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おまけ
そして町は守護者を手に入れる
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霧の峠に近い町。バレリ。
峠の道が開通すれば王都への近道になる。そうなれば町も潤う。しかし、まだこの町には守護がいなかった。開通までは国からの兵が付き、沢山のハンターが訪れる。でも、その中でここにとどまってくれるというハンターはいるだろうか。峠の開通は嬉しい。しかし、峠が開通すればこの町に訪れるものが増えるのは人だけではない……魔獣も流れ込んでくるだろう。
奴らの好物は
人なのだから。
***
国から峠の魔獣討伐隊が派遣されてきて、いよいよ道路の建設が本格的に始まりを告げた。宿屋を経営するうちにとっては稼ぎ時で、毎日が満員御礼でありがたいに尽きる。
ちらほらとハンターもやってきた。ハンターの大半は獣族、もしくは人と獣族の混血が多い。単に身体能力によるところが大きい。ハンターはこういった討伐にはグループで行動する。だいたいは人族が司令塔となることが多い。その方がうちとしても助かる。どうも獣族は体が一気に成長する分、気持ちは幼いのに体を持て余しているからだ。
「おい。姉ちゃん、今晩付き合わねえか?」
「そう言うことでしたら、ここを出て、左の角を曲がった突き当りの「桃色カフェ」をお勧めしますよ、お客様」
にっこり笑って、今カウンターで受付を済ませた男をかわす。向こうで笑顔だが完全に怒っている父親に、大丈夫だからと軽く手で制して合図した。
「これ、割引券付ですよ」
そう言ってピンク色のチラシを渡してやると、その艶めかしい写真に釘付けになった男が「お、おう」と返事をした。こういう単純なところは可愛い。
そうしてにぎわっていた宿屋だが討伐が難航しているのか戻ってきたハンターがいないのが少し話題になっていた。
「でも、ハンターなんて仕事が終わったらさっさとギルドに向かうでしょ?この町には無いんだから換金できないところに戻って来ないよ」
「まあ、そうだな」
そんなこと言っていた数日後に少し異例のハンターがやってきた。
***
「えっと、男二人。種族は……俺は人族、で、内緒にしてほしいんだけど、俺の相棒エルフなんだ」
「えっ!?」
「あそこにいるフード被ったやつな。あんたも知ってるだろうけど、エルフは人嫌いなのに目立つだろ?だから、ちょっと便宜を図って欲しい。トイレ、風呂付。風呂は無理ならタライに湯をくれ。あと、野菜だけの料理だせる?」
しっかりと筋肉の付いた体にアンバランスな可愛らしい印象の顔だが、絶対に強いと断言できる男が愛嬌よく笑いかけながら私にそう言った。やばい、カッコイイ。
「出来れば、一番奥の部屋が良いんだけど」
茶色い髪がサラサラで深い碧の瞳。黙ってたらそんなに感じないんだけど、この人笑うとめっちゃ、イイ!
なにがって、表現できないけど何かが!!ポーっとしていた私からカギを受け取ると宿帳の記入によるその男の人「スウ」さんは食堂へとフードの人と姿を消していった。
……後から聞いたら、スウさん、あっちの方も凄く良いらしい。猫族のココが顔を赤らめて「初めて”帰りに寄って”って誘っちゃった!」と言っていた。う、羨ましい。そんなこんな女子トークを昼間かまして、親友の風呂屋のエルともう一回スウさんを拝めないものかと、ため息をついていたら大事件が起きた。
「峠の討伐隊からもう10日も連絡が途絶えているらしい」
昼過ぎに国から派遣された200人ほどの追加の討伐隊が到着して一気に宿が埋め尽くされた。町の広場には野営の準備が進められている。
「こりゃあ、大掛かりなことになりそうだな。ミリー、いつでも町を出られるように準備しておけ」
この町には自衛団はあっても魔獣対策がない。もし、何かあったら逃げの一手だ。今まで魔獣がいたことがないのは隣に大きな街があるためと町を囲む川が魔獣を避けていたことが大きい。
「もしかしたら、大量の魔獣がいたかもしれないんだとよ。それもレベルの高い」
「……」
父親のその声に私はスウさんを思った。……彼も、もしかしたら、と。あの笑顔にもう会えないのかと思うと少し鼻の奥がツンとした。私の予想は半分正解だったが半分は不正解だった。
***
夕方、
討伐隊の荷馬車からこの町に女神が降り立った。
その女神は殆ど裸で(神とはそういうものだとしか……)一人のこれまた神々しほどの美しい男をなんと背負っていたそうだ。
私はその姿を不埒な男どもの後ろでちらっとしか見れなかったがばっちり見たエルは女の子はめちゃんこエロイし、可愛いし、背負われてる男の人は絶世の美男子だし!と大興奮だった。……わたしも間近で見たかった。
