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この夜
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私の実家は利光さんの訪問を受けて、お祭り騒ぎとなった。会社で頻繁に会っている父はともかく、母は利光さんのイケメンぶりに、ぽーっとなったようだ。
兄は唯一、ちょっと厳しい考えを持っていて、妹が傷つくような話なら壊してやろうと思っていたらしい。しかし実際に話すうち利光さんの誠実さがわかったらしく、しばらくすると和やかに談笑するようになった。兄の奥さんは、完全に目がハート型になっていた。
「北海道の方のお口に合うかどうか……」
「いえ、やっぱりお寿司は東京が本場ですよね。まず、シャリが全然違います。それに鮪や鯛、そして穴子はさすが豊洲、という感じです」
そんなことを言いながら、お昼に出されたお寿司を上品に完食した。
(さすが弁護士、会話力は半端じゃないわ)
手土産の「豹屋」の羊羹が出されて、女性陣の称賛はより大きくなった。
「おいしい」
「上品な味だわ」
「やっぱり本物は違うね」
「その甘味は和三盆を使っているのですよ。小豆はもちろん、北海道の十勝産です」
その巧みなスピーチに誰もが聞き惚れてしまう。
そして、その時はやってきた。利光さんが居ずまいを正す。予期して待っていたであろう私の家族も真顔になった。
「由梨花さんと私は、二十も年が離れています。しかも私は妻と死別しております。本来なら、このようなお願いはするべきではないのかもしれません。しかし上京中、由梨花さんに栄養のサポートなどしていただき、忘れかけていた温かさを思い出しました。そばに誰かがいるって、いいなと。もう一度家庭を持ちたい、その気持ちが抑えられなくなりました。どうか、由梨花さんとの結婚をお許しください」
父が言った。
「利光さんは、由梨花のどこが好きですか?」
「心の大きさ、深さでしょうか」
「ほう……」
「由梨花さんが札幌に来た時、私は亡き妻との思い出の場所で妻と決別しようとしました。由梨花さんが見ている前で」
家族はみな、息を呑んでいる。
「そのとき、由梨花さんは言ってくれたんです。人の心はそんなに変わるものではない。いまあるがままの貴方が好きだと」
「由梨花、お前はいいのか?無理をしていないのか?」
「はい。私は小樽で美雪さんの話をいっぱい聞いて、その夜に美雪さんと話ができたような気がしました。とてもすてきだと思った、美雪さんも利光さんも。お父さんもそのために行かせたのでしょう?」
「そうだ。本当のことを知った方が良いと思ったからだ。そのうえで本人たちが惹かれ合うのなら
それは運命だと思ってな」
父は利光さんの方を向いた。
「つい最近まで、娘は本当に子供だった。もちろん、そういう育て方をしたのが悪いのですが。でも、ほんの少しの間に目を見張るような成長をしました。それも利光さんに出会ったおかげです。もう二人のことを反対できる者など誰もいません。利光さん、娘のこと、よろしくお願いします」
そう言いながら父は頭を下げた。
「ありがとうございます」
「ありがとう、お父さん」
一大イベントが終わり、私たちは帰路についた。マンションが近づくにつれ心臓の鼓動が強くなる。そして二人とも無口になっていた。
実家でかなり食べたので、夕食は軽いつまみとサラダ、そしてワインをグラス二杯。もう緊張で体が凝り固まっている。
「シャワーを浴びておいで」.
