上 下
97 / 212
占者の洞窟

18

しおりを挟む
「パオラ、珠をマティアから貰うのは待って。貰うとゼス神が取りに来るでしょ?」

「あ、そか。」

 ヤバかった。何の対策もないままゼス神に会うところだった。リアムが止めてくれてよかった。今神器ってどのくらい集まってるのかなぁ。次会う時には聞いとかなきゃ。うーんと考えながらふらふらと目をこすりながらライリーの膝に乗る。

「え。」

 焦ったライリーの声が聞こえる。どうした、ライリー父ちゃん。私を甘やかすのは父ちゃんだろ?不思議にのぞき込むとライリーが赤面していた。仕方ないのでおっ勃て乳首を弾いておく。

「おふっ♡」

「ちょ、パオラ、今、パオラだよ!」

 エイデンの声で我に返る。あ、パオラに戻ってたの忘れてた。

「わ、ご、ゴメン!!」

 ドロン、とキモうさに戻ると抱えるようにしていた手が宙に浮いたままのライリーがいた。

「くそっ!エイデン!覚えてろ!!」

「もー。キモうさ、気を付けてよ。あっちでお着がえしようね。」

 エイデンに抱かれて服ごと回収された私はそのままキモうさ姿に戻った。

「ケツひと撫でくらいいいだろうが。クソっ。」

 悔しがるライリーにキモうさ姿で膝に戻ってお尻を差し出してみたが、ハア、と頭を撫でられ、ため息を吐かれてしまった。

 ΘΘΘ

「マティアの父のドルトです。こんな格好で申し訳ありません。」

 マティアのお父さんはベッドにいた。カルドが体を起こしてあげている。60歳くらいだろうか。マティアはお母さんに似たのかお父さんはガッチリとした四角い顔だ。

「すみません。父は膝から下を失くしていまして。」

「事故って言ってたよね?」

「7年前に洞窟から子供を逃すのに失敗してしまって。ジェカが時々罠を仕掛けるんです。ジェカは私たちが子供を逃しているのを知っていて見逃しているんですが、快く思っていないのです。特に父は男性ですから……。」

「え、膝から下がなくなるような罠を仕掛けてるのに「快く思っていない」程度じゃないでしょ!?」

「ジェカを刺激して子供が救えなくなると困るので私たちは強く出れません。」

「なにそれ、酷い。リアム……。」

 縋るようにリアムの袖を少し引いた。リアムが私を見下ろして苦笑する。

「欠損部分は治せないよ。今の不調は少し良くなるかも。」

 頷くとリアムが治癒魔法をかけてくれる。お父さんの足は戻ってこないけど、じくじく痛むのはマシになるかもしれない。ジェカ、とんでもない奴だ。

「有難うございます。こんなすがすがしい気分になれたのは久しぶりです。」

 リアムの治癒が終わるとマティアのお父さんは顔色もよくなってベッドに腰掛けることが出来た。

「マティアの事を見逃しているってことは別に処分しなくても洞窟からいなくなればそれでいいってことだよね。どうして罠なんか……。性格悪いからか。そうなのか。」

「ジェカの性格は……残忍で合理的といった所でしょうか。モーラ神が男嫌いで人嫌いなのでモーラ神からの信託のほとんどはジェカが受けていて、外部からの依頼を受けてモーラ神にお伺いするのが姫になります。」

「モーラ神には会えると思うよ?鈴貰ってるし。」

「え?」

 鈴を見せるとマティアが固まった。

「その鈴を使うのを初めて見ました。モーラ神がご自分からお会いになるのはヴィーテ神だけだと聞いていたので…驚きました。」


「まあ、ヴィーテ神は一応私の親だからね。」

「えっ!!」

 ドルトとマティアが驚く。うん、今は黒い物体だからね。

「まさか、天界の王と愛の女神のお子様だとは……。」

「私はたまたま地上に落ちて生まれただけだから、そんな大袈裟な存在じゃないよ。」

「「「「「……。」」」」」

 そう言うと唖然とした顔でみんなが私を見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

クズな少年は新しい世界で元魔獣の美少女たちを従えて、聖者と呼ばれるようになる。

くろねこ教授
ファンタジー
翔馬に言わせるとこうなる。 「ぼくは引きこもりじゃないよ  だって週に一回コンビニに出かけてる  自分で決めたんだ。火曜の深夜コンビニに行くって。  スケジュールを決めて、実行するってスゴイ事だと思わない?  まさに偉業だよね」 さて彼の物語はどんな物語になるのか。 男の願望 多めでお送りします。 イラスト:イラスト:illustACより沢音千尋様の画を利用させて戴きました 『なろう』様で12万PV、『カクヨム』様で4万PV獲得した作品です。 『アルファポリス』様に向けて、多少アレンジして転載しています。 

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

処理中です...