で、後々話を聞くとこの二人、なんとあのレベル5のアンデッドワームを瀕死に追いやって、霧の峠を取り返したという!!!すごい!!何人ものハンターと討伐隊をもってしても無理だったことを、たった二人で……。その後役場に集まった町の有力者が報奨金を積んで何とか二人をこの町に留められないかと話し合った。
国からの役人が何日も滞在して霧の峠の後処理に回っていたころ、傷が癒えたエルフがアンデッドワームに止めをさして報奨金を受け取ったと聞いた。その金で町のはずれに家を買ったと聞いて町の皆は小躍りした。
「で、あの二人は恋人なの!?」
「そうじゃないのぉ? だってさ、桃色カフェに寝泊まりってよっぽどじゃない。まあ、エルフの方がワームの毒が入って大変だったらしいけど。てか、家買ったんだから所帯持つんじゃないの?」
「へええ。ん!? エルフ!? あの人エルフだったの?」
「そりゃ、そうよ! あんな美形だもん! それに、あの女の子、元は男だったんだって!!」
「スウちゃん、可愛いーよなぁ!! あの無防備エロスはみんなの宝だよ!!」
「ちょっと、サブ、会話に入って来ないでよ。」
そこで医療院で働いているサブが会話に入ってきた。サブはブツブツと最近はじじいが余計な入れ度知恵して厚着になったと不服そうに付け足した。
「んん??その名前、どこかで……」
ハッとあの宿の記帳の名前が浮かんだ。なんてこった!!スウちゃんて!!スウさんじゃないか!!
「「あれ、ミリー、どうしたの!?」」
「なんで女に!?」
机に拳を叩きつけながら突っ伏す私をエルとサブが何事かと覗き込む。そりゃ、そうだ。生きていたのかって、嬉しい気持ちと今となって淡い恋心が砕け散ったのだから。
「今夜は飲むぞ~~~!!」
やってられるか!! と泣き笑いの私にその晩、二人は付き合ってくれた。
***
ムゴムゴ~~~
……
はあはあ。
……
なんでこんなことに。これはヤバい。ホントにヤバい。
あれからしこたま飲んで……三人で四軒目に入ったのだが、ちょうど柄の悪い連中と居合わせた。流石にまずい連中だと悟って店をすぐに出たのだがそれも裏目に出たようで路地裏で襲われてしまった。
只今、絶賛、猿轡されて麻袋中ナウ。グぬぬ。
イッッ発でダウンとか、サブ……。溝に落ちてたけど大丈夫かな。って、人のこと心配してる場合じゃない。エルと二人で売られてしまう!!絶望と荷物みたいに揺られて運ばれて気持ち悪いのと、もう涙を流すしかできなかった。
しかし、その苦痛はそう長くは続かなかった。ドアを開ける音がして、何か話す声が一言二言で。後はドスンドスン。で、視界が明るくなったと思ったら碧のクリクリお目が私を見つめていた。
マジ、天使。
麻袋から出してもらって私とエルはオイオイと泣きながらスウさんに抱き付いた。もう、鼻水垂らしてようが、どうでもよかった。優しく、いさめるようにスウさんが私たちの頭をなでてくれた。
「さあ、泣いてないで、悪いやつらが起きてこない様に縛ってやろう」
え、この人達、皆スウさんがやっつけたの!?秒殺だったんだけど!?でも、周りを見渡しても捕まってたエルと私とスウさんしかいない。ハンターってべらぼうに強いって聞いてたけど……すごい。同じことを思ったのかエルと目が合った。
「スウ!!」
その時、ドアがバーンと開いて超美形が入ってきた。あの、エルフだ。
「え、ロイ!?」
美形のエルフはスウさんのところに一目散でやってくる。途中、「ゲ」「グエ」と倒した男を踏みつけながら気にもせずに。そして、私たちに一瞬冷たい視線を送って押しのけるようにスウさんを抱きしめた。
エルと私はポカーン。
「ロイ、ミリーとエルが偶然この小屋にさらわれてきたんだ。賊はやっつけたから自衛団呼んであげてくれ……ん、んーん!!」
なんだか分からないうちに二人の濃厚なラブシーンが始まった。えー!!そんなに激しくキスしちゃう!??スウさんがなんとか逃れようとするけど美形エルフは離そうとしなかった。なにがどうなってるのか。
「自衛団は間もなく来ます。貴方がいなくなったと、町中捜索が始まっていましたから」
どうやら美形エルフとスウさんは何かあったようだ。取りあえず美味しそうな話なので黙って聞き耳を立てることにする。エルも目が合うと小さく頷いた。
「スウ、私以外を見ないで、私は貴方を手放せません。酷い男とののしってもいい。傍にいてください」
「ロイ……ロイは最高に良い男だよ。俺、酷いやつだなんて思ってない。混乱しちまって、一人で考えたくて、逃げ出して悪かったよ。エルフの嫁さんもらう方がロイにとって幸せだってわかってても……その、俺も離れたくない。俺を選んで。あ、あ……愛してるんだ」
なんだかわからないが、二人は今両想いになったようだ!!
