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霧は晴れ、やがてその実態は明かされゆく
様々に考え、其々に暮らしていく
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【1】
新たなギルド、曙光射す騎士団での初仕事と言える各地調査から更に数日が経過していた。
セントガルド城下町の生活区にある路地の一つ、魔族が住まう其処にてトレイドは目を覚ます。
「・・・ふぅ」
日常の一部となってしまった、己を呵責するだけの悪夢から起き、疲労感の中の彼は思う。やはり、使い慣れた布団の中なら幾分か寝心地が良かったと。朝支度の最中、見慣れた光景が広がっている事でそれを強く感じていた。
その彼に一人の女性が訪れる。此処で住むなら訪れるのは大抵が魔族となり、彼を訪れるとなればある程度決まっていた。
朱色の長髪、特有のローブを来ていれば目立たないものの、曝け出していれば嫌でも目立つ色合いと膨らみ具合だ。彼女の性格、慈愛篭る包容力を表すように広がる長髪を揺らして入ってきたのはクルーエ。
「トレイドさん」
「・・・如何した?」
起きて早々訪れると言う事は余程大切な事だと、彼女の真剣な面持ちから察し、相応の態度を以って尋ねた。
「・・・前に相談していた事で、進展がありまして」
「・・・そうか。ある程度、予測はしているが」
彼女はやや躊躇いながらも切り出し、受けたトレイドもある程度想像出来ていた、来る時が来たと言った様子で対応する。
それは今後の魔族の将来を決めるものでもあり、妥協は出来ないと真剣に言葉を交わしていた。
それから少し時間が立ち、トレイドは外へと出ていた。今日は久し振りの暇、非番を得られたのだ。とは言え、する事が無いと、已む無いと言った様子で町の中を散策していた。
被災の爪痕も消え、笑顔と明るさが取り戻された町中を眺め、ゆっくりと空を見上げる。既に陽は見える位置に浮かび、青々とした空が頭上に広がっている。其処に不穏な影など一切なく。
羽根を伸ばすように、彼は歩みを再開させる。周りを眺め、平穏な時間を肌で感じるように。けれど、何時しか警邏のように歩き始めるのであった。それは彼の性分か、それとも習慣か。
暇潰しの筈が何時の間にか警邏のように歩み、何時の間にかとある場所に近付きつつあった。其処を一言で言えば全てが事足りるであろう。教会、加えるなら十字架を抱える其処。そう、ギルド天の導きと加護に辿り着こうとしていた。本人にその気はなくとも。
一瞬迷った彼だが、此処まで来たら関係ないかと足を止めなかった。
清く佇む教会が敷地に入って直ぐに設けられ、それを迂回すれば運動場、その奥に離れの建物に至る。その中間、子供達の遊び場でもある其処で朝早くから慌しく走り回る青い短髪、褐色の肌をした青年の姿があった。
褐色の肌を活かすように精悍な顔付きの彼は明るい笑顔を振る舞い、その性格を具に表す。その身は鍛錬の賜物で頑強にされているのだが、現状では宝の持ち腐れと言える。いや、逆に役に立っていると言えるだろう。子供達に囲まれ、遊びと称した無邪気な暴行を受ける際には。それか、追い掛け、大量に抱きかかえる際には。
今も鍛えた身体を活かして逃げ惑う子供達を瞬時に捕まえ、責任者であるアニエスに引き渡している所であった。
「ありがとうございます、ガリードさんが此処に来て非常に助かってます」
「それは嬉しいっスね。んでも、なんでこんなに朝っぱらからこんなに元気なんスかね?」
「ガリードさんが遊んでくれると思っているからでしょう」
「それは、喜ばしい事ではあるんですが・・・」
求められる事は嬉しい事。けれど、負担も跳ね上がる為に非常に面倒だと表情に映して。
「んじゃ、俺、買い物に行って来るっスね」
「はい、宜しくお願いしますね」
男手、それも力持ちが入ってくれた事を非常に喜んでアニエスは快く任せる。その手はしゅんとし、これから受ける説教を恐れる子供が二人。大人しく連れられていく。
それを確認せず、振り返って踏み出そうとしたガリードは丁度姿を現したトレイドに気付く。
「おお、トレイド。暫く会わなかったな。あれだよな、各地の調査に出てたって聞いたぞ」
「ああ、その通りだ。まぁ、結果は然程、だったが」
多少の発見はあったものの、進展は無かったと残念そうにする。けれども、二人は楽し気に表情を明るくする。気を許せない友人との再会は自然と心が弾むだろう。
