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砂漠の国

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「リアムがキモうさ派になった……。」

ふと、何かの拍子にリアムが私を抱っこすることが増えた。いつもエイデンには強制的に、ライリーの膝には気が向いたら乗りに行く私だが、そこにまさかのリアムの参加が加わったのだ。エイデンの震えながら呟きにも同意しかない。

「どうしたの、リアム。リアムらしくないよ。」

言って見上げるとリアムも心底不思議そうな顔をして私を抱っこしながら考えている。

「そうはいっても、うさちゃんを抱っこすると精神が落ち着くようになってしまったから仕方ないだろ。俺だってあんなに不気味に思っていたうさちゃんを抱っこしたくなるなんて不思議でしかないんだけど。」

「それは、あれだ。うさ公が赤んぼリアムの世話をしたからじゃねえか?そりゃあもう立派な母ウサギだったぜ?」

「そうなの?」

「うん。キモうさお母さんだった。おしめやミルクも、寝かしつけも完ぺきだったよ。はあ、僕の嫁……。」

ほう、とエイデンがうっとりと言う。エイデンの嫁じゃない。

「よくわかんないけど、たまに抱っこさせてよ。」

「まあ、いいけど。」

抱っこは楽だしね。でも、くんくんすな。

「一番は僕だからね!キモうさ!」

「あーはいはい。」

「おお、人気者だな、良かったな。」

幼児になった代償は大きかったな、リアム。



ΘΘΘ


頭を整頓すると、ミルバは従姉に命を狙われている。ミルバは親友だと思っている従姉にだ。て、ことは従姉はアスラン王子が好きか、王妃の座を狙っていることになる。

なんだかドロドロしてるなぁ。

しっぽ出さないってよっぽど頭がいいんだろうな。うーん、でも顔が思い出せない。あ、そうか。見に行こう。

「と、いう事で従姉を見に行こうと思う。目立つといけないので一人で行く。」

「キモうさ、一人で大丈夫?」

「何かあったら腕でも置いて逃げてくるんだよ。」

「場所分かんのか?」

ついていこうか?としつこいエイデンを振り切り、リアムにリュックにお菓子を詰められる。心配そうにエイデンは簡単な地図を持たせてくれた。おいおい、遠足かよ。念のためにとリアムに爪を切られた。何かあったら追跡してくれるらしい。三人はアスラン王子の提案で砂漠の使徒を増やして端から探っていくローラー作戦を取るようでその打ち合わせ。危ない目にあっても死なない不死身は身軽でいいのだ。

ミルバの従姉は宮殿の近くの貴族の居住区に住んでいるらしい。暗闇に紛れると隠密の効果もあって私を認識する人はいないが念のためにマスクを装着した。

裏庭からバラの垣根の下をくぐって外にでる。この大きさでなきゃ無理な道だ。少し小高い山に出て下を見るとそこが居住区らしく、大きな屋敷が連なっていた。

「こっちか。」

エイデンの地図は自分の位置と目的地までが光るので便利。短い足でしばらく歩くと従姉の住んでいるという屋敷に着いた。うろうろして侵入口を探す。掘るか、飛ぶか、と思ってたけれど使用人がちょうど出てきた扉が有ったのでするっと入れてしまった。

「さて。」

ただ、思い出せない顔を見に来ただけなのだが、従姉の部屋はどこなのだろうか。広い庭をキョロキョロと見まわしているとかすかに人の声が聞こえてきた。……なにか、歌っている??

耳を澄まして声のする方向へとりあえず歩く。近づいていくととてもいい声だった。どうやらそこで歌っているらしい東屋の方へ見つからないように慎重に進んでいった。

ーーえ、ちょっとまて、すごい上手いだけじゃないく、感動してしまう。

ちょうどいい音量に力強い声。なのに心が突き動かされるような透き通る声。心が洗われるとはこのことなのだろうか。

朝、ライリーの皿からハムを奪ったのは私です。

歯磨きしたって嘘ついてごめんなさい、エイデン。

おっきくなったらちょっとうざったいとか思ってゴメンナサイ、リアムゥウウウ!

オウオウとたまらずなんだか感動して泣き出してしまった私はいとも簡単に歌っていた本人に見つかった。

「誰!?」

「す、すごいいいぃいい!!めちゃ感動した!!ほら、見てみて!涙が止まんない!!」

「!?ぬ、ぬいぐるみ??あ、あなた……獣人なの??」

驚いてこちらを見る女の人はとても特徴のない顔をしていた。
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