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奥様はお仕置き中

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「アメデオ、お前、ユノ王子守れなかったら、許さないからな……。」

 キョトンとするユノ王子に精一杯のやせ我慢の笑顔を送る。不死身って言っても痛みに慣れることないんだからいやんなっちゃう。アメデオにレダを渡すのは不本意だけど、刃物が背中から貫通しているので仕方がないし。状況を瞬時に理解したらしいアメデオが何かをつぶやいて目の前から消える。

「ヒャハ!すっげぇ!ド根性だな。」

 後ろの奴がずぶずぶと深くナイフを刺す。ライリーとの訓練を思い出しながら自分のできることを考える。でも、結局これしかないんだよな。

 刺されたナイフを無視して振り返って腕を掴んだ。そんなことされると思ってもみなかったのか驚いて息を飲む音が聞こえた。

 がぶぅ!!

 出来ることこれしかない。とにかく、離すもんか!!レダがアメデオと逃げる時間稼ぎが出来たらいい筈だ。

「あんた、痛み感じないの?」

 噛まれている男が不思議そうに聞く。口を離すわけにもいかず、がむしゃらに噛み続ける。腕からは血も滴っているというのに私の方が痛みを感じていないのか問いたいくらいだった。

「反応してるし、痛い筈だよなぁ。なんか、面白いね。あんた。」

 ああもう、さっきアメデオにもしこたま殴られたって言うのになんて日だ。じくじくと痛む腹の痛みの恨みを晴らすように奥歯に力を籠める。皮膚に歯が沈んでいくのに噛まれた相手は楽しむように私を見ていた。

「あんたが頑張っても無駄だよ?だって、俺、ユノ王子殺しちゃうもん。あの魔法使い、いいね。強いし上手い。屋敷の魔法使いも凄いね。あの結界なんか芸術ものだった。まっすぐで強い。けど、人を殺すのにそういうのは関係ないからさぁ。あんたの頑張りに免じてコレ、あげちゃう。ヒャハハ!」

 男はそう言うと私が噛んでいた腕を簡単に自分で切り落として私が付いたまま壁に投げた。

 ドシン!!

 壁に打ち付けられて口を離すと口から男の血を吐き出した。男を見ると男の腕がニョキニョキと生えてきた。--なに、あれ……。

「--ねぇ。依頼主より金額出したら寝返ってくれるの?」

 ……これは只者ではない。そう、直感した。この男はリアムの結界をもすり抜ける自信がある。

 生えてきた腕を動かしながら調子を確かめている男に声をかけると男は面白そうにこちらを見た。離れてみると頭から足先まで全身黒ずくめで覆われた男が目だけでギョロギョロとこちらを見てその表情を語っていた。

「今更金額釣りあげられても大差ないよ。十分前金受け取ってるし。あんたの提案には乗れないなぁ。それこそ、絶世の美女でも抱かせてくれるってんなら聞いてもいいけどね。ヒャハハ!」

「……絶世の美女ならいいの?」

「--はあ??あんた、なに言ってんの?」

 不信そうにこちらを見ている男に見えないようにカチリとカギを鍵穴に差し込むとキモうさの体がパオラに戻っていく。私が変わっていく様子を男が息を飲んでみているのが分かった。

「え、ちょ、なんなの???え、え??」

 突然現れたパオラの姿を暗殺者の男がじっと観察している。大出血サービスで下半身に肩を外したサロペットが大事なところを隠して引っかかってるだけでほとんど裸である。こいつのいう絶世の美女かどうかは知らないけど、まあ、全然ダメってわけじゃないのは男の態度でわかる。

「どう?」

「……。」

 髪をかき上げて見つめると男が目を見開いて固まっていた。

「……め。」

「め?」

「女神だ……ヴィーテ神だ……。」

 まあそうか。絶世の美女がヴィーテなら私は似ているらしいから。

「ヴィーテ神ではないけどね。でもヴィーテ神は私の母(ママ)よ。」

「!!」

 よくわからないけど、私の言葉に男がさらに固まった。よし、なんか利いてるっぽい。なんでも利用できるものは利用する。なんとしてでもレダを守るのだ。危なくなったらキモうさに戻ればいい。

「ヴィーテ神の……娘……。そんな。ほ、本当に?」

 ゆらゆらと体を揺らしながら黒づくめの男が近づいてくる。どうする?やはり股間に攻撃か!?さすがに股間にガブリは嫌だ。でも、それしかないか!?リアム、ライリー、エイデン!!助けて!!心の中で叫んでいると黒ずくめの男が視界から消えた。

「え。」

 恐る恐る下を見ると男がうずくまる様に私に平伏していた。なに?何が起こった!?魅了か?魅了なのか!?

「ヴィーテ神の娘だという貴方に俺はなんてことを……。」

 えぐえぐと泣き出した男は床に額つけたままだ。えーっとぉ。ヴィーテ神の信仰者だったのだろうか。しかし、ちょっと、下から見られる方がよっぽど危ない格好してるのだけど、見上げないでいただきたい!おま、見てるだろう!?興奮して息が荒くなってるの分かってるからな!

「お許しください!女神様!」

 男が私の足をむんずと掴んで足の甲に口づけした。ぞわーっと背中が寒い。思わず蹴り上げてしまい、男の顎にクリーンヒットした。

「あふうぅううう!!」

「はあ!?」

 うう、覚えがあるぞ、この反応!!くっそう!!毒を食らわば皿までだ!!ええい!!

「ひゃうううう!!」

 のけぞった姿勢のままの男の真っ黒い中にもそそり立つ主張したそれを足で踏みつける。素足に生暖かい感触。あーヤダヤダ。悶える男にご褒美だ、こん畜生とぐりぐり踏みつける。

「あう!あうっ!!」

 ハアハアと興奮してなんかもう、目がイっちゃてる。揺れる腰に高ぶりを感じて足を離した。

「!?め、女神様……?」

 もう少しでイケたのに、どうしてという目が私に縋るようだ。

「ユノ王子にはもう関わらないって誓える?」

「!!そ、それは!」

 ちょん、と親指の先で濡れた先端を僅かに弾いてみると男は涙目になった。

「うう、して、してくらはい!!」

 ろれつが回らないほど感じてるのか?変態だな……。

「誓うの?どうするの?」

「誓う!ちかふからぁ!!」

「この、変態。」

 ギュッと股間を踏みつけると足の裏に布越しにも生暖かいものが広がった。ビクビクと何度も射精する男をみて、早く帰って足を洗いたいと思った。

「あ。」

 その時、体が揺れた。リアム!!引っ張ってくれたんだ!!待ってました!

 体が引き込まれる感触に身を委ねた。
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