利光さんが優しく言った。頷いてバスルームへ向かう。
(あ……)
お腹の中から溢れてくるものがある。利光さんが上京するまでの間、私なりに準備をした。アダルト動画を観てみた。
(すごい……)
大学の友達と観た時は何も思わなかったのに、いまはわかるような気がする。
なぜあんなに体が跳ねるのか。なぜ、あんな声が出るのか。
思い切って、指で触れてみたら、体に電流が走ったような気がした。
(利光さんのことを思うと、それだけで敏感になる)
利光さんが札幌にいる時は、毎晩自分の指で敏感な部分に触れていた。
(ああ、気持ちいい)
利光さんと同居してからは今夜こそと期待していたが、利光さんは私の両親に挨拶するまでは、ということだったのだろう、私を抱こうとはしなかった。
そのぬくもりに幸せを感じつつも、そのじれったさは甘い拷問だった。
シャワーを終えると、入れ替わりに利光さんが入って行った。
待っている時間が無限に思われた。乳房が張っている。
(早く来て、利光さん)
兄は唯一、ちょっと厳しい考えを持っていて、妹が傷つくような話なら壊してやろうと思っていたらしい。しかし実際に話すうち利光さんの誠実さがわかったらしく、しばらくすると和やかに談笑するようになった。兄の奥さんは、完全に目がハート型になっていた。
「北海道の方のお口に合うかどうか……」
「いえ、やっぱりお寿司は東京が本場ですよね。まず、シャリが全然違います。それに鮪や鯛、そして穴子はさすが豊洲、という感じです」
そんなことを言いながら、お昼に出されたお寿司を上品に完食した。
(さすが弁護士、会話力は半端じゃないわ)
手土産の「豹屋」の羊羹が出されて、女性陣の称賛はより大きくなった。
「おいしい」
「上品な味だわ」
「やっぱり本物は違うね」
「その甘味は和三盆を使っているのですよ。小豆はもちろん、北海道の十勝産です」
その巧みなスピーチに誰もが聞き惚れてしまう。
そして、その時はやってきた。利光さんが居ずまいを正す。予期して待っていたであろう私の家族も真顔になった。
「由梨花さんと私は、二十も年が離れています。しかも私は妻と死別しております。本来なら、このようなお願いはするべきではないのかもしれません。しかし上京中、由梨花さんに栄養のサポートなどしていただき、忘れかけていた温かさを思い出しました。そばに誰かがいるって、いいなと。もう一度家庭を持ちたい、その気持ちが抑えられなくなりました。どうか、由梨花さんとの結婚をお許しください」
父が言った。
「利光さんは、由梨花のどこが好きですか?」
「心の大きさ、深さでしょうか」
「ほう……」
「由梨花さんが札幌に来た時、私は亡き妻との思い出の場所で妻と決別しようとしました。由梨花さんが見ている前で」
家族はみな、息を呑んでいる。
「そのとき、由梨花さんは言ってくれたんです。人の心はそんなに変わるものではない。いまあるがままの貴方が好きだと」
「由梨花、お前はいいのか?無理をしていないのか?」
「はい。私は小樽で美雪さんの話をいっぱい聞いて、その夜に美雪さんと話ができたような気がしました。とてもすてきだと思った、美雪さんも利光さんも。お父さんもそのために行かせたのでしょう?」
「そうだ。本当のことを知った方が良いと思ったからだ。そのうえで本人たちが惹かれ合うのなら
それは運命だと思ってな」
父は利光さんの方を向いた。
「つい最近まで、娘は本当に子供だった。もちろん、そういう育て方をしたのが悪いのですが。でも、ほんの少しの間に目を見張るような成長をしました。それも利光さんに出会ったおかげです。もう二人のことを反対できる者など誰もいません。利光さん、娘のこと、よろしくお願いします」
そう言いながら父は頭を下げた。
「ありがとうございます」
「ありがとう、お父さん」
一大イベントが終わり、私たちは帰路についた。マンションが近づくにつれ心臓の鼓動が強くなる。そして二人とも無口になっていた。
実家でかなり食べたので、夕食は軽いつまみとサラダ、そしてワインをグラス二杯。もう緊張で体が凝り固まっている。
「シャワーを浴びておいで」.
利光さんが優しく言った。頷いてバスルームへ向かう。
(あ……)
お腹の中から溢れてくるものがある。利光さんが上京するまでの間、私なりに準備をした。アダルト動画を観てみた。
(すごい……)
大学の友達と観た時は何も思わなかったのに、いまはわかるような気がする。
なぜあんなに体が跳ねるのか。なぜ、あんな声が出るのか。
思い切って、指で触れてみたら、体に電流が走ったような気がした。
(利光さんのことを思うと、それだけで敏感になる)
利光さんが札幌にいる時は、毎晩自分の指で敏感な部分に触れていた。
(ああ、気持ちいい)
利光さんと同居してからは今夜こそと期待していたが、利光さんは私の両親に挨拶するまでは、ということだったのだろう、私を抱こうとはしなかった。
そのぬくもりに幸せを感じつつも、そのじれったさは甘い拷問だった。
シャワーを終えると、入れ替わりに利光さんが入って行った。
待っている時間が無限に思われた。乳房が張っている。
(早く来て、利光さん)
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