助けられた高揚感もあってエルと二人で感極まってなんだかわからない雄叫びを町の人と一緒に上げていた。いい! なんか、いい!!
そうして
私たちは立派なスウさんのシンパになり、この町に根付いてくれる心強い守護者を手に入れたのだった。
峠の道は開通し、この町も大きく発展することとなるが、二人の夫婦に守られて、旅人に驚かれるほど大らかな町は助け合う温かい町だと評判になった。
**秘密裏に回った町長からの布告**
1、不用意に夜分に町はずれの薬屋に近づいてはならない。
→彼らは熱い夜を過ごしているのだがから邪魔してはいけない。万が一スウちゃんの甘い声を聞いたのなら生きて帰って来れない。
2、スウちゃんに薄着を勧めてはいけない。
→ロイさんの嫉妬により家からスウちゃんが出してもらえなくなる。
3、スウちゃんの裸は心に留めておいて口外することは禁止する。
→これは死を意味する。
4、町に出てくるようになったロイさんには注意して会話すること。
→あいさつ、天気の話は可。褒めるときは必ず夫婦として褒めること。ロイさんとスウちゃん、個人で褒めることは危険なので禁止。前者は避けられるし後者は嫉妬される
これさえ守れば町は安泰……の筈 (笑)
峠の道が開通すれば王都への近道になる。そうなれば町も潤う。しかし、まだこの町には守護がいなかった。開通までは国からの兵が付き、沢山のハンターが訪れる。でも、その中でここにとどまってくれるというハンターはいるだろうか。峠の開通は嬉しい。しかし、峠が開通すればこの町に訪れるものが増えるのは人だけではない……魔獣も流れ込んでくるだろう。
奴らの好物は
人なのだから。
***
国から峠の魔獣討伐隊が派遣されてきて、いよいよ道路の建設が本格的に始まりを告げた。宿屋を経営するうちにとっては稼ぎ時で、毎日が満員御礼でありがたいに尽きる。
ちらほらとハンターもやってきた。ハンターの大半は獣族、もしくは人と獣族の混血が多い。単に身体能力によるところが大きい。ハンターはこういった討伐にはグループで行動する。だいたいは人族が司令塔となることが多い。その方がうちとしても助かる。どうも獣族は体が一気に成長する分、気持ちは幼いのに体を持て余しているからだ。
「おい。姉ちゃん、今晩付き合わねえか?」
「そう言うことでしたら、ここを出て、左の角を曲がった突き当りの「桃色カフェ」をお勧めしますよ、お客様」
にっこり笑って、今カウンターで受付を済ませた男をかわす。向こうで笑顔だが完全に怒っている父親に、大丈夫だからと軽く手で制して合図した。
「これ、割引券付ですよ」
そう言ってピンク色のチラシを渡してやると、その艶めかしい写真に釘付けになった男が「お、おう」と返事をした。こういう単純なところは可愛い。
そうしてにぎわっていた宿屋だが討伐が難航しているのか戻ってきたハンターがいないのが少し話題になっていた。
「でも、ハンターなんて仕事が終わったらさっさとギルドに向かうでしょ?この町には無いんだから換金できないところに戻って来ないよ」
「まあ、そうだな」
そんなこと言っていた数日後に少し異例のハンターがやってきた。
***
「えっと、男二人。種族は……俺は人族、で、内緒にしてほしいんだけど、俺の相棒エルフなんだ」
「えっ!?」
「あそこにいるフード被ったやつな。あんたも知ってるだろうけど、エルフは人嫌いなのに目立つだろ?だから、ちょっと便宜を図って欲しい。トイレ、風呂付。風呂は無理ならタライに湯をくれ。あと、野菜だけの料理だせる?」
しっかりと筋肉の付いた体にアンバランスな可愛らしい印象の顔だが、絶対に強いと断言できる男が愛嬌よく笑いかけながら私にそう言った。やばい、カッコイイ。
「出来れば、一番奥の部屋が良いんだけど」
茶色い髪がサラサラで深い碧の瞳。黙ってたらそんなに感じないんだけど、この人笑うとめっちゃ、イイ!
