闇調教師の恋

芦屋 道庵 (冷月 冴 改め)

文字の大きさ
上 下
1 / 13
女子大生、二体

捕獲

しおりを挟む
 北関東の都市の近郊に佇む古びた屋敷。ちょうど、里山と耕作地の境目の、集落より少し高い位置にある。江戸時代より続く富豪の棲み家であったらしく圧倒的な存在感を示していた。
 敷地は焼杉の高い板塀で囲まれ、その黒さが余計に圧を感じさせる。その内側には樹木や竹が植えられ、建屋はほとんど見えない。
 現在は代々続いた持ち主の手を離れ、東京の人間の所有になっているという噂であるが、詳しいことは誰も知らない。

 冷え冷えとした初冬の夜半、時代がかった門の前に、人目を避けるように高級ワンボックス車が停まった。間髪を入れずに門扉が開かれ、中へと進んだ。しばらく後、母屋の車止めには、降り立った男と、出迎えた初老の女の姿があった。

「ようこそお出でくださいました、霧山先生」
「お招き頂き光栄です」

 和装で長身の男は、水のように静かで冷ややかな佇まいだった。

「そちらのお嬢さんは?」
「ああ、ちょうど良い機会なので連れて来ました。舞花です」

 霧山に促され、舞花も車外に出た。
 スラリとした肢体と、漆黒で艶やかなロングヘア。コートの下のネイビーのワンピースがその美貌を引き立てている。

「まあ、綺麗なお嬢さん」
「十八になったばかりです」
「へえ……」

 初老の女・いねは好奇の目を向けた。

「こんなに若くて清純そうなお嬢さんが、この世界に入るなんて」
「まあ、今回仕込まれる女も同じ歳だったと思いますが」
「それはそうですわね」

 いねは可笑しそうに笑った。

「今夜はもう遅うございますのでゆっくりお休みください。お食事は?」
「済ませて来ました」
「左様ですか、それでは浴室付きの部屋を二つの用意いたしますので」
「助かります」

 霧山響児は「霧氷流調教術」の副代表である。この調教術とは、依頼主のオーダーを受け、女を好み通りの「活人形」に仕立て上げる技術であった。

「疲れたか」

 舞花の体調を気遣う。

「はい」
「明日はハードな一日になるぞ、ゆっくり休め」
「……承知しました」

 そうは言ったものの、昂る心と身体は言うことを聞かない。胸の突起に手が伸びる。

「ああっ、はぅ……」

 しなやかな体を海老反りにし、声を上げるのだった。

 翌朝、響児と舞花は同じ部屋で食事を摂った。女を仕上げるまでの間、一か月程度こんな朝が続く。

「良く眠れたか」
「は、はい」
「嘘をついてもすぐにわかるぞ。また自慰をしたのか」

 無言で頷く舞花。

「まあ、ほどほどにしておけよ。それから……」
「わかっています。絶対に中には入れません」
「わかっていれば良い」
「見捨てられたくありませんから」
「うむ」
「……いつになったら、情を頂けるのですか?」
「まあ、考えておこう」

 しばしの休憩の後、いねが現れた。

「それでは、お願いします」
「行きましょう」

 すでに仕事着である作務衣に着替えた響児は、案内に従い地下への階段を降りて行った。後には舞花が続く。

「緊張しているのか」
「え、ええ……」
「これも運命さだめだ。心して掛かれよ」
「はい」

 逃亡防止のためであろう、施錠された扉をひとつ過ぎる。そこには、この屋敷の主であり今回の依頼主である酒井雪之丞が待っていた。

「いね、ご苦労」

 使用人であるいねは、頭を下げて戻って行った。

「先生、またお世話になります」
「いえ、また呼んで頂いて光栄です」
「先生に仕込んで頂くと、仕上がりが全然違う」

 霧氷流により調教された活人形は「霧氷ブランド」と言われ、クオリティの高さが評判だった。

「それでは、女を見せてください」
「どうぞこちらへ」

 三人は広大な調教ルームを奥に向かって進む。古色蒼然とした屋敷の地下にこんな現代的なエリアが広がっているなど誰が想像するだろう。

「防音も完璧なので、思う存分にやって下さい」

 やがて一番奥の扉の前に着く。

「ここが飼育部屋です」

 テンキーに暗証番号を入力し、開錠する。

「どうぞ」

 招き入れようとする雪之丞だったが、響児は舞花に言った。

「外で待て」
「わかりました」

 中に入ると、ホテルのツインルームのような部屋だった。もちろん豪華さはないが、清潔で居住性は悪くないようだった。バスルームと洗浄機付きトイレも完備している。

「なかなか良い部屋ではないですか。窓はありませんが」
「大切な活人形が病んだりしては困りますからね。品質管理はしっかりとしています」
「なるほど。おお、二体いるのですね」
「はい」

 二体の女は同じベッドの上で、しっかり抱き合っていた。二体とも黒いキャミソールと小さめの黒パンティを穿いている。

「捕獲されてからどれくらい経つのですか?」
「五日目です」

 二体は双子の姉妹だった。 

 (続く)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...