「お前の方は如何だ?天の導きと加護の仕事には慣れたのか?」
「・・・慣れるどころじゃねぇよ、初めて此処に来たと同じ、ガキ共の玩具だ。そうそう、お前暇か?だったら、買い物に付き合え」
「構わないが・・・そうか、頑張っているようで何よりだ」
少しの愚痴を静かに笑い飛ばす。けれど、彼自身は苦ではない、寧ろ楽しいと言った様子に笑みを零し、共に公道へ流れていく。
【2】
「そうか・・・ラビスもシャオも頑張っているようだな」
「だな。偶にフーさんが来てくれて指導してくれているぜ。子供達にも護身術紛いの格闘術も教えているな。御蔭で俺は練習台でボッコボコにされるし、俺だけ酷ぇ扱いを受けるばっかりだ」
向かう道中、互いは近況を伝え合う。今の話題は以前、ラビスの強くなりたい意思に共感したフーが指導すると言うもの。語る彼は楽しげでも、折々と思い出して嫌そうな表情を浮かべる。
「なら、天の導きと加護の女性陣が黙っていないんじゃないのか?子供の性格に影響しかねないと思うが」
「いや、多分ねぇよ。俺で発散しているような感じだしな。それよりもアニエスさん達は歓迎していたよ。何時かはそう言う術も知らなきゃなんねぇし、寧ろ、アニエスさん達も教えてもらってたしな」
「そうか、女達だからな。もしも、の時か」
「そう言う事。俺が居るっちゃ居るけど、何時もじゃねぇしな。寧ろ遅かったってアニエスさんは言ってたよ」
心配は杞憂であり、寧ろ良い方向に運んでいると判断して表情を和らげる。
話している内に彼等はセントガルド城下町の中央部、美しく煌く水飛沫を散らす噴水へと到着する。今其処に同じように踏み入る数人が居た。
「おっ?ユウさん!ステインさんも、これから何処かに行くんスか?」
「セシアも、如何かしたのか?」
三人、レイホースを連れて歩く。黄色の癖毛の短髪は風では容易く揺れず、変わった口癖が特徴の青年であり、新たなギルドのリアとなったステイン。多量の武器は最早小さな武器庫のよう。
彼を補佐する、と言うよりも彼女が支えていたと言っても過言ではない。ユウと呼ばれる彼女は艶やかな黒の長髪を流す。今は朱色の鎧を着込んでの武装している為か、後ろに纏めて蠱惑的に揺らす。
最後に、やや口悪く、妹思いの彼はやや眠たげに歩く。魔族の象徴と言える瞳にやや角張った十字模様を刻み、群青色のやや長めの短髪でやや隠すように。
ステインとユウの組み合わせは時折見掛け、不自然は見られないのだが、セシアが加われば別であろう。それに二人は引っ掛かって。
「あら、ガリード。トレイドも居るのね」
「少し、少々、些かな用事でイデーアに向かわなければならなくなった。だが、直ぐにも終わるだろう」
「俺は偶々暇が出来た所を捕まった。単に同行を強制されただけだ」
ユウは二人に好意的に反応し、ステインは多少明るく接し、唯一セシアだけは不満げに事情を語った。
「イデーアかぁ、何時かは行ってみたいなぁ・・・」
「・・・雪山とは真逆の場所だ、十分に対策はするんだな」
何時しか赴きたい思いを示すガリードとは異なり、トレイドはセシアを、延いては二人も案じていた。
「手伝う事はないか?俺も同行しなくても良いか?」
「俺も手伝える事はないっスか?」
「お前は天の導きと加護に集中しろ」
暇だからと申し出るのだが、直後に調子のいい言葉に反応して注意する。恰好を付けようとして邪魔された為に彼は不満げにして。
「大丈夫よ。人数が居る事でもないから」
「君は折角の休みだ、気にせずに休んでいてくれ」
気遣いは有り難いと受け取りながらも、彼等もトレイドを思って断る。断られれば仕方ないと引き下がっていた。
その隣ではガリードとセシアが話をしていた。その話題はセシアの妹、ティナについてである。
「ガリード、何時も妹、ティナが世話になっている。他の子供達に迷惑を掛けていないか?」
「何時もって、俺は最近入ったばかりだしな。まぁ、アニエスさんには言っておくわ。んで、ティナちゃんだけど、俺も助かってんだぜ?元気っちゃ元気だけど、お前の教育が良いんだろうな、周りのガキ共を諫めてくれるから凄ぇ助かってんだよ」
そう互いに妹が世話になり、助かっていると礼を言い合っている。ガリードの友好的な性格に拠って、今や友人と成り果てていた。彼のコミュニケーション能力、改めて驚嘆するほどに高く。
「何かあればフーに、それかアイルードと言う、元法と秩序の幹部だった人間に伝えてくれ」
「数日程度で戻るから心配する事は無いわ」
