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私のフローに手をだすな6
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「ねえ、君の髪のリボンは僕があげたものじゃないよね」
今、どうしてそんなことが気になったのだ。と驚く。私は少年の変装をするために髪を帽子の中に押し込んでいた。が、フロー様に会うために壁を駆けあがる前に邪魔だった帽子を取っていたのだ。しかしフロー様はいたって真剣に聞いてきた。
「そうですけど、それがなにか?」
「君には僕があげたものを身に着けて欲しいんだ」
いや、何も考えずに今朝適当なもので髪を縛っただけだ。しかしフロー様はするすると私のリボンを取り去ってしまった。まあ、その下はきっちりと結ってあるから髪型が崩れることはないけれど。
「『マダム・キャット』の主要メンバーを五人を教えて欲しいけど、簡単には話さないだろうね。ちょうどいいからこれで縛るよ」
フロー様は私から取ったリボンに詠唱し始めた。するとリボンは生き物のように男の手に絡みつき、両手を縛り上げた。
「お、お前は、フローサノベルドっ! 俺の魔道具で拘束されているはずじゃ……」
そこで完全に幻影が解けて、男はフロー様の正体を知ったようだ。
「あんなもの、僕の魔力量を知らないから着けられたんだよね。この闘技場一帯を壊滅状態にすれば簡単に外せるよ」
「え?」
「僕のこと、嬲って楽しかったい?」
うっすら笑うフロー様に闇魔術師がガタガタ震え出した。それより気になるのは……
「嬲って? フロー様、この男になにかしたんですか?」
思わず力が入って首元を少しさっくりしてしまった。
ブシュッ、と飛び散った血がかからないように首を横に避けた。
「ぎゃああああっ」
「ジャニス、もう拘束したから下がっていいよ。僕が教えてもらうから」
「はい」
フロー様に言われて男を睨みながら下がった。今度はフロー様が男の前に立った。
「これ、なにか知っているか?」
そしてフロー様は男に宝石を一粒見せた。あ、アレは私が失くしてしまった記憶玉……フロー様が持っていたのだ……。これはやっぱり私がニッキーになっていることが知ったと全て知られている。
「それがどうしたっていうんだ」
「これはその時あった時のことを録画できる機能がある。でもね、高位魔術師しかできないこともある。それはね……」
フロー様は記憶玉を闇魔術師の額にくっつけるとなにかブツブツと唱えた。すると、記憶玉が光って、男の頭の上になにかの映像が流れだした。
「は……、え?」
「さあ、主要メンバー五人を教えろ」
その声で映像が揺らぐ、そして覆面や面をつけた人物が次々と映った。どうやら闇魔術師が考えたことが頭の上の映像に流れるようだ。もう、高度過ぎてなにも言えない。
「はあ、顔さえ明かされてもらっていなかったのか」
フロー様が呆れた声を出すと、闇魔術師がびくりと肩を揺らした。
「あいつらは、絶対に姿を現さない。それらしき人物と話しはしたが、それが本物かすらわからないんだ」
「なにか、他に手がかりは?」
私が聞くと青い顔で首を振る。
「しかし、自分の保身のために多少は調べただろう?」
フロー様の質問に男がハッとする。頭の上の画像には喫煙具で煙を吸う女が映った。黒猫の面を顔半分にかぶり、堂々とした態度で椅子に座って、闇魔術師に金を渡していた。
「それが『マダム・キャット』なの?」
自分の考えていることを映し出されて、観念したのかその問いには『多分……』と答えた。
「では、もう用済みだな」
「え?」
フロー様が淡々とそう言った。
「お前がした一番残酷な仕打ちを自分の魔力で再現すればいい」
紙にさらさらと魔法陣を描いたフロー様が記憶玉の代わりに魔術師の額に押し付けた。すると、フロー様が拘束時に施されていたように魔法陣だけが額に残って光っている。
「そんな、馬鹿な……」
「闇魔術師に登録もせず、今まで好き勝手汚いことに手を染めたのだろう? 思い浮かべればいい」
「い、いや、嫌だ……あれは、だって……」
闇魔術師が何かを思い出し、そしてそれを考えないようにしているのか首を振った。男の体はみるみると水分が抜けて、しわしわになっていく。
バタ……。
