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執着<ルーファ視点>
執着1
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そろそろ結婚する時期かとサイラスが持ってきた釣書を見ていた。正直面倒事だか仕方がない。これ以上引き伸ばして様々な憶測を呼びたいわけではない。だいたい、女に希望もない。幼い頃から王妃を見てきたのだから。
「サイラスが良いと思ったの三人くらいに絞ってくれないかな? ちょっとこの量は吐きそうだよ」
「ルーファ様は理想の結婚相手ですからね、まあ、冷やかしも含めてですがこんなに申し込みがあろうとは」
「女の子ってメンドクサイよね……はあ。サイラスが女だったら良かったのに」
「……私は今心底、男で良かったと神に感謝します」
「失礼な奴だ。ん? もう選別できたの?」
サイラスはにっこりと笑って上から五枚の釣鐘を渡してきた。なんだ、もう選んでいたのか。仕事が早い。
「どれも国に有益なお姫様ですけど……」
「けど?」
「ご自分の妃なんですから、顔くらいは好みの娘にしてはどうですか?」
「ああ、そう言うこと」
パラパラとめくると最後五枚目の金髪の美少女に目が留まる。蜂蜜色と言うんだろうか。人形のような髪の色に青い目。こんな絵にかいたような娘がいるものだ。
「ああ、スリヤ姫ですね。姿かたちも凄いですが経歴も凄いですよ。王立学校を主席卒業。五ヶ国語を習得、幾つかの資格も持ってます。ピアノも嗜むそうですよ。」
「そりゃすごい。お姫さまって、のんびりした子が多いと思ってた。凄すぎて残ってたの?十六歳の卒業時期に縁談なんか決まってそうなのに。性格悪いのか」
「うーん。どうでしょうね。セローシェの国王が愛娘を溺愛しているというのは有名ですけど。ルーファ様が気に入ったのなら詳しく調べます」
「サイラスが納得いかないから五番目なのか。一番上は隣国のリネットだし。リネットは幼馴染で仲がいいんだから結婚する必要ないでしょ?」
「性格がよくて気心も知れていて、安心でしょう?それに、かわいらしいじゃないですか」
「馬鹿だね、サイラス。リネットがかわいらしいのはお前の前だけだよ」
「へ?」
鈍い我が秘書殿はリネットが恋する男子が誰かわかってらっしゃらない。まあ、いいけど。サイラス評価の二番目もすでに外交が安定しているヤモン国。他も似たり寄ったりだ。条件が良いセローシェ国が一番旨みがある結婚相手だがサイラスにしてみれば情報が少なくて不安なのだろう。私は結婚に夢なんて見てないし、自己犠牲してまで幸せな結婚を考えてくれたサイラスには悪いがどうせなら利が無ければやってられないだろう。
「サイラス、セローシェ国の姫でいいよ」
「すぐに詳しく調べます!」
数日後、サイラスが密偵をセローシェに送った。
***
この時代、いくら遠い国でも列車や船でたどり着けないところはない。見合いくらいはできるものなのだ。と、いうことでまあ、サイラスの勧めで(他二国の姫とも見合いしろとうるさい)スケジュールを組み三ヶ国、外交という名の見合いの席を設けてもらった。他二国を滞りなく退屈に見合いを済ませ、さて本命のセローシェに着く。国は小さいながらも豊かで潤っていた。姫も甘やかされて育ったというからどうかと思ったが、国王も兄も乗り気の縁談らしく、スリヤ姫は自慢のピアノを披露してくれた。
思っていたのと違った。
どうせちょっとした娯楽程度に習ったものを大げさに……と内心憂鬱になっていたのだが、なかなかの腕前だった。私も音楽に詳しいわけじゃないが、プロとはいかなくとも心つかまれる演奏だった。
小さいが上品な王宮の小ホールの薄暗闇に浮かぶスリヤ姫は清楚で美しい。あの細くて儚げな体からよくもこんなに表現豊かな旋律を生み出すものだと感心した。王族ということで発表会以外はコンクールなどは一切出なかったという。正直勿体ないほどの腕前だったが、公正な判断をしてほしかったからと言ったらしい彼女に私の好感度は上がる。
「スリヤは自慢の娘なのです。少し、私の溺愛のせいで婚期を遅らせてしまいました。お恥ずかしい話です」
なかなかの好感触とみてセローシェ王もアピールを欠かさない。この時私はスリヤ姫を妃にしようと決めた。例え性格が悪いとしても……度々この音を聞けるなら十分我慢できるだろうと思ったからだ。
「私にとっては幸運ですね。姫の素晴らしい演奏を聴けるんですから」
だから、どうとでもとれるような曖昧な返事をした。
その後、姫と会食をした。スリヤ姫は舞台から降りると急に色褪せて見える。舞台効果もあるのだろう。仕方ないが残念だ。さらに二人で会話……も弾まず……というか、正直いうと才女というには疑問の残る受け答えだったが、まあ、緊張していたのだと片づけた。結婚に夢を見ないとか何とか言って相手に多くを求めるのは申し訳ない。
「予定通り、セローシェで進めてくれ」
「な! ダメです! ルーファ様!報告書をお伝えしたはずです! あの姫、とんでもないじゃないですか!」
サイラスに会食後に告げる。サイラスの密偵が急いで調べた報告書にはスリヤ姫が現在主だって3人の男と付き合っているというものだった。
「流石に結婚が決まったら手を切るだろうし、こちらに嫁ぐのだから関係は切れるだろう」
サイラスはもうちょっと調べますと頑なだったが、国にとって有益なのがセローシェであるというのは間違いなかった。ここで男を囲っていようが役に立てばいい。
