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全能の神は反省する

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「わしはこの世に怖いものなんか何もないと思っていた……。我が娘が一番怖い……。」

 流石に元神様と言ったところだろうか。無事14つをパパはその体に取り込んだ(それでも許容量半分くらいだったけどね。全能の神すげぇ。)。最後の方は鼻をつまんで無心に飲み込んで目頭に涙をためていた。大げさな。無味なのに。


「さて、まずはヴィーテから心臓を取り返すか。鏡、まったく、お前までわしよりパオラに懐きよって。帰ってこい。」

 パパがそう言うと手鏡がすっぽりとパパの手に現れた。本来の持ち主の元に戻ってよかったよかった。正直、アレ使うと体がしんどいからもう使いたくない。

 暫く鏡をじっと見ていたパパが、ふう、と息をついて私を見た。

「ふむ。パオラ。お前にもう一肌脱いでもらわねばならんようだな。」

 何か考えたパパは悪ーい顔をして私にそう、言った。



 ΘΘΘ



「パパは天界に戻ってくれるそうです。ライリーとエイデンの事は順調?」


 広間に降りて皆にそう宣言するとその視線が一心に私に集まった。

「ライリーは妖精の粉で作った薬で1時間は目が見えるようになったよ。ただ、キツイ薬だから持続は無理なのと一日2回までが限度。エイデンは体に器は残ってるらしいから魔力のある草と俺が魔力を分けたらラウカーバンの作った特殊な装置で特級魔法なら1回、細々としたのなら何回か使えるようになった。」


「わ、良かったね!--それと。あのね。私はアーロンと冥界の王を作ろうと思う。このままだとパパが天界に戻って頑張ってもきっと揉め事が起こると思う。パパとヴィーテ神でも冥界の王は出来るんだろうけど、それだとパパは一生レナ神に許してもらえないだろうしね。」

 そう、宣言したら皆黙っていた。

「パオラならそう言うと思ってた。」

 ポツリ、とリアムが言って、みんなの視線が集まった。その顔は心配そうな、苦しそうな顔だった。

「自分を犠牲にするつもりはないし、アーロンも好きだから大丈夫。私、みんなの事大好きだから、この世界が保てるようにちょっとだけパパをお手伝いしようと思う。ライリー、パオラの処女はあげれないかも。ゴメン。」

「ちょっとだけっていう手伝いじゃないだろ!?でも…………うさ公が決めたならそれでいい。そもそも俺たちを繋ごうと思って言ったことだとわかってる。--それに処女じゃなくても嫁にするから覚悟しろ。」

「え。ライリー……いいの?」

「あんまり聞くな。いろいろと悔しくて死にそうだが相手は太陽神だ。耐える。格好ぐらいつけさせろや。」

「ありがと。」

 眉間にしわを寄せるライリーに近づいて指でそのしわをきゅっと伸ばす。少しだけその表情が緩んだところでライリーの唇にチュッと吸い付いた。ピクリと動揺してからとっさに伸びてきたライリーの手を体を後ろに引いて避けるとスカっとライリーの手が宙を舞った。

「う、うさ公!くそう!目が見えてたら舌つっこめたのに!」

 悔しがるライリーににやりと笑う。日頃のライリー先生の鍛錬の賜物か、気配に少し敏感になったようだ。ふふふ。

「ライリー、キモうさには気を付けないと魂抜かれるよ?そういう事軽い気持ちでやっちゃうんだから!」

 やれやれとエイデンが肩をすぼめた。軽い気持ちってわけじゃないのに酷い言われよう。

「うさちゃん……。有難う。」

 リアムは私にお礼を言ったけど握った拳がブルブルと震えていた。大丈夫だよ、リアム。寧ろアーロンが喜んで事に及んで世界が救われるなら私の処女(からだ)なんて安いものだもん。

 皆の顔を見渡す。灰色だった私の世界に色がついたのは皆のおかげだと思う。どうせ娼館にでも行くしかないって思ってたし、汚いジジイと我慢してしなくちゃならないならアーロンなんて願ってもない相手だと思う。

「さてと。パパがどう上手くやるかだよね。」

 ヴィーテは新しい天界の王が生まれないことにイライラと焦り出したみたいだ。モーラの先読みの力もアーロンが妨害しているらしいのでまだパパが消滅していないことはバレていない。そこへアーロンと私の親密度が上がってラブラブになったと聞けば、どうするだろう?

 そりゃあ、きっと。

 ヴィーテ神は会いに来るよね?
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