そこに愛はあるか

竹輪

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本編

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 ――アンデッドワーム
 レベル5の魔物。奴は獲物を食べる以外に殺して異形にして使徒させることができる。群れを作ることを嫌うので本体は集団ではなく単独、使徒にした者は奴の食べかすか、食べ残しって事だ。国の情報は魔物の集団らしきで止まってる。このまま被害が広がるとワームは使徒を増やして町を襲うだろう。

「本体を見つけて仕留めれば生き残れる可能性があるな」

「それほど簡単な相手ではないでしょうけど、使徒出来る範囲は決まっていますから門までと考えるのが普通でしょうね」

「今は、な。もう移動し始めてる。俺たちを狩るために」

「ハンターチーム十人と門を守ってた国からの討伐隊となんやかんやでで五十人くらいか。中心に切り込む。ロイ、援護頼む」

「森に誘いましょう。数では分が悪いです」

「てか、もう囲まれてっけどな!」

 岩を蹴って上にジャンプする。両手に剣を握り左右に広げると勢いをつけて迫りくるアンデッドを容赦なく切りつけた。

 ブシャ!

 もう人ではない黒い塊から体液のようなものが飛び散る。再生しないのはありがたいが腐敗臭半端ねえな!

 グエ

 グエ……

「まずは四体か」

「スウ! 走って!」

 ヒュン

 ロイの弓が唸る。一度森深くに誘ってからアンデッドの出る方向を探り、中心のワームを探す。探知はロイに任せて俺は一匹でも多くアンデッドを減らさなければ。ロイの方に意識が向かない様に派手な立ち回りをする。背中はロイが守ってくれる。俺は迷わず進んでいけばいい。

「しゃ! これで十体目っ!」

 襲ってきた奴らがひとまずなりを潜めた。ワームはレベル5だ。むやみに自分の使徒を減らしてはいないだろう。後方のロイは木の上で様子を覗っている。ワームは地面に潜るのが御得意だが空中戦は無理だからな。残りのアンデッドは目算の誤りがなければ40と言ったところだ。さあ、どう出る……。ロイを見上げると静かに俺に頷いた。それを合図に俺はロイの木の下に駆け寄った。

「どりゃあああああああああ!!!!」

 僅かに盛り上がる土に剣を思いっきりぶっさす。

 大木が左右にミシミシ揺れてロイは心得たように次の木に飛び移っていた。ワームがどこまで理解しているかは分からないがロイが司令塔であるのは御見通しだったようだ。だか、それはこっちの読みってもんだ!

 ワームと言われているが似ているのはミミズのその姿だけで、実際は固い鱗のようなものに身を包んでいる。くそっ固くて剣が思うようにはいらねぇ!! しかも本体でけぇし! なげぇしよ!!

 渾身の力で腕に力を込めるが体が引きずられていくだけだ。ロイの弓の音が何度か聞こえているがその体を貫いているかは確認できない。

「スウ! ダメだ! 離せ!!」

 ロイが珍しく慌てた声で叫んだのが聞こえた。

 でも、必死だった俺は馬鹿みたいに愛剣を手放すことができずにワームに引きずられてしまった。ガツンと後頭部に衝撃を受けて……

「スウ!!」

 ロイの悲痛な声を最後に俺の意識は飛んだ……。

 ***

 ヌチャ

 ネチャ……

 何かが体を這い回っている……

 気持ちが悪い……。

 たしか、蛇族の女の子と寝た時はこんな感じだったけど、ローションたっぷり使ったからもっと滑りがよかったし……。

「え……」

 ふと、覚醒すると真っ暗闇だ。ズズ……という音と腐敗臭、耳を澄ませばわずかに水音が聞こえた。

 俺はワームに引きずられて……。

 体を動かそうにも四肢が押さえつけられていて指しか動かない。ワームは俺を殺さなかったようだ。空気の温度が低い。どうやらこいつの住処で、洞窟のようなところだろう。

 それより、何かが体を這い回っている。なんだ?服の感触がしない。素肌をこすりつけられている

「んあっ!」

 やっべえ!今乳首かすった!なにこれ、すんげえ感じたんだけど!性的に!て……なんか非常に違和感がある。俺のビーチクは、引っ張られてついてく肉なんて持ち合わせなかったけど?

「ひうっ」

 何かわからんものに両乳首を左右に引っ張られて勢いよく離された。ブルンブルンと胸が揺れながら戻ってくる……襲ってくる凄い快感……でも、おかしいだろ!

 まさか……。

 夜目が慣れてきてかすかな光茸の明かりでその正体が見えてくる。

 目の前には俺の愛剣と沢山の矢が刺さった体から体液を流しまくってるワーム……。

 ワームの腹からはグロテスクな何かがそそり立っている。

 うん、俺それ知ってるよ! レベル3のは見たことあるぜ! 生殖器だよな! 魔物の!

 死にかけの魔物はレベルが高いとある行動をすることは有名だ。自分の卵を雌に植え付ける。

 ……

 ……

 うそだろ……

 俺、絶体絶命。
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