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何度だって諦めてあげない7
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「私だってさ……、本当に……」
「ええ。千沙さんはとても頑張ってました。全部悪いのは孝也さんです」
「しかも社内とか……」
「クズですね、クズ」
「うええええん……ううっ」
とうとう泣き出してしまった千沙さんの頭を撫でるとその向こうにいる店員と目が遭った。わかってる、もう閉店の時間なのは。僕はお会計を済まして千沙さんの肩を揺らした。
「千沙さん、とりあえず、ここはもう閉店の時間なので出ましょうか」
「ぐす……うえっ、ううう。う……」
「う?」
「ぎもぢわるい……」
「えっ!?」
青い顔で下を向く千沙さんを抱えて急いでトイレに向かった。肩なんて揺らして刺激しなきゃよかった。
「は、吐く……」
「頑張って、千沙さん、もう少しだから!」
「う、うえええええっ」
トイレのドアを開けようとしたその時、千沙さんの限界が来てしまったらしく、盛大に……
やらかしてしまった。
「すみません……すみません……」
「いえいえ、片づけておきますから、後は気になさらないでください」
「やっぱり、僕が片付けて……」
「大丈夫ですから、もう閉店ですし、お帰り下さい。またのお越しをお待ちしてます」
にこやかにやらかした僕たちを店員さんが店から送り出してくれた。半分追い出したかったのかもしれないけれど、ありがたい。次に行った時にはもう一度謝罪しないと。僕は店員さんに頭を下げて謝りながら千沙さんをおんぶして店を出た。
こんなこと知ったら、千沙さんは落ち込むだろうなぁ。
ちょっとそう思うと顔が緩んでしまう。こんなことになっても愛しいなんて笑ってしまう。
しかし、どうしよう。急いで平気なふりして出てきたけど、僕の靴もズボンのすそも、千沙さんの服も汚れてしまった。これではタクシーには乗れないだろう。しかも離婚した千沙さんが今住んでいる場所も知らない。
「こ、これは仕方がない。事故なんだから」
僕は千沙さんをおぶって自分のマンションに連れて行くことにした。幸いここから僕の家は近い。下心、出てくるな。事故だ事故なんだから。
部屋に着いて、千沙さんをソファーに下ろして、スーツを脱いだ。簡単に着替えてから、濡らしたタオルで千沙さんの顔をぬぐった。
ああ、服の前面もアウトだ。どうする……でも、このまま寝かせるわけにも。
「千沙さん、起きられますか? 服の着替えなんて、できますか?」
一応聞くと千沙さんが眉間に皺を寄せた。
「……脱ぐ」
「え!? ちょ、千沙さん、待って! せめて脱衣所で!」
「お風呂……」
「ちょ、待って、今、今お湯溜めますから!」
「お風呂入る……」
「千沙さん! まだ脱がないで!」
「お風呂はいりたい」
「ほんと、もうちょっとだけ待って!」
いきなり千沙さんが豪快に服を脱ぎだした。潔すぎる! 下着姿になった千沙さんをなだめてソファーに座らせて、慌ててお風呂にお湯を張った。慌てて戻って見ると下着姿の千沙さんがソファーに寄りかかって眠っていた。目に毒だから! バスタオルをかけてその魅力的な体を隠した。
「千沙さん、お風呂、入れますよ? 千沙さん?」
すると、今度は返事がない。
「千沙さん、風邪ひきますよ?」
何度も声をかけても起きそうになかったので、彼女を抱き上げてベッドの中に入れた。抱きあげた彼女は軽くて……でも女性らしい柔らかさがあった。
ちらりと見た下着……黒。
前から結構胸があるな、とは思っていたけど、タオルの下からこの谷間……。それに足も綺麗だ……。
こ、こんなご褒美があるなんて。
でも、これ以上見てはいけない。僕の精神がおかしくなってしまう。顔を背けながら千沙さんをベッドに下ろす。頬が胸に寄りかかって、手に太ももの感触が……。
「ハア、ハア、ハア……」
掛け布団でさらに魅惑の体を隠すと息を整える。彼女が脱いだ服をかき集めて洗濯機に入れた。心臓があり得ないくらいドキドキとしていた。落ち着け、落ち着くんだ。
でも、今僕の理想の女の人が、ずっと好きだった人が下着姿で僕のベッドに……。
ちらりと脱衣所から覗くと僕のベッドが膨らんでいる。あの下に……。
ダメだ、いったんクールダウンしよう。そうして僕はシャワーを浴びて気持ちを落ち着けた。シャワーを冷水にして何とか落ち着きを戻した僕が部屋に戻ると、自分の姿を見て慌てている千沙さんがいた。