そう言い残して三人は再び歩き出す。その直後、トレイドが数歩出て、呼び止めた。
「ステイン、用事が終わったら伝えたい事がある。前に相談した事だ、もう準備も進められているが」
その発言に三人の足は止められる。ユウとガリードはそれが何なのか知らない為、疑問の視線を向けて首を傾げる。セシアは知っている為、真剣な面で受け止めていた。
「分かった」
同じように把握するステインは了承の言葉を述べ、ゆっくりとイデーアに向けて歩みを再開させていった。
「なぁ、今さっきのは何の事だ?」
三人を見送りながら抱いた疑問を、ガリードはそのまま問い掛けた。
「魔族に関わる事だ。近々、雪山地帯に、あの村に戻って再建させる話が出て、大方進められている状態だ。俺もそれに同行する積もりだ。その事で、だな」
少し躊躇ったが友人であり、隠す事でもないと正直に話す。それにガリードは表情に影を落とす。離れる経歴を知り、戻りたい気持ちも理解している為、悲しい気持ちが全面に出ていた。
「・・・そっか、俺も手伝いてぇけどな・・・」
「お前は、お前のする事をしろ。気持ちだけは貰っておく」
ガリードの気遣いに笑みを零し、再び歩みを再開させていった。
【3】
「そういやよ、お前。レイナちゃんの事、聞いてるか?」
「確か、バーテルの娘、だったな。何かあったのか」
唐突にその少女の話題を出されて眉が顰められる。その反応にガリードは確信する反応を見せた。
「そっか、じゃあ、シパの事を聞いてねぇんだな」
「シパ?」
「んじゃ、会いに行こうぜ」
一度は見てみるべきだと、その内心は痛い目に遭えと言う気持ちで進路が変更される。
「おい、買い物がまだだろ。寄り道して良いのか?」
「ちょっとぐらいは大丈夫だって。バーテルさんの所に行こうぜ!」
彼のきまぐれで目的は変更される。こうしたいい加減な所に少々苛立ちを感じれども、最早修復など出来ないと、今更言っても仕方ないと諦め、その後に続いていった。
拠って、次に足を運ばれたのは彼が働く西洋風の酒場である。トレイドは過去に数えるほどしか尋ねていないのだが、忌まわしい記憶が作用してか、場所と形状は良く覚えていた。
まるで其処だけ世界観が異なり、異物感と見做しても仕方ないだろう。だが、立派な酒場として知られ、使用される其処に向かう。ガリードの足取りは軽く、早いものだがトレイドはやはり重く、抵抗を見せながらも両開きの扉を押し開けていった。
まだ開店していないのか、店内は閑寂とする。落ち着いた色合いに包まれ、馬鹿騒ぎして酒を浴びるように飲む居酒屋のような雰囲気は泣く、静かに酒の味と会話を楽しむ雰囲気を醸す、とも異なる。言うなれば、日常に融け込み、普段の姿で友人達と酒を酌み交わしたり、食事を楽しむ場と言った雰囲気が流れていた。
「あら、まだ開店していないんです。申し訳ありませんが、後一時間程後で改めて来てもらっても良いですか?・・・って、ガリードさんと、トレイドさん。珍しいですね」
入店の物音を聞き付けて奥から女性店員、エールが出てくる。その直後、彼女は入店してきた二人を知って表情を少し変えた。
トレイドに対しては彼自身の問題があってそれほど足を運ばない。それも加えて覚えている事は相当物覚えが良いのだろう。そして、ガリードに対して特に言及がないのはそれなりに足を運んでいる証拠か。
「バーテルさんとレイナちゃんに会いに来たんスけど、居ないんスか?」
店内を見渡したとしても彼、少女と思わしき姿は見当たない。裏で雑務をしているかも知れないと率直に尋ね掛ける。
「バーテルさんは今日休みなんです」
「そっか、タイミングが悪かったなぁー。んじゃ、俺達は・・・」
「冷やかしは駄目ですよ?まだ開けていませんが、折角ですし、ジュースか何か飲みます?」
ならば用事は無いと切り上げようとしたのだが、寸前でその肩を掴み掛かる様に彼女が釘を刺した。それによって退店は許されなくなってしまった。
「・・・それなら、何かあるか?」
彼女の言い分も一理あり、ただの挨拶だけで済ますのも彼女に悪いと諦めたトレイドは注文をしようとする。
「酒は・・・」
「阿呆を言うな。冗談でも口にするな」
冗談の積もりで言い掛けた台詞をトレイドは厳しく切り捨てる。まだ仕事があり、子供と接する仕事にも就いている。酒に関する規定は一応定め直され、その年に達していない事も踏まえて厳しく取り締まっていた。其処にはやはり私怨も混じって。
「分かってるよ、言わなくても。んじゃ・・・」