最後にはミイラのようになった闇魔術師が床に転がった。誰かを餓死させたのか……それを見ても私は何も思わなかった。
今、どうしてそんなことが気になったのだ。と驚く。私は少年の変装をするために髪を帽子の中に押し込んでいた。が、フロー様に会うために壁を駆けあがる前に邪魔だった帽子を取っていたのだ。しかしフロー様はいたって真剣に聞いてきた。
「そうですけど、それがなにか?」
「君には僕があげたものを身に着けて欲しいんだ」
いや、何も考えずに今朝適当なもので髪を縛っただけだ。しかしフロー様はするすると私のリボンを取り去ってしまった。まあ、その下はきっちりと結ってあるから髪型が崩れることはないけれど。
「『マダム・キャット』の主要メンバーを五人を教えて欲しいけど、簡単には話さないだろうね。ちょうどいいからこれで縛るよ」
フロー様は私から取ったリボンに詠唱し始めた。するとリボンは生き物のように男の手に絡みつき、両手を縛り上げた。
「お、お前は、フローサノベルドっ! 俺の魔道具で拘束されているはずじゃ……」
そこで完全に幻影が解けて、男はフロー様の正体を知ったようだ。
「あんなもの、僕の魔力量を知らないから着けられたんだよね。この闘技場一帯を壊滅状態にすれば簡単に外せるよ」
「え?」
「僕のこと、嬲って楽しかったい?」
うっすら笑うフロー様に闇魔術師がガタガタ震え出した。それより気になるのは……
「嬲って? フロー様、この男になにかしたんですか?」
思わず力が入って首元を少しさっくりしてしまった。
ブシュッ、と飛び散った血がかからないように首を横に避けた。
「ぎゃああああっ」
「ジャニス、もう拘束したから下がっていいよ。僕が教えてもらうから」
「はい」
フロー様に言われて男を睨みながら下がった。今度はフロー様が男の前に立った。
「これ、なにか知っているか?」
そしてフロー様は男に宝石を一粒見せた。あ、アレは私が失くしてしまった記憶玉……フロー様が持っていたのだ……。これはやっぱり私がニッキーになっていることが知ったと全て知られている。
「それがどうしたっていうんだ」
「これはその時あった時のことを録画できる機能がある。でもね、高位魔術師しかできないこともある。それはね……」
フロー様は記憶玉を闇魔術師の額にくっつけるとなにかブツブツと唱えた。すると、記憶玉が光って、男の頭の上になにかの映像が流れだした。
「は……、え?」
「さあ、主要メンバー五人を教えろ」
その声で映像が揺らぐ、そして覆面や面をつけた人物が次々と映った。どうやら闇魔術師が考えたことが頭の上の映像に流れるようだ。もう、高度過ぎてなにも言えない。
「はあ、顔さえ明かされてもらっていなかったのか」
フロー様が呆れた声を出すと、闇魔術師がびくりと肩を揺らした。
「あいつらは、絶対に姿を現さない。それらしき人物と話しはしたが、それが本物かすらわからないんだ」
「なにか、他に手がかりは?」
私が聞くと青い顔で首を振る。
「しかし、自分の保身のために多少は調べただろう?」
フロー様の質問に男がハッとする。頭の上の画像には喫煙具で煙を吸う女が映った。黒猫の面を顔半分にかぶり、堂々とした態度で椅子に座って、闇魔術師に金を渡していた。
「それが『マダム・キャット』なの?」
自分の考えていることを映し出されて、観念したのかその問いには『多分……』と答えた。
「では、もう用済みだな」
「え?」
フロー様が淡々とそう言った。
「お前がした一番残酷な仕打ちを自分の魔力で再現すればいい」
紙にさらさらと魔法陣を描いたフロー様が記憶玉の代わりに魔術師の額に押し付けた。すると、フロー様が拘束時に施されていたように魔法陣だけが額に残って光っている。
「そんな、馬鹿な……」
「闇魔術師に登録もせず、今まで好き勝手汚いことに手を染めたのだろう? 思い浮かべればいい」
「い、いや、嫌だ……あれは、だって……」
闇魔術師が何かを思い出し、そしてそれを考えないようにしているのか首を振った。男の体はみるみると水分が抜けて、しわしわになっていく。
バタ……。
最後にはミイラのようになった闇魔術師が床に転がった。誰かを餓死させたのか……それを見ても私は何も思わなかった。
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