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占者の洞窟
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「お茶をどうぞ。と、言っても、ほどんどお湯なんだけど……。」
恥ずかしそうにしながらシャロンが皆に不ぞろいのカップでお茶を出してくれた。その精一杯がジワリと嬉しい。
「ありがと。」
お礼を言うとシャロンがじっと私を見る。マスク被ってるとそんなに怖くないと思うんだけど。むしろ子供が喜ぶ感じだと思ってるんだけど。
「黒ウサギさん、だっこしていい?」
「シャロン!?その方は神様がお創りになった方ですよ?」
マティアがシャロンを窘める。そういえば初めて会った時もそう言っていた……。
「マティアもステータスが見れるの?」
そう声をかけるとマティアが眉をㇵの字にした。
「……はい。私は16までジェカの元で働いていたのです。それまでは神殿の中で外にいる父と協力して赤子を逃していました。成人して、繁殖を迫られたので外に逃げたのです。」
「繁殖って……。じゃあ、マティアは女の人なのか。」
「いえ。私は両性なのです。きっと母が海の者の血を引いていたのでしょう。」
「じゃあ、俺たちのステータスをあんたは見てたってわけだ。」
ずっと黙っていたライリーがそう聞いた。
「ええ。申し訳ありません。貴方たちが何者かを見極めなければ私はシャロンやカルドを守れません。高貴な方々に白湯のような茶を出してお恥ずかしい限りです。」
そうは言うものの、マティアがリアムたちに特別へりくだった態度を取るわけではなさそうだ。もしかしたらマティアはこれまでも「優秀な種」をたくさん見てきているから慣れているのかもしれない。
「ステータスが見れる能力はジェカとマティアさんの他にもいるの?」
「道先案内のミラという者が。けれども彼女はせいぜい名前がわかる程度です。」
なるほど、最初に会った黒いフードの人か。道理でリアムに真っ先にに膝をついたわけだ。
「そういえば、ジェカに「竜使いさん」て呼ばれたな。キモうさのステータスってそんなになってるの?」
じっと私を見てからマティアが口を開く。ステータスを見ているのだろう。
「黒ウサギさんは本名キモうさ。「ゼス神に生命の水を与えられた命の器」との説明が。あとギフトに隠密。特技に不死身と竜使いとあります。」
「……。」
なんか、「竜使い」増えてる。となると、ジェカにもキモうさの方しかステータスが見られてないか。別にパオラだって大したステータスじゃないけどなんとなく怖いから見られなくて良かった。
「なんだか、丸裸にされてるみたいだな。」
リアムがそう言って苦笑した。マティアも困ったような顔しかできないようだった。
「マティアさん、俺たち「珠」を探しているんだけど知らないかな?」
私の腕をつかんだリアムがマティアに腕輪の宝石を見せた。のぞき込んだマティアはしばらくじっと見つめていた。
「実は私にはステータスを見る能力の他にもう一つ能力があります。これは、洞窟から逃げてから発現したものなのでジェカにも知られていません。」
「宝石を探せるの?」
「ごめんなさい、黒ウサギさん。そうではないのです。この宝石は私が保管しています。けれど、渡せません。私は夢で見たのです。この宝石を手にするのは金髪の美しい少女です。その少女は洞窟で処分される子供たちの希望となるのです。」
「え。」
「彼女が私にジェカから受け取った赤子を渡してくれる夢を見ました。あのジェカがそんなことをするなんて奇跡なようなことです。」
「貴方は夢で未来予知できるのですね?で、その夢で金髪の美しい少女が宝石を受け取り、今までこっそりと救ってきた子供たちを堂々と渡してもらえるようになる未来の夢を見たと。」
「そう、です。セルドリアム様。すみませんがこれは譲れません。私が自分の信念の基にやってきたことですから。その少女が現れるまで宝石を守り抜いて見せます。」
「その、金髪の美しい少女に心当たりがあると言ったら?」
「え。」
