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浅川 由梨花

利光

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 バスルームから戻った利光さんは柔らかく、でもしっかりと私を抱きしめた。

(ああ、やっと)

 ひととき、二人の目と目が通じた。やがて私は目を閉じ、顔を少し 上に向けた。唇にやさしいキス。利光さんの息遣いを感じ、その世界に浸りきった。利光さんは私を抱き上げるとベッドに運ぶ。彼に全てをゆだね「初めて」の場所へ。夢のようだ。やがてベッドの上に下ろされ、利光さんの顔が覆いかぶさってくる。さっきよりも長く深いキス。キスは知っていても舌を入れるキスは経験がなかった。

(なんて官能的なキスなの?でも気持ちいい……)

 もう身も心もドロドロに溶かされている。まだパジャマを着たままなのに。ベッド上で後ろから抱きしめられた。利光さんの大きな手が体中を撫でる。

「ああ……」
「どうした?」
「あったかくて、すごく気持ちいい……」
「じゃあ、これはどう?」

 パジャマの裾から、手が入ってきた。

「あん……」

 思わず声が出る。

(やっぱり、素肌が触れると温度が違うわ)

 その手がするりと抜けた。

(どうして?もう止めちゃうの?)

 しかし、利光さんはパジャマのボタンを外し始めた。待っていたとは言え緊張は一気に高まった。そして両方の乳房が利光さんの手で覆われた。 

(ああ……)

 アダルト動画のように激しい動きはない。じわーっと沁み込むような感触。好きな男性に触られることの気持ち良さにうっとりとする。利光さんの掌は少しずつ動き、乳房の下の方や、腋の下に近いところまで確かめるように触っている。

(あっ)

 そうか、利光さんは確認しているんだ。私の乳房に異常が無いことを。ほんの少しのことも見逃さないようにと。
 改めて利光さんが心に負った傷の深さと、私に対する思いを知った。

「ありがとう、でも大丈夫ですよ、利光さん」
「え?」
「私、いまのところ異常はありません。毎年、健診を受けて、マンモグラフィーもやってます」
「そうだったのか……」
「この先、体に異常が出た時は必ず本当のことを話しますから。だから、利光さんも隠さないでくださいね」
「わかった、そうしよう」

 それからパジャマを脱いで、素肌で触れ合った。体温も鼓動も、圧倒的な存在感だ。ドキドキして目を閉じていると、乳輪の円周に沿って指が動く。

「あっ」

 そして反対側も。そして乳房全体が餅を捏ねるように柔らかく揉まれる。
 すごく気持ちいい。でもじれったい。

「疲れた?」
「え?そんなことは……」
「急に無口になったから」

 快感に溺れていたからなどとは絶対に言えない。

「疲れたなら、今日はここまでにしようか?」
「ええっ!」

 思わず抗議の声を上げた。利光さんの顔を見ると、ちょっと意地悪そうな目で笑っている。

(ブラック利光だ)
「利光さん、本当はサディストじゃないんですか?」
「え、どういう意味?」
「私を弄んで楽しんでるでしょ?」
「そんなことはないよ。いつも由梨花が喜んでくれるように考えているよ」
「じゃ、なんでこんなに焦らすの?」

 私はもう、涙目になっていた。

「どうして欲しい?」
「意地悪ね」
「こうかな?」

 胸の先端を、指の背でかすかに触れる。爪の固い感触が残る。

「ああっ……」
「本気で弄んであげようか?」
「ああ、ひどいことしないで」

 乳首をちろりと舐めてきた。

「ひゃあ」

 思わず、変な声が出る。もう一方をクリクリ転がされ、思わず背筋が反り返った。
 気が遠くなりそうだ。

(アダルト動画なんて所詮演技なんだな)

 なぜかそう思えた。体の内側から弱火で炙られ、お腹の中から熱い蜜が溢れてくる。その時、いたずらな指がパンティの方に伸びてきた。

「ずいぶん濡れているな」
「いや、恥ずかしい」

 身を捩って逃げようとするが、許されない。
 下腹部の溝をなぞるように指が動く。

「はあ……」

 一番敏感な芽には触れそうで触れない。思わず腰を動かして指を迎えにいくと、すっと引かれてしまう。

「どうして?」
「まだまだ。夜は長いよ」

 いつの間にかパンティが脱がされている。

「きれいな色だ。穢れを知らないのが良くわかる」

 実際にはもうトロトロになっている、その場所に、利光さんは顔を寄せてきた。あまりの恥ずかしさにバタバタ暴れようとするが、男の力で腰を押さえつけられたら、もう動けない。

「ひあぁ」

 彼の舌が、内腿や鼠径部を這う。温かい感触が生々しい。そしてやっぱり一番のポイントは微妙に外すのだった。それでも、泉が湧き出ているあたりを指で弄られるうちに、何か大きなものがこみ上げてきた。
 来る、そう予感して、体を反らそうとした瞬間、その指は去っていった。

「ああ……」

 もう少しだったのに……。

「お願いです。もう焦らさないでください」
「ふーん、じゃこれはどう?」

 いきなり、花芽がトントンと連打される。

「う、うわぁ」

 不意を突かれて体全体が跳ね上がった。
 はぁ、はぁ……
 苦痛は一切ない。ただ快楽が与えられるだけ。
 しかし、生殺しのような快楽は何よりも過酷な試練だった。

(壊れちゃう)

 利光さんの胸に顔を埋めて気が遠くなっていった。
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