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パオラの夫となる者は

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「なにを、キョロキョロしてるの?アーロン。」

 魔法陣が二人を包んでいる状態が続く。キラキラと二人を中心に回っているが抱き合った私とアーロンがそれ以上密着することは無かった。魔法の発動に不満があるのかアーロンの目が彷徨う。

「あ、いえ。」

「もしかして魂の契約が上手くいかないのが原因?」

 私が平然と問うとアーロンがハッとした顔で私を見た。

「……。なにか、したのですか?」

「なにか、したのはアーロンだよね?」

「……。」

「昔、人間に恋をしたエオスって神様がいたらしいね。彼女を手に入れるためにエオス神は魂の契約を使って彼女を異空間に閉じ込めた。その神様と彼女しか入れない小さな場所。そこでは彼女は年も取らない。」

 じっとアーロンは私を見ている。その瞳には戸惑いの色が見えた。

「アーロンはお人形さんの私が欲しかったの?それならパオラの抜け殻をアーロンにあげる。人間に戻れないのは悲しいけど、きっとパパはそれ以上の犠牲を払って世界を保っているもの。」

「!そんなことは!私は、パオラの魂を愛しているのです!抜け殻なんて!!」

「私の魂は自由よ、アーロン。こんな騙し討ちみたいな事は許せない。」

「パオラ……?」

「アーロンがだめなら他の男神と試さないといけないのかなぁ。その時はパパが相手を見繕ってくれるって言ってくれていたけど。私はアーロンが良かったなぁ。」

「え?それ、それって?」

「私はそれくらいの覚悟をしているの。アーロンだって、お兄ちゃんと思えば倫理的にちょっと……。」

「い、嫌です!貴方が他の男神と冥界の王を作るなんて!それに、倫理的って、そんな、人間の考え方でしょう!?血も繋がっていないのに!」

「アーロン。貴方が望むなら結婚してもいいよ?ただし、私の条件を飲むならね。」

「条件?」

「結婚も契約でしょう?私の意見も聞いてもらわないと。そのいち、アーロンとは魂の契約はしない。」

「そんな!私は貴方と共にありたい!」

「最後まで聞いてアーロン。そのに、私の意思を尊重する。そのさん、閉じ込めたりは無し。そのよん……。」

 私が言いよどむとアーロンは焦った顔をした。

「パオラ、そのよんとは何ですか?」

「えーと……。そのよん、他の夫に決して手を出さない事。出来れば仲良くして欲しい。」

「は?他の夫?パオラ、貴方!?まさか、それで私と魂の契約が出来なかったのですね!」

「アーロンと魂の契約をしない為に必要だったから。私は自由で居たいし人族だもの。私がうっかり死んでアーロンが消滅なんてことはしちゃいけない。それにアーロンは私が死んで生まれ変わっても魂を見つけられるでしょ?アーロンにはそうやって見守って欲しい。夫となった彼らは私を守ってくれて、助けてくれる。決して独り占めして私を閉じこめようなんてしない。キモうさの体のままでも愛してくれるって。そして、今命を共有している。」

「彼ら……あの4人と魂の契約をしたのですね。」

 アーロンを真っ直ぐ見て頷く。リアムもエイデンもライリーもイーサンも。自ら進んで契約してくれた。

「世界が終われば私も彼らも終わりだもの。本当はアーロンが一番わかっている事でしょう?パパの神経が相当すり減ってること。天界の綻びを修正するのが大変なこと。」

「……あの者たちはパオラに命を賭けたのですね。ここで、逆上した私に貴方が殺される可能性だってあるのに。」

「そう。私の事、信じてくれてるの。」

「……。」

「アーロンは私の事を信じてくれるの?」

「……はあ。私だって貴方への愛は負けません。いえ、負けてられません。分かりました。パオラ。但し、神は私だけにしてください。天界の夫は未来永劫私一人と誓ってください。愛しています。結婚して下さい。」

「いいよ。」

 軽ーく返事をした私にアーロンがぎゅっと抱き着いてきたので背中に手を回して背中をポンポンと叩いた。

「では、結婚の証に書き換えます。改めて契約を。」

 アーロンがそう言うと天界の証書の文字が空中にキラキラと舞い上がった。どうやら内容の書き換えをしているらしい。

「アーロン、約束破ったら即離婚するってつけ足しといてね。」

 私がそう、突っ込むと苦い顔をしたアーロンが目を瞑って観念して頷いた。
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