そこに愛はあるか

竹輪

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本編

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 俺の名前はスウ。女みたいな名前だが、残念、ムッキムキの二十三歳、男だ。

 背が低いせいか昔は女とまちがわれることも有ったが努力の成果でムッキムキのバッキバキで首の太い良い感じの漢おとこに仕上がってる。ふふん。

 魔獣という怪物を退治する仕事を請け負って生活している俺の相棒はエルフ族のロイ。ほんとは長ったらしい名前らしいがロイとしか呼ばねえから関係ねえ。

 ロイは女みたいな見てくれだが弓矢を打たせれば右に出るものはいない。エルフは長寿なのでロイは百五十歳は超えている。でも青年期が長いので見た目やら体力は俺と変わらない二十代と言ったところだ。

 俺たちが暮らしているこの世界は人族、エルフ族、獣人族の三種類だ。エルフは平均寿命二百歳くらいで身体能力に優れているがいかんせん数が少ない。深い森の奥に住んでいるエルフの女はそらあ、もうめちゃくちゃ綺麗で巨乳らしいが希少過ぎて村から出してもらえないらしい。かわいそうにロイもあぶれた男なのだろう。対する獣人族は平均寿命三十歳くらい。こちらの身体能力は……まあ、普通じゃねぇ。成人するのも早いが繁殖力半端ねえから人口の割合も一番多い。獣人族:人族:エルフ族=70:29.999:0.001くらいなもんだ。

 村であぶれたって、街中に出ればエルフはモテモテだ。何しろ、超美形の知識人。しかし、エルフがどうして増えないのかっていうと……

「触らないで頂けますか?」

 これだ。

 夕食を終えて軽く二人で酒を飲んでいたんだが、酒場だとそう言う目的の輩も多い。

 入れ食い状態でひっきりなしに女の子が寄ってくるというのにロイには性欲の「せ」の字もなくて。

 加えて潔癖症というか、人に触られるのが大嫌い。俺とは気が合って大丈夫なんだが男でも誰でも同郷のエルフくらいしか触れ合いはアウトらしい。今も猫の獣人娘が体を寄せて谷間アピールしてくれてるのにロイの眉間にはしわが増える一方だった。

「可愛いニャンコちゃん。俺の方が良い男だよ?」

 ロイと女の子の間に体を滑り込ませてさりげなくロイを遠ざける。ロイはこれ以上眉間のしわを増やさないでいいし、俺は楽しい時間が過ごせるウィンウィンな関係だ。

「俺、この娘と楽しんでくるから、先に部屋行ってなよ」

 可愛い三毛柄のニャンコちゃんは発情期らしくて臨戦態勢……。もちろん、美味しくいただきます。服の上から俺の胸板を確かめて合格だったのか甘い吐息を吐いている。

「……明日は峠に向かうのだから、ほどほどに」

 ほっとしながらロイが軽い忠告をしてくる。宿屋のキーをロイに渡すと「いつもありがとう」とロイが宿を取ったことか女の子を遠ざけたことかにお礼を言ってきた。うん、多分両方だろう。ロイが苦手なことは大抵俺がカバーできたし、俺が苦手なことはロイがカバーしてくれる。ほんとに俺たちは上手くできたパートナーだ。

「さ、いっしょに天国に行っちゃおか」

 とろんとした目で見上げてくるニャンコちゃんは俺を見てうっとりだ。猫の獣人の舌はザリザリしていて少し硬い。でも、それで舐め上げられたときの快感がたまんねえんだよな。細い腰を抱いてそれ専用の部屋を目指す。宿屋には獣人たちが盛る用に部屋が幾つか用意されている。部屋に入ると情熱的にベットに押し倒される。思ってたより彼女の性技は凄くって、結構激しいお楽しみになった。まあでも明日のことを考えると早めに切り上げないとな。四つん這いの彼女に激しく腰を振り続け、欲望をぶちまけると彼女も快感の唸り声を上げた。

「ねえ、すぐこの町出ちゃうの?」

「ああ。明日には峠に向かう」

「帰りにまた寄ってよ」

「機会があったらな」

 一時の快感の為だけに肌を重ねたに過ぎない。お互いわかっててセックスする。でも、名残惜しそうにする彼女を見ると俺は気に入られたらしい。「機会があったら」なんていうのはただの気休めだ。誰だって知っている。魔獣ハンターがどんなに危険な仕事であるか。その生きて帰る確率の低いことを。

 だから約束はしない。

 それは死を近づける呪いの言葉だ。

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