なにがって、表現できないけど何かが!!ポーっとしていた私からカギを受け取ると宿帳の記入によるその男の人「スウ」さんは食堂へとフードの人と姿を消していった。
……後から聞いたら、スウさん、あっちの方も凄く良いらしい。猫族のココが顔を赤らめて「初めて”帰りに寄って”って誘っちゃった!」と言っていた。う、羨ましい。そんなこんな女子トークを昼間かまして、親友の風呂屋のエルともう一回スウさんを拝めないものかと、ため息をついていたら大事件が起きた。
「峠の討伐隊からもう10日も連絡が途絶えているらしい」
昼過ぎに国から派遣された200人ほどの追加の討伐隊が到着して一気に宿が埋め尽くされた。町の広場には野営の準備が進められている。
「こりゃあ、大掛かりなことになりそうだな。ミリー、いつでも町を出られるように準備しておけ」
この町には自衛団はあっても魔獣対策がない。もし、何かあったら逃げの一手だ。今まで魔獣がいたことがないのは隣に大きな街があるためと町を囲む川が魔獣を避けていたことが大きい。
「もしかしたら、大量の魔獣がいたかもしれないんだとよ。それもレベルの高い」
「……」
父親のその声に私はスウさんを思った。……彼も、もしかしたら、と。あの笑顔にもう会えないのかと思うと少し鼻の奥がツンとした。私の予想は半分正解だったが半分は不正解だった。
***
夕方、
討伐隊の荷馬車からこの町に女神が降り立った。
その女神は殆ど裸で(神とはそういうものだとしか……)一人のこれまた神々しほどの美しい男をなんと背負っていたそうだ。
私はその姿を不埒な男どもの後ろでちらっとしか見れなかったがばっちり見たエルは女の子はめちゃんこエロイし、可愛いし、背負われてる男の人は絶世の美男子だし!と大興奮だった。……わたしも間近で見たかった。
で、後々話を聞くとこの二人、なんとあのレベル5のアンデッドワームを瀕死に追いやって、霧の峠を取り返したという!!!すごい!!何人ものハンターと討伐隊をもってしても無理だったことを、たった二人で……。その後役場に集まった町の有力者が報奨金を積んで何とか二人をこの町に留められないかと話し合った。
国からの役人が何日も滞在して霧の峠の後処理に回っていたころ、傷が癒えたエルフがアンデッドワームに止めをさして報奨金を受け取ったと聞いた。その金で町のはずれに家を買ったと聞いて町の皆は小躍りした。
「で、あの二人は恋人なの!?」
「そうじゃないのぉ? だってさ、桃色カフェに寝泊まりってよっぽどじゃない。まあ、エルフの方がワームの毒が入って大変だったらしいけど。てか、家買ったんだから所帯持つんじゃないの?」
「へええ。ん!? エルフ!? あの人エルフだったの?」
「そりゃ、そうよ! あんな美形だもん! それに、あの女の子、元は男だったんだって!!」
「スウちゃん、可愛いーよなぁ!! あの無防備エロスはみんなの宝だよ!!」
「ちょっと、サブ、会話に入って来ないでよ。」
そこで医療院で働いているサブが会話に入ってきた。サブはブツブツと最近はじじいが余計な入れ度知恵して厚着になったと不服そうに付け足した。
「んん??その名前、どこかで……」
ハッとあの宿の記帳の名前が浮かんだ。なんてこった!!スウちゃんて!!スウさんじゃないか!!
