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「ん……」

 ちゅっちゅっ、と軽いキスから始まる。何度も私の顔を窺いながら黒川が唇を重ねた。そのうち舌を絡め始めると彼がさらに興奮してきたのが分かった。

 ――今夜のことはなかったことにしてあげます

 黒川の言葉が 私の頭の中をぐるぐると回った。

 今夜だけ。

 今夜だけなかったことにしてくれる黒川に甘えさせてもらおう。私は力を抜いて彼の好きなようにさせた。黒川は私の服の裾をまくり上げ胸を優しく掴んだ。見せつけるように口に含んだ乳首をチュッチュと軽く吸い上げる黒川が悩ましい。こんなに色気のある顔もできるんだ。と少し感心しているとその刺激に体の奥が反応するのが分かった。

「はっ……くろかわ……」

「千沙さん、修平って呼んでください」

「しゅーへー」

「はは、可愛い」

 フワフワする頭でもなにも考えられない。お酒が残っているのか、息が上がって舌足らずになってしまう。そんな私を修平が笑って、体の線をなぞるよう優しく触れてきた。私は孝也しか経験がないからわからなかったけど、こんなに丁寧に愛撫するセックスもあるんだと知った。まるで、大事な宝物みたいだ。

「ああう……」

 おへそのくぼみまで舌を入れられて体が跳ねた。修平が触れるところがどこもかしこも気持ちがいい。上着を取り去られて見下ろされると、修平も乱暴に自分の着ていた服を脱いだ。

 わあ、いい体してるな……若いってすごい。

 そう思うと自分の体が急に恥ずかしくなった。胸を手で隠すと修平がその手を掴みながら首筋を舐めあげる。

「綺麗だから見せてください」

「は、恥ずかしいよ……んっ」

 カプリと耳を齧られて力が抜けると両手を胸からそっと外される。修平の視線が私の胸にいくのがとても恥ずかしい。胸はちょっと人より大きいと思う。普段は気にしてブラで押さえつけているし。

「着やせ……するんですね」

「んんっ」

 そう言って修平が私の胸に顔を埋める。喜んでくれるならそれでいいか。コリコリと乳首を指でいじられて腰が揺れてしまう。期待した私の奥から物欲しそうに愛液が垂れてくるのが分かった。なんとも浅ましい。

 今夜だけ修平に抱いてもらって、

 今夜だけ慰めてもらおう。

 そのうち修平の手がショートパンツまで伸びてきて、簡単にそれを取り去った。そこはもう恥ずかしいほど濡れていて、すぐに修平の指を迎え入れた。

「しゅーへー……いれて?」

「あ……でも、すみません。僕も挿入れたくて死にそうですけど、ゴム、持ってないです」

「……そうなんだ」

 そういえば、彼女がいるとか、確認しなかったな。でもゴムを置いていないってことは、そんな人は今いないのかもしれない。

「あのね、出来ないから。いいよ。そのまま。私びょーき持ってないから」

「それは、僕もですけど……いいんですか?」

「うん」

「すみません、我慢、できそうもありません……」

 ぐっと私の入り口に硬い昂ぶりが押し当てられた。私の使い物にならない子宮が、それでも本能なのかキュウキュウと迎え入れるために期待している。

「ああっ」

 今までの優しい愛撫からは想像できないような性急さで修平が一気に体に潜り込んでくる。太い杭に撃ち抜かれたような激しさを感じた。

「千沙さん……千沙さん……」

 修平が動き出して体が揺れる。ぬるい汗が落ちてきて、なんだか必死な修平が可愛かった。

 今だけ、甘えさせて。

 私を激しく求めてくれるって、勘違いさせて。

「しゅーへーっ……」

「千沙さんっ、でるっ」

「いいよ、だして……はうううっ」

 ガツガツと腰を打ち付けられて、最奥を突かれる。視界が揺れて快感の渦に体が巻き込まれていくようだった。セックスってこんなに幸せな気分になるんだ……。

「き、きもち、いいっ」

「ああっ、私もっ」

 ぐっと腰を押し付けられて、修平が私の中で爆ぜたのが分かった。言いようのない幸福感はなんなのか。

「もう一度、いいですか?」

「……うん」

 若いからかすぐに復活した修平が再び私の中に潜り込む。私の体を気に入ってくれたのか修平は体位を変えてそれから数度中に出した。へとへとになって、修平と抱き合う。

 修平が今夜私を抱いてくれてよかった。

 世界で一番くだらない私を抱いてくれてありがとう。

 ……離婚してからずっとまともに眠れなかった私はそのまま気を失うように眠った。
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