「ええ。千沙さんはとても頑張ってました。全部悪いのは孝也さんです」
「しかも社内とか……」
「クズですね、クズ」
「うええええん……ううっ」
とうとう泣き出してしまった千沙さんの頭を撫でるとその向こうにいる店員と目が遭った。わかってる、もう閉店の時間なのは。僕はお会計を済まして千沙さんの肩を揺らした。
「千沙さん、とりあえず、ここはもう閉店の時間なので出ましょうか」
「ぐす……うえっ、ううう。う……」
「う?」
「ぎもぢわるい……」
「えっ!?」
青い顔で下を向く千沙さんを抱えて急いでトイレに向かった。肩なんて揺らして刺激しなきゃよかった。
「は、吐く……」
「頑張って、千沙さん、もう少しだから!」
「う、うえええええっ」
トイレのドアを開けようとしたその時、千沙さんの限界が来てしまったらしく、盛大に……
やらかしてしまった。
「すみません……すみません……」
「いえいえ、片づけておきますから、後は気になさらないでください」
「やっぱり、僕が片付けて……」
「大丈夫ですから、もう閉店ですし、お帰り下さい。またのお越しをお待ちしてます」
にこやかにやらかした僕たちを店員さんが店から送り出してくれた。半分追い出したかったのかもしれないけれど、ありがたい。次に行った時にはもう一度謝罪しないと。僕は店員さんに頭を下げて謝りながら千沙さんをおんぶして店を出た。
こんなこと知ったら、千沙さんは落ち込むだろうなぁ。
ちょっとそう思うと顔が緩んでしまう。こんなことになっても愛しいなんて笑ってしまう。
しかし、どうしよう。急いで平気なふりして出てきたけど、僕の靴もズボンのすそも、千沙さんの服も汚れてしまった。これではタクシーには乗れないだろう。しかも離婚した千沙さんが今住んでいる場所も知らない。
「こ、これは仕方がない。事故なんだから」
僕は千沙さんをおぶって自分のマンションに連れて行くことにした。幸いここから僕の家は近い。下心、出てくるな。事故だ事故なんだから。
部屋に着いて、千沙さんをソファーに下ろして、スーツを脱いだ。簡単に着替えてから、濡らしたタオルで千沙さんの顔をぬぐった。
ああ、服の前面もアウトだ。どうする……でも、このまま寝かせるわけにも。
「千沙さん、起きられますか? 服の着替えなんて、できますか?」
一応聞くと千沙さんが眉間に皺を寄せた。
「……脱ぐ」
「え!? ちょ、千沙さん、待って! せめて脱衣所で!」
「お風呂……」
「ちょ、待って、今、今お湯溜めますから!」
「お風呂入る……」
「千沙さん! まだ脱がないで!」
「お風呂はいりたい」
「ほんと、もうちょっとだけ待って!」
いきなり千沙さんが豪快に服を脱ぎだした。潔すぎる! 下着姿になった千沙さんをなだめてソファーに座らせて、慌ててお風呂にお湯を張った。慌てて戻って見ると下着姿の千沙さんがソファーに寄りかかって眠っていた。目に毒だから! バスタオルをかけてその魅力的な体を隠した。
「千沙さん、お風呂、入れますよ? 千沙さん?」
すると、今度は返事がない。
「千沙さん、風邪ひきますよ?」
何度も声をかけても起きそうになかったので、彼女を抱き上げてベッドの中に入れた。抱きあげた彼女は軽くて……でも女性らしい柔らかさがあった。
ちらりと見た下着……黒。
前から結構胸があるな、とは思っていたけど、タオルの下からこの谷間……。それに足も綺麗だ……。
こ、こんなご褒美があるなんて。
でも、これ以上見てはいけない。僕の精神がおかしくなってしまう。顔を背けながら千沙さんをベッドに下ろす。頬が胸に寄りかかって、手に太ももの感触が……。
「ハア、ハア、ハア……」
掛け布団でさらに魅惑の体を隠すと息を整える。彼女が脱いだ服をかき集めて洗濯機に入れた。心臓があり得ないくらいドキドキとしていた。落ち着け、落ち着くんだ。
でも、今僕の理想の女の人が、ずっと好きだった人が下着姿で僕のベッドに……。
ちらりと脱衣所から覗くと僕のベッドが膨らんでいる。あの下に……。
ダメだ、いったんクールダウンしよう。そうして僕はシャワーを浴びて気持ちを落ち着けた。シャワーを冷水にして何とか落ち着きを戻した僕が部屋に戻ると、自分の姿を見て慌てている千沙さんがいた。
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