「貴方が待っているその少女は目の前にいるその黒ウサギです。」
すっと私に指をさしたリアムはマティアに言い切った。
恥ずかしそうにしながらシャロンが皆に不ぞろいのカップでお茶を出してくれた。その精一杯がジワリと嬉しい。
「ありがと。」
お礼を言うとシャロンがじっと私を見る。マスク被ってるとそんなに怖くないと思うんだけど。むしろ子供が喜ぶ感じだと思ってるんだけど。
「黒ウサギさん、だっこしていい?」
「シャロン!?その方は神様がお創りになった方ですよ?」
マティアがシャロンを窘める。そういえば初めて会った時もそう言っていた……。
「マティアもステータスが見れるの?」
そう声をかけるとマティアが眉をㇵの字にした。
「……はい。私は16までジェカの元で働いていたのです。それまでは神殿の中で外にいる父と協力して赤子を逃していました。成人して、繁殖を迫られたので外に逃げたのです。」
「繁殖って……。じゃあ、マティアは女の人なのか。」
「いえ。私は両性なのです。きっと母が海の者の血を引いていたのでしょう。」
「じゃあ、俺たちのステータスをあんたは見てたってわけだ。」
ずっと黙っていたライリーがそう聞いた。
「ええ。申し訳ありません。貴方たちが何者かを見極めなければ私はシャロンやカルドを守れません。高貴な方々に白湯のような茶を出してお恥ずかしい限りです。」
そうは言うものの、マティアがリアムたちに特別へりくだった態度を取るわけではなさそうだ。もしかしたらマティアはこれまでも「優秀な種」をたくさん見てきているから慣れているのかもしれない。
「ステータスが見れる能力はジェカとマティアさんの他にもいるの?」
「道先案内のミラという者が。けれども彼女はせいぜい名前がわかる程度です。」
なるほど、最初に会った黒いフードの人か。道理でリアムに真っ先にに膝をついたわけだ。
「そういえば、ジェカに「竜使いさん」て呼ばれたな。キモうさのステータスってそんなになってるの?」
じっと私を見てからマティアが口を開く。ステータスを見ているのだろう。
「黒ウサギさんは本名キモうさ。「ゼス神に生命の水を与えられた命の器」との説明が。あとギフトに隠密。特技に不死身と竜使いとあります。」
「……。」
なんか、「竜使い」増えてる。となると、ジェカにもキモうさの方しかステータスが見られてないか。別にパオラだって大したステータスじゃないけどなんとなく怖いから見られなくて良かった。
「なんだか、丸裸にされてるみたいだな。」
リアムがそう言って苦笑した。マティアも困ったような顔しかできないようだった。
「マティアさん、俺たち「珠」を探しているんだけど知らないかな?」
私の腕をつかんだリアムがマティアに腕輪の宝石を見せた。のぞき込んだマティアはしばらくじっと見つめていた。
「実は私にはステータスを見る能力の他にもう一つ能力があります。これは、洞窟から逃げてから発現したものなのでジェカにも知られていません。」
「宝石を探せるの?」
「ごめんなさい、黒ウサギさん。そうではないのです。この宝石は私が保管しています。けれど、渡せません。私は夢で見たのです。この宝石を手にするのは金髪の美しい少女です。その少女は洞窟で処分される子供たちの希望となるのです。」
「え。」
「彼女が私にジェカから受け取った赤子を渡してくれる夢を見ました。あのジェカがそんなことをするなんて奇跡なようなことです。」
「貴方は夢で未来予知できるのですね?で、その夢で金髪の美しい少女が宝石を受け取り、今までこっそりと救ってきた子供たちを堂々と渡してもらえるようになる未来の夢を見たと。」
「そう、です。セルドリアム様。すみませんがこれは譲れません。私が自分の信念の基にやってきたことですから。その少女が現れるまで宝石を守り抜いて見せます。」
「その、金髪の美しい少女に心当たりがあると言ったら?」
「え。」
「貴方が待っているその少女は目の前にいるその黒ウサギです。」
すっと私に指をさしたリアムはマティアに言い切った。
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