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本編
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男たちが抱えている麻袋は二つ。なにやら動いている。うん、怪しいよな。
「おい、これもなかなか可愛い顔してんじゃないか。乳もでかいし。」
先頭のリーダー格が俺を舐めるように見てそう言った。これも……。って事は言わずもがな、あの袋の中身は……。
グエ!!!
先手必勝!俺は先頭の男に頭突きをかます。グエって、なんだよ。続いて素早く身をかがめて後方二人の足を払う。驚いたさらに後ろの二人が麻袋を下に置いて俺を捕まえようと構えた。馬鹿、遅えんだよ!
立てかけてあった鍬を踏んで手に取ると柄の部分で鳩尾に一発づつ食らわせる。
ドタンドタンと二人倒れて立ち上がってきた先に倒した二人と対座する。リーダー格は脳震盪でも起こしたのか鼻血を出して倒れたままだった。
「この女!!」
悔しがりながら手を伸ばしてくる男の背中を伝ってくるりと後ろに回り込む。尻に蹴りを一発入れてもう一人の男のほうに倒すとあっさりと二人は気絶してしまった。
「ハンター相手に馬鹿なやつ。」
これまでどんだけ命張って魔物との修羅場くぐってきたと思ってんだ。見てくれだけで見下しやがって。これでも女になってからも鍛えてんだぞ。巷でハンターに挑んでくる馬鹿はいない。ハンターでいられること、それは生き延びられてきた精鋭だけだからだ。
あっけなく五人をのした俺は麻袋を開ける。案の定、中には女の子が入っていた。宿屋の看板娘のミリーにこっちは風呂屋のエルだ。猿轡と手足を縛っていた縄を外してやると二人はおいおいと泣きながら俺に抱き付いてきた。よしよし、怖かったな。
「さあ、泣いてないで、悪いやつらが起きてこない様に縛ってやろう。」
俺が声をかけると気丈にも二人は涙と埃で泥だらけになった顔で頷いた。可愛いな、と思いながら頭をそれぞれ撫でてやった。
「スウ!!」
その時、ドアがバーンと開いてロイが入ってきた。
「え、ロイ!?」
ロイは俺のところに一目散でやってくる。途中、「ゲ」「グエ」と倒した男を踏みつけながら気にもせずに。そして、ミリーとエルに一瞬冷たい視線を送って俺の手を外すと二人を押しのけるように俺を抱きしめてきた。
おいおい、被害者は娘さんたちだぜ!?
「ロイ、ミリーとエルが偶然この小屋にさらわれてきたんだ。賊はやっつけたから自衛団呼んであげてくれ……ん、んーん!!!」
なぜかロイの唇で俺の口が塞がれた!えええ!?なんなの!?ちょっと、エリーとエルがポカーンってしてるって!!
「自衛団は間もなく来ます。貴方がいなくなったと、町中捜索が始まっていましたから。」
なにそれ、コワイ。
「スウ、私以外を見ないで、私は貴方を手放せません。酷い男とののしってもいい。傍にいてください。」
「ロイ……ロイは最高に良い男だよ。俺、酷いやつだなんて思ってない。混乱しちまって、一人で考えたくて、逃げ出して悪かったよ。エルフの嫁さんもらう方がロイにとって幸せだってわかってても……その、俺も離れたくない。俺を選んで。あ、あ……愛してるんだ。」
最後の言葉は蚊の鳴くような小さい声になっちまった。でも、ロイにはちゃんと聞こえていたようで、力一杯抱きしめてきて、「私もです。」と言ってくれた。
ワアアアアアアアアアア!!!!
ロイの熱い口付けで視界がなくなった俺の背中から凄い歓声が聞こえた。ええ!?
びっくりしてモガモガとやっとこさでロイの肩を押し出して周りを見ると四方八方を町の人に囲まれて「おめでとう!」「やっとかよ~~!!」「よかったよかった」と賛辞をもらう。雑貨屋の婆さんまでハンカチ押し当てて泣いてるし……、てか、今明け方だよね!みんな、わかってる!?
「この勢いで結婚式じゃあああああ!!!」
ワイのワイのと町は大騒ぎで、しかしながらすぐには無理だと町のおば……お姉ちゃん軍団に男たちがどやされて、賊は縛り上げなきゃならんは、とバタバタと一日が過ぎていった。
***
「ブレアは帰ったの?」
「ええ。」
「その、ほんとに良かったのか……。」
善は急げと、結婚式が1週間後に決まってしまった。おば……お姉ちゃんたちは俺に着せるドレスを急いで用意してくれるらしい……断る雰囲気ではなかった。俺たちは家に帰り、ロイは始終ニコニコと俺を向かい合わせに膝に座らせて微笑んでいた。う、なんかその美しさが今日は神々しい。
「スウ、あのね。「ラナ様」ってもう二百三十歳なんです。だから、夫に先立たれて、五人の夫枠が二人空いてブレアと私に話が回ってきたんです。お年ですから、子どもは無理ですよ。夫なんて名ばかりです。そんなものにしがみつくことはないんです。」
「え!?ブレアは最後のチャンスって。」
「うーん、まあ、奇跡が起きないでもないですが……。」
「そうなんだ。」
「私たちの方が可能性大きいと思いますよ。」
「どうして?」
「それはね……。」
愛し合ってますからね、そう耳元にロイが囁いた。は、反則だろう!?
