいる。
「でも、これからはご主人様のそばで、カゴの中で生きたい」
「ヒナ」
「空を飛ぶのは今日でおしまい。ご主人様、私といっぱい遊んでくださいね」
「わかった」
約三時間の飛行の後、ヘリコプターは目的地に降り立った。はしゃぎ過ぎたヒナは、すやすやと眠っていた。
「着いたぞ、ヒナ」
「あ、ご主人様……」
「今夜は腰が抜けるほど可愛がってやるからな」
「怖い……」
「ふむ」
なかなか興味深い結果だ。
「ヒナ」
「はい」
まるで小鳥が飛ぶようにやって来る。最近、やっと床の上には座らなくなった。
「この間、採血されただろ?」
「はい、痛くて辛かったです」
恨めし気な顔で、じとーっと私を見る。
「別に私が刺したわけではない」
とぼけて言った。
「でも、ご主人様の指示だと聞きました」
「バレていたか」
「はい」
「その結果だが……。実は重要なことがわかった」
真顔になってヒナを見る。
「重要なこと?え、まさか……」
真っ青になったヒナに言う。
「安心しろ。ヒナが病気というわけではない」
「はあっ、良かった。ではどんなことですか?」
「まず、この動画を見ろ」
「はい」
次の瞬間、ヒナが叫んだ。
「ひ、仁志!」
それはヒナの弟が医師の説明を受けている映像だった。
「あなたの病気は、いま薬によって抑え込まれています。しかし、一生飲み続ける必要があり、効かなくなる可能性もあります。今回、この病気について、完全に治ることを目指す臨床試験が行われることになりました。あなたはまだ若いし、この試験に参加するにはとても条件が良いと思います」
「うまくいけば、完全に治るのですね?」
「はい、その望みは十分にあります。
母と息子は顔を見合わせている。
「それはぜひ参加したいですが、費用などは?」
「臨床試験ですので、この部分について、ほとんど負担はありません」
「では、お願いしたいと思います」
「ただ、この治療の前提として骨髄移植をしなければなりません。ご兄弟は?」
「姉がいますが……、いまは遠い国にいます」
「そうですか。それでは骨髄バンクを当たってみましょう」
映像はそこで一区切りになった。
「仁志……」
「というわけで、この前血液検査をしたわけだ。すると、骨髄のタイプが一致して、移植可能だとわかった」
「では、日本に?」
私はため息をついた。
「可哀そうだが、そういうわけにはいかんのだ。ヒナは生涯、この組織に拘束されている」
「でも、弟が……」
「この施設の医療エリアで、ヒナの骨髄液を採取する。それをプライベートジェットとヘリコプターで病院に届ける。それなら可能だそうだ」
「うれしいけど、費用が……」
「それは心配するな。私が負担する」
「でも……」
「可愛い妻のためだ」
「ご主人様……」
ヒナは感涙にむせんでいる。
「そのかわり、一生私に奉仕するんだぞ」
「はい」
私の乳首をついばんでくる。その一所懸命さがいじらしい。
「では、あちらと日程を打ち合わせるとしよう。実はこの病院、私の会社でかなりの資金を出していてな。弟がいい部屋に入れるよう手配してやろう」
「ありがとうございます。この御恩は忘れません……」
「弟には、骨髄バンクでドナーが見つかったことにしておく。いいな?」
「はい」
この施設で採られた骨髄液は弟の病院に届けられ、移植は無事に終わった。私たちはヒナの体力の回復を待って、新居に移ることにした。
「この部屋で過ごすのも今夜が最後だな」
「はい」
「いろんなことがあったな」
「ええ」
「絶望したり、死にたいと思ったり、腹が痛くなったり、姫貝を洗われたり、処女喪失の時は痛くて泣きわめいたり……」
「でも、ご主人様に可愛がられて私は幸せになれた」
「そして、弟に骨髄液を与えることができた」
「うれしかった……」
ヒナの髪を撫で、キスをする。
「辛い人生だったけど、生きていればやっぱり良いこともあるだろう?」
ヒナは、黙ってしがみついてくる。涙が両目から溢れている。
「体温高いな、ヒナ。まるで小鳥のようだ」
ひっく、ひっくと泣き続けるヒナ。
「まあ、しばらく泣けばいい」
翌朝、動画が届いた。ヒナの弟が、ドナーになってくれた人物へ感謝する内容だった。
「治療の経過は、これからも届くだろう。楽しみだな」
「本当に……」
朝食の後、ロビーで出入国管理官の審査を受けた。ヒナは本人のパスポートがあるわけで、もちろんパス。私もほぼ顔パスだ。
「タン様、良い性奴隷が見つかって良かったですね」
万理華が笑いながら言う。そしてヒナに向かって、
「あなたも、不思議な運を持っているのね。表参道で会った時は暗い顔をしていたけど、まさかこんな運命が待っているとは」
「自分でも不思議です」
「まあ、運も実力のうちよ。そうそう、タン様、書面の審査では飼育環境に問題はありません」
「まあ、我が友、レオナルド・チャンが作った邸宅なら抜かりはないだろう」
「確かに。ただし」
「わかっている、ヒナは決して外には出さない」
「はい、皆の幸福のために」
屋上にはチャン財閥のヘリコプターが待機していた。ヒナは真新しい純白のワンピースを着ている。それはまるで主人に全てを委ねる、手乗りの白文鳥のようだった。
二人が乗せ、ヘリが大空に舞い上がる。
「わあ、きれい。鳥になったみたい」
ヒナがはしゃいでいる。
「でも、これからはご主人様のそばで、カゴの中で生きたい」
「ヒナ」
「空を飛ぶのは今日でおしまい。ご主人様、私といっぱい遊んでくださいね」
「わかった」
約三時間の飛行の後、ヘリコプターは目的地に降り立った。はしゃぎ過ぎたヒナは、すやすやと眠っていた。
「着いたぞ、ヒナ」
「あ、ご主人様……」
「今夜は腰が抜けるほど可愛がってやるからな」
「怖い……」
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