「「あれ、ミリー、どうしたの!?」」
「なんで女に!?」
机に拳を叩きつけながら突っ伏す私をエルとサブが何事かと覗き込む。そりゃ、そうだ。生きていたのかって、嬉しい気持ちと今となって淡い恋心が砕け散ったのだから。
「今夜は飲むぞ~~~!!」
やってられるか!! と泣き笑いの私にその晩、二人は付き合ってくれた。
***
ムゴムゴ~~~
……
はあはあ。
……
なんでこんなことに。これはヤバい。ホントにヤバい。
あれからしこたま飲んで……三人で四軒目に入ったのだが、ちょうど柄の悪い連中と居合わせた。流石にまずい連中だと悟って店をすぐに出たのだがそれも裏目に出たようで路地裏で襲われてしまった。
只今、絶賛、猿轡されて麻袋中ナウ。グぬぬ。
イッッ発でダウンとか、サブ……。溝に落ちてたけど大丈夫かな。って、人のこと心配してる場合じゃない。エルと二人で売られてしまう!!絶望と荷物みたいに揺られて運ばれて気持ち悪いのと、もう涙を流すしかできなかった。
しかし、その苦痛はそう長くは続かなかった。ドアを開ける音がして、何か話す声が一言二言で。後はドスンドスン。で、視界が明るくなったと思ったら碧のクリクリお目が私を見つめていた。
マジ、天使。
麻袋から出してもらって私とエルはオイオイと泣きながらスウさんに抱き付いた。もう、鼻水垂らしてようが、どうでもよかった。優しく、いさめるようにスウさんが私たちの頭をなでてくれた。
「さあ、泣いてないで、悪いやつらが起きてこない様に縛ってやろう」
え、この人達、皆スウさんがやっつけたの!?秒殺だったんだけど!?でも、周りを見渡しても捕まってたエルと私とスウさんしかいない。ハンターってべらぼうに強いって聞いてたけど……すごい。同じことを思ったのかエルと目が合った。
「スウ!!」
その時、ドアがバーンと開いて超美形が入ってきた。あの、エルフだ。
「え、ロイ!?」
美形のエルフはスウさんのところに一目散でやってくる。途中、「ゲ」「グエ」と倒した男を踏みつけながら気にもせずに。そして、私たちに一瞬冷たい視線を送って押しのけるようにスウさんを抱きしめた。
エルと私はポカーン。
「ロイ、ミリーとエルが偶然この小屋にさらわれてきたんだ。賊はやっつけたから自衛団呼んであげてくれ……ん、んーん!!」
なんだか分からないうちに二人の濃厚なラブシーンが始まった。えー!!そんなに激しくキスしちゃう!??スウさんがなんとか逃れようとするけど美形エルフは離そうとしなかった。なにがどうなってるのか。
「自衛団は間もなく来ます。貴方がいなくなったと、町中捜索が始まっていましたから」
どうやら美形エルフとスウさんは何かあったようだ。取りあえず美味しそうな話なので黙って聞き耳を立てることにする。エルも目が合うと小さく頷いた。
「スウ、私以外を見ないで、私は貴方を手放せません。酷い男とののしってもいい。傍にいてください」
「ロイ……ロイは最高に良い男だよ。俺、酷いやつだなんて思ってない。混乱しちまって、一人で考えたくて、逃げ出して悪かったよ。エルフの嫁さんもらう方がロイにとって幸せだってわかってても……その、俺も離れたくない。俺を選んで。あ、あ……愛してるんだ」
なんだかわからないが、二人は今両想いになったようだ!!
助けられた高揚感もあってエルと二人で感極まってなんだかわからない雄叫びを町の人と一緒に上げていた。いい! なんか、いい!!
そうして
私たちは立派なスウさんのシンパになり、この町に根付いてくれる心強い守護者を手に入れたのだった。
峠の道は開通し、この町も大きく発展することとなるが、二人の夫婦に守られて、旅人に驚かれるほど大らかな町は助け合う温かい町だと評判になった。
**秘密裏に回った町長からの布告**
1、不用意に夜分に町はずれの薬屋に近づいてはならない。
→彼らは熱い夜を過ごしているのだがから邪魔してはいけない。万が一スウちゃんの甘い声を聞いたのなら生きて帰って来れない。
2、スウちゃんに薄着を勧めてはいけない。
→ロイさんの嫉妬により家からスウちゃんが出してもらえなくなる。
3、スウちゃんの裸は心に留めておいて口外することは禁止する。
→これは死を意味する。
4、町に出てくるようになったロイさんには注意して会話すること。
→あいさつ、天気の話は可。褒めるときは必ず夫婦として褒めること。ロイさんとスウちゃん、個人で褒めることは危険なので禁止。前者は避けられるし後者は嫉妬される
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