それから、当然、俺はロイにトロトロにとろけさせられて、幸せに溺れていくのだった。
「おい、これもなかなか可愛い顔してんじゃないか。乳もでかいし。」
先頭のリーダー格が俺を舐めるように見てそう言った。これも……。って事は言わずもがな、あの袋の中身は……。
グエ!!!
先手必勝!俺は先頭の男に頭突きをかます。グエって、なんだよ。続いて素早く身をかがめて後方二人の足を払う。驚いたさらに後ろの二人が麻袋を下に置いて俺を捕まえようと構えた。馬鹿、遅えんだよ!
立てかけてあった鍬を踏んで手に取ると柄の部分で鳩尾に一発づつ食らわせる。
ドタンドタンと二人倒れて立ち上がってきた先に倒した二人と対座する。リーダー格は脳震盪でも起こしたのか鼻血を出して倒れたままだった。
「この女!!」
悔しがりながら手を伸ばしてくる男の背中を伝ってくるりと後ろに回り込む。尻に蹴りを一発入れてもう一人の男のほうに倒すとあっさりと二人は気絶してしまった。
「ハンター相手に馬鹿なやつ。」
これまでどんだけ命張って魔物との修羅場くぐってきたと思ってんだ。見てくれだけで見下しやがって。これでも女になってからも鍛えてんだぞ。巷でハンターに挑んでくる馬鹿はいない。ハンターでいられること、それは生き延びられてきた精鋭だけだからだ。
あっけなく五人をのした俺は麻袋を開ける。案の定、中には女の子が入っていた。宿屋の看板娘のミリーにこっちは風呂屋のエルだ。猿轡と手足を縛っていた縄を外してやると二人はおいおいと泣きながら俺に抱き付いてきた。よしよし、怖かったな。
「さあ、泣いてないで、悪いやつらが起きてこない様に縛ってやろう。」
俺が声をかけると気丈にも二人は涙と埃で泥だらけになった顔で頷いた。可愛いな、と思いながら頭をそれぞれ撫でてやった。
「スウ!!」
その時、ドアがバーンと開いてロイが入ってきた。
「え、ロイ!?」
ロイは俺のところに一目散でやってくる。途中、「ゲ」「グエ」と倒した男を踏みつけながら気にもせずに。そして、ミリーとエルに一瞬冷たい視線を送って俺の手を外すと二人を押しのけるように俺を抱きしめてきた。
おいおい、被害者は娘さんたちだぜ!?
「ロイ、ミリーとエルが偶然この小屋にさらわれてきたんだ。賊はやっつけたから自衛団呼んであげてくれ……ん、んーん!!!」
なぜかロイの唇で俺の口が塞がれた!えええ!?なんなの!?ちょっと、エリーとエルがポカーンってしてるって!!
「自衛団は間もなく来ます。貴方がいなくなったと、町中捜索が始まっていましたから。」
なにそれ、コワイ。
「スウ、私以外を見ないで、私は貴方を手放せません。酷い男とののしってもいい。傍にいてください。」
「ロイ……ロイは最高に良い男だよ。俺、酷いやつだなんて思ってない。混乱しちまって、一人で考えたくて、逃げ出して悪かったよ。エルフの嫁さんもらう方がロイにとって幸せだってわかってても……その、俺も離れたくない。俺を選んで。あ、あ……愛してるんだ。」
最後の言葉は蚊の鳴くような小さい声になっちまった。でも、ロイにはちゃんと聞こえていたようで、力一杯抱きしめてきて、「私もです。」と言ってくれた。
ワアアアアアアアアアア!!!!
ロイの熱い口付けで視界がなくなった俺の背中から凄い歓声が聞こえた。ええ!?
びっくりしてモガモガとやっとこさでロイの肩を押し出して周りを見ると四方八方を町の人に囲まれて「おめでとう!」「やっとかよ~~!!」「よかったよかった」と賛辞をもらう。雑貨屋の婆さんまでハンカチ押し当てて泣いてるし……、てか、今明け方だよね!みんな、わかってる!?
「この勢いで結婚式じゃあああああ!!!」
ワイのワイのと町は大騒ぎで、しかしながらすぐには無理だと町のおば……お姉ちゃん軍団に男たちがどやされて、賊は縛り上げなきゃならんは、とバタバタと一日が過ぎていった。
***
「ブレアは帰ったの?」
「ええ。」
「その、ほんとに良かったのか……。」
善は急げと、結婚式が1週間後に決まってしまった。おば……お姉ちゃんたちは俺に着せるドレスを急いで用意してくれるらしい……断る雰囲気ではなかった。俺たちは家に帰り、ロイは始終ニコニコと俺を向かい合わせに膝に座らせて微笑んでいた。う、なんかその美しさが今日は神々しい。
「スウ、あのね。「ラナ様」ってもう二百三十歳なんです。だから、夫に先立たれて、五人の夫枠が二人空いてブレアと私に話が回ってきたんです。お年ですから、子どもは無理ですよ。夫なんて名ばかりです。そんなものにしがみつくことはないんです。」
「え!?ブレアは最後のチャンスって。」
「うーん、まあ、奇跡が起きないでもないですが……。」
「そうなんだ。」
「私たちの方が可能性大きいと思いますよ。」
「どうして?」
「それはね……。」
愛し合ってますからね、そう耳元にロイが囁いた。は、反則だろう!?
それから、当然、俺はロイにトロトロにとろけさせられて、幸せに溺れていくのだった。
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