上 下
163 / 212
全能の神は反省する

17

しおりを挟む
 
「さてと。エイデン!モーラのところまでって転移できる?」

「占者の洞窟?今満タンだから往復するくらいならできるよ?キモうさ、モーラ神に会いに行くの?」

「うん。逢いに行く約束もしていたしね。」

 モーラ、少しは太ったかな?自分に自信を持ててたらいいんだけど。

「パオラ、気を付けてな。これを持っていくがいい。」

 イーサンが鱗を一枚手に握らせてくれた。うん、コレが有ったらジェカの態度が違うから助かる!

「どっちの格好で行く?」

「そうだねぇ。最近パオラでいるのも慣れちゃった。あそこではパオラの方が良いだろうからこのまま行くよ。」

「パオラを抱っこするのって変な気分。」

「百合の絡みみてぇでけっこう下半身にぐっとくるぞ?」

「黙れ、ライリー。もっさいオッサンに突っ込まれる呪いかけるぞ?」

「ひぃっ。」

 脅すように言うとライリーが両頬に手をやっておどけた。よっぽどさっきのが悔しかったらしく慌てて妖精の粉で作った薬を飲んだらしい。「くそまじぃ。」とぼやいていたけどライリーの目が見えているのが確認出来て嬉しい。


 きゅっとエイデンに抱きしめられながら転移の気持ち悪さに耐えた。



 ΘΘΘ


 モーラに会わせてくれと洞窟を訪ねると待ってましたとジェカがいた。どうやら鱗が欲しかったようだ。私が来るのも姫様が知らせてくれていたみたいだし。今回はスムーズに神殿に連れていかれるとすぐにモーラに会えた。



「わあ!モーラ、可愛い!!」

 久しぶりに会ったモーラは私の前に姿を現すとすぐに仮面を取った。ギスギスと痩せていた体は少しふっくらとしていて背も15センチくらいに伸びていた。一気に成長した感じだ。少し大人っぽくなったモーラ。気にしていた丸い鼻も顔がふっくらとしてきたことでキュートに収まっている。

「へへ。ありがと。」

 私が想ったことを口に出して賞賛するとモーラは照れながらも嬉しそうだった。さて、どうやって話を切り出そうと考えていたら、モーラがふと暗い顔をして喋り出した。

「あのね、パオラ……私、最近どうしてか分からないけど、ヴィーテ神の先読みが上手くいかないの。それで、ヴィーテ神が不機嫌になって……悲しいの。」

「ヴィーテママが不機嫌に?」

「う……ん。天界の新しい王が生まれないって。相手を探してって言われるんだけどヴィーテ神の運命がボンヤリして見えなくて……。元々男を見るのは嫌なのに、男神を見るようにってせかされると焦っちゃうの。」

 多分、ヴィーテ神の運命の先読みが上手くいかないのはアーロンのせいだと思う。アーロンはパパが見つからないようにモーラの邪魔をしているから。しかしヴィーテ神ってモーラの先読みに頼りっきりなんだな。

「そうなんだ。でもモーラだって不調の時くらいあるよ。ママが不機嫌になるほうがおかしい。気にすることないよ。そのうち能力もちゃんと戻るよ。」

「ありがと!パオラ。」

「今日、元気そうなモーラに会えて嬉しい!実はねーー最近、私、アーロンとラブラブなんだ。だから、冥界の王を作っちゃおうかとアーロンと話しているの。」

「え。パオラ、アーロン神と恋人になったの?」

 パチパチとモーラが目を瞬いた。

「うん。」

「……モーラは男が嫌いだから関心ないけど、天界の女神たちは皆アーロンに焦がれてる。特にゼス神がいなくなってからは実質アーロンが天界で一番力が有るもの。確かにパオラの星が炎の星と交わるとシファンの花から大きな黒い闇が生まれると見えたけど、ほんとにアーロン神に愛されるなんて、パオラ、凄いね。!!もしかしてパオラとアーロン神との子供は今度は天界の王かもしれないよ?パオラ、運命を見てあげる!」

「え!?」

 がしっとモーラに肩を掴まれて瞳を覗かれてしまう。や、ヤバい!余計な物見られたらどうしよう!

「あ……。うーん。パオラの星と炎の星の運命は変わらないみたい。けど、前と違って強烈な光を受けてその闇が生まれるみたい。それに炎の星がパオラの星にべったりになってる……。」

「へ、へ~~。」

 冷や汗をかきながらモーラの話を聞いて何とか瞳を反らしてみる。あんまり拒否しても不審がられちゃうだろうしなーー。

「炎の星がアーロン神なら相当パオラのことが好きみたいだよ?」

「アーロンは冥界の王が生まれなくても私との子供が欲しいって言うくらいだからね!」

「そうなの!?やっぱりパオラって凄い。ヴィーテ神すら振られてるのに。でも祝福がないと子供は生まれないよ?どうするの?」

「そこは、ヴィーテママがどうにかしてくれるって。前にそうするなら協力してくれるってヴィーテママが言ってたから。」

「ふうん。でも、今はヴィーテ神はとっても不機嫌だから無理かも。それこそ今一番にアーロン神にアタックしてるのに断られているし。」

「あ、アタックしてるんだ……。ゼス神の息子に平気でアタックするって……ゼス神を天界から消滅させたこととか罪悪感はないのかな。」

「神は個人主義だもの。まして力のある全能の神が消滅するにはそれを望んでたってことだよ。寧ろヴィーテ神はアーロン神を天界の一番にしてあげたとしか思ってないよ。」

 なるほど。例えヴィーテ神がパパの心臓を取り上げたとしてもパパの諦め心がパパを地上に落としたってことなのか。

「あ!」

「どうしたの?パオラ。」

「あのね、モーラ。アーロンの知り合いでね。とっても美しい男の竜人がいるの。ヴィーテママはもう天界の男神とは大抵相性を試したんでしょう?」

「うん。でも、だれとも天界の王は宿ってない。それで、モーラが怒られてる。」

 しゅんとするモーラ。ヴィーテ神はモーラに八つ当たりしているんだろうなぁ。思ってたよりヴィーテ神のお試しが早いのは一度に複数とも試しているらしい(パパ情報)。仮にも親のそういう情報ほど恥ずかしいものはないわ。

「もしかしてその竜人はどうかな?私とアーロンで神が生まれるなら、神様に近しいその男の人とも可能性があるんじゃないかな?アーロンの知り合いだから変な人じゃないし、何よりも中性的な美人だからモーラも近づけられるかも。ちょうど竜の里の祠にいるから試しに見て見たら?」

「中性的でも男は嫌い。だけどたしかに神に一番近い竜人は特別かも。これ以上ヴィーテ神をがっかりされたくないし、パオラが言うなら少しだけ空間を繋げるからパオラが言うその竜人を見てみようかな。」

 モーラはそう言って仮面をつけ直した。ごめんね、モーラ。でも嘘はついてないから。

 ちょーっとその竜人が元全能の神であることを黙ってただけだからね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...