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パオラの夫となる者は

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 結局、頭の足りない私が考えたってどうしようもないことで。私はリアムたちに素直に相談することにした。

「特別な用紙はゼス神に貰うしかねぇな。魂の契約ができるなら俺が契約するわ。」

「ちょ、ライリー!僕はもう伴侶の石も呑んでもらってるんだから僕がする!」

「番がいない世界など生きている価値もないに等しい。我が契約しよう。」

 私が話し終えるとすぐにライリー、エイデン、イーサンがそう言った。でもそんなことしたら。

「もしも魂の契約が出来ないと知ってアーロンが逆上して私を殺したら死んじゃうんだよ?」

 アーロンは私の魂が巡るのを待てば良いだけだ。それで私に嫌われたとしても来世私は殺されたことさえ覚えていないだろう。私の魂に執着するならそうやって手に入れることも出来る。

「「「分かってる。」」」

 淀みなく3人が答える後ろでリアムがじっと考え事をしていたと思うとおもむろに手を上げた。

「俺たち人間が一人でパオラと契約したところで弱い。契約をさせてからパオラだけ連れ去って死なないようにどこかに閉じ込める……とかも予想できる。アーロン神にパオラとの魂の契約を諦めさせるのだからそれなりの覚悟がいるだろう。皆で契約しよう。人数が増えればアーロン神のリスクが上がる。それでいいか?」

 リアムの言葉にライリーとエイデンはもちろんだと頷いた。

「――イーサンは俺たちと共同体になってしまうがどうする?」

「構わん。お前たちは信頼と尊敬に当たる。持ちろんパオラも愛している。わが命を賭けよう。」

「え、え、ちょっと?」

「パオラ、俺たち四人と魂の契約をしよう。」

 にっこりと笑うリアム。

「そんなに簡単に決めていいの?誰か死んだら皆死ぬんだよ?」

 なんてことないように4人が私を見ている。リアムが私の前に膝まづくと続いて後の3人も膝まづいた。

「パオラ。愛している。貴方と魂の契約がしたい。俺たちと結婚してください。」

「なっ。」

 真剣な顔をしたリアムが私に手を差し出す。

「アーロンと上手く交渉できるか分からないんだよ?サクッと殺されるかもしれない。このパオラの体だって取り上げられちゃうかもしれないよ?」

「パオラの魂と共に。」

「ほら、リアムの手を取れ。どんな姿になってもお前はお前だ。キモイウサギだって……まあ、アレはアレで見慣れたしな。」

「パオラだって覚悟してアーロンと交渉するんでしょ?僕をホントの夫にして。」

「我が番と――信頼できる仲間だ。」

「ちょ、皆!?アーロンが魂の契約をするとも決まってないのに……。」

「まずはゼス神に用紙貰おうか。」

「そうだよ!それが出来なきゃそもそも無理だもん!」

 リアムが伸ばした手を引っ込める。立ち上がると私の頭をポンと撫ぜた。なんとかこの場は回避した!

 いきなりプロポーズされるんだもん!驚いた!ちょっと!心臓バクバクして飛び出しそうなんだけれども!!

 そう、思ったんだけど……。

 ――

 ――

「何をいまさら。わしはお前たちがパオラの夫になると思ってたぞ?魂の契約がしたければわしが直接魂に書いてやろう。ほれ、そこに並べ。パオラをしっかりと守れよ。ひとりとてパオラより前に死ぬことは許さん。」



 来れないと思ってたパパが祠にわりとすぐに来てくれて。

 リアム、ライリー、エイデン、イーサンと私に端からちょっと星が飛びそうなデコピンを指で弾いていった。

「え、まさか、コレで魂の契約済んじゃったの!?」

 驚く私にパパが呆れきっれた顔で『パオラ、わし、最高神よ!?』と頬を膨らませてサクッと魂の契約が済まされてしまったのだった。
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