スリヤ姫が私を気に入ったというのもあって、セローシェ国のアプローチも激しくなった。最後の方はセローシェから「他国からも姫の縁談を迫られていて困っています」と脅迫めいたことも言われ、渋るサイラスをなだめて婚約を決めた。
「サイラスが良いと思ったの三人くらいに絞ってくれないかな? ちょっとこの量は吐きそうだよ」
「ルーファ様は理想の結婚相手ですからね、まあ、冷やかしも含めてですがこんなに申し込みがあろうとは」
「女の子ってメンドクサイよね……はあ。サイラスが女だったら良かったのに」
「……私は今心底、男で良かったと神に感謝します」
「失礼な奴だ。ん? もう選別できたの?」
サイラスはにっこりと笑って上から五枚の釣鐘を渡してきた。なんだ、もう選んでいたのか。仕事が早い。
「どれも国に有益なお姫様ですけど……」
「けど?」
「ご自分の妃なんですから、顔くらいは好みの娘にしてはどうですか?」
「ああ、そう言うこと」
パラパラとめくると最後五枚目の金髪の美少女に目が留まる。蜂蜜色と言うんだろうか。人形のような髪の色に青い目。こんな絵にかいたような娘がいるものだ。
「ああ、スリヤ姫ですね。姿かたちも凄いですが経歴も凄いですよ。王立学校を主席卒業。五ヶ国語を習得、幾つかの資格も持ってます。ピアノも嗜むそうですよ。」
「そりゃすごい。お姫さまって、のんびりした子が多いと思ってた。凄すぎて残ってたの?十六歳の卒業時期に縁談なんか決まってそうなのに。性格悪いのか」
「うーん。どうでしょうね。セローシェの国王が愛娘を溺愛しているというのは有名ですけど。ルーファ様が気に入ったのなら詳しく調べます」
「サイラスが納得いかないから五番目なのか。一番上は隣国のリネットだし。リネットは幼馴染で仲がいいんだから結婚する必要ないでしょ?」
「性格がよくて気心も知れていて、安心でしょう?それに、かわいらしいじゃないですか」
「馬鹿だね、サイラス。リネットがかわいらしいのはお前の前だけだよ」
「へ?」
鈍い我が秘書殿はリネットが恋する男子が誰かわかってらっしゃらない。まあ、いいけど。サイラス評価の二番目もすでに外交が安定しているヤモン国。他も似たり寄ったりだ。条件が良いセローシェ国が一番旨みがある結婚相手だがサイラスにしてみれば情報が少なくて不安なのだろう。私は結婚に夢なんて見てないし、自己犠牲してまで幸せな結婚を考えてくれたサイラスには悪いがどうせなら利が無ければやってられないだろう。
「サイラス、セローシェ国の姫でいいよ」
「すぐに詳しく調べます!」
数日後、サイラスが密偵をセローシェに送った。
***
この時代、いくら遠い国でも列車や船でたどり着けないところはない。見合いくらいはできるものなのだ。と、いうことでまあ、サイラスの勧めで(他二国の姫とも見合いしろとうるさい)スケジュールを組み三ヶ国、外交という名の見合いの席を設けてもらった。他二国を滞りなく退屈に見合いを済ませ、さて本命のセローシェに着く。国は小さいながらも豊かで潤っていた。姫も甘やかされて育ったというからどうかと思ったが、国王も兄も乗り気の縁談らしく、スリヤ姫は自慢のピアノを披露してくれた。
思っていたのと違った。
どうせちょっとした娯楽程度に習ったものを大げさに……と内心憂鬱になっていたのだが、なかなかの腕前だった。私も音楽に詳しいわけじゃないが、プロとはいかなくとも心つかまれる演奏だった。
小さいが上品な王宮の小ホールの薄暗闇に浮かぶスリヤ姫は清楚で美しい。あの細くて儚げな体からよくもこんなに表現豊かな旋律を生み出すものだと感心した。王族ということで発表会以外はコンクールなどは一切出なかったという。正直勿体ないほどの腕前だったが、公正な判断をしてほしかったからと言ったらしい彼女に私の好感度は上がる。
「スリヤは自慢の娘なのです。少し、私の溺愛のせいで婚期を遅らせてしまいました。お恥ずかしい話です」
なかなかの好感触とみてセローシェ王もアピールを欠かさない。この時私はスリヤ姫を妃にしようと決めた。例え性格が悪いとしても……度々この音を聞けるなら十分我慢できるだろうと思ったからだ。
「私にとっては幸運ですね。姫の素晴らしい演奏を聴けるんですから」
だから、どうとでもとれるような曖昧な返事をした。
その後、姫と会食をした。スリヤ姫は舞台から降りると急に色褪せて見える。舞台効果もあるのだろう。仕方ないが残念だ。さらに二人で会話……も弾まず……というか、正直いうと才女というには疑問の残る受け答えだったが、まあ、緊張していたのだと片づけた。結婚に夢を見ないとか何とか言って相手に多くを求めるのは申し訳ない。
「予定通り、セローシェで進めてくれ」
「な! ダメです! ルーファ様!報告書をお伝えしたはずです! あの姫、とんでもないじゃないですか!」
サイラスに会食後に告げる。サイラスの密偵が急いで調べた報告書にはスリヤ姫が現在主だって3人の男と付き合っているというものだった。
「流石に結婚が決まったら手を切るだろうし、こちらに嫁ぐのだから関係は切れるだろう」
サイラスはもうちょっと調べますと頑なだったが、国にとって有益なのがセローシェであるというのは間違いなかった。ここで男を囲っていようが役に立てばいい。
スリヤ姫が私を気に入ったというのもあって、セローシェ国のアプローチも激しくなった。最後の方はセローシェから「他国からも姫の縁談を迫られていて困っています」と脅迫めいたことも言われ、渋るサイラスをなだめて婚約を決めた。
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