「そうだね、野菜ジュースなんて如何だい?まだまだ新鮮な野菜をふんだんに使うよ」
冗談が通じなくて困った様子のガリードは注文しようとしている時、隣から聞き慣れた男性の声が聞こえてきた。勧めてくれるそれに反応して振り返ると、目的とする男性バーテルが其処に立っていた。
ガリードよりも上背があり、やや大柄の男性彼はタンクトップと作業着の恰好、頭にタオルを巻いてと何処から如何見ても建築関係者と見える。隆々とした体格、引き締まる肉体は生地裏からでも曝していれば尚更に。加えて、酒豪と恐れられている人物でもある。
その隣、父親に引っ付くように立つのは娘のレイナ。緑色が掛かる黒色のツインテールを揺らし、歳相応の活発さが笑みから見える。だが、この少女の趣味とは思えない、黒色を基調とした白のフリルが山ほど付いたかなり派手な服、所謂ゴシックロリータを着込んでやや奇抜に。
細く小さな腕は小さな白い犬を抱えていた。舌を出して激しく息を繰り返し、細い腕に両前足を掛け、尻尾をバタつかせている。小さくも高い声を出して子犬は吼え立てる。何時の間にか犬を抱いていた事にトレイドは少し困惑し、眉を顰めていた。
「バーテルさん、今日は休みって聞いて・・・その野菜を詰め込んだ箱は何スか?」
レイナの元気な挨拶に続き、そこそこに挨拶を交わした後で疑問を投げる。その疑問は彼が抱える箱に集中された。
「そうだよ、今日は休みだったんだけどね。直ぐ近くでフェリスで野菜を育てているお爺さんとばったり会ったんだよ。そのお爺さんから取り寄せてていてね、野菜を受け取ったんだ。なら、来ない訳にはいかないからね。エールさん、何時も懇意にして貰ってありがとうって言われて、少し多くしてくれているって言われたよ」
まるで自分が育てましたと言わんばかりの笑顔を振る舞ってカウンターに乗せる。それは恰好がそう見せるのだろう。
「まぁ!今度お礼しないといけませんね!どれも新鮮で美味しそう!直ぐに搾りますね!」
野菜達の新鮮さに喜ぶ彼女は直ぐにもそれを受け取って裏へと向かう。それで注文になった事に二人は指摘せず。
「それで君達はこんなに早くからジュースを飲みに来たの?トレイド君はとても珍しいね」
「それはっスね、トレイドがシパの事を知らないって事で、一度店に来たんスよ」
「シパをかい?なら、エールさんがジュースを作ってくれるまで存分に愛でてもらおうかな」
「見たいの?はい、どうぞ!」
そう誇らしげにし、受けた娘はそれ以上に誇らしく、嬉しそうに抱えていた子犬を差し出す。近付けられた子犬はワンと鳴き、背に備わった小さな両翼で飛び始めた。
自身の知識と掛け離れた姿を見て、困惑を隠せないトレイドだが、目の前で滞空する子犬は可愛らしい為に自然と手は動く。撫でようとした手、その人差し指を見た子犬は流れるように口を開いて噛み付いた。
一瞬、動きが止まったが彼に痛みは感じず、甘えるように、じゃれるように齧られている為、為すがままにして顔をバーテルに向けた。
「何時の間にこんな子犬を飼っていたんだ?シパ、って言うのか?」
「うん、そうだよ!シパって言うの!聖獣なんだよ!」
「聖獣?・・・良く分からないが、良かったな」
齧られながら、別の手でその頭を撫でる。褒められて嬉しいのか、笑みは更にも輝きを増して。
「取り敢えず、以前レイナが大きな卵を抱えていたよね?」
「ああ、そうだったな。それから産まれたのか」
少女が抱えるほどの大きい卵を思い出し、それから産まれた個体ならば粗方の疑問が払拭された。最早、子犬が孵化したと言う事実は些細な事となる。そもそも、常識が異なるのだ。
立ったままで話すのは何だとカウンター席に腰掛ける。その時にシパはトレイドを解放し、代わりにガリードに齧り付いていた。まるで獲物を発見し、そのまま食べようとするように。その姿にレイナは楽しいと喜び、トレイドは小さく胸が空く思いを感じていた。
「それで、聖獣、って事なんだけど、それについては私も良く分かっていないんだ。色んな人にも聞いているんだけどね」
「俺も、知らないな」
「そうか」
説明出来ない事は遺伝子記憶にさえ刻まれていないと言う事。それを知るのはレイナだけであろう。少女となれば説明するのは難しい。だが、邪な存在ではない事は明らかなので、深くは考えないようにした。
話に区切りが付いた所でエールが戻ってくる。新鮮な野菜を作ったジュースは鮮やかな赤色を示し、全員に振る舞われる。瑞々しく、けれど野菜の味をふんだんに出されたそれは甘いとさえも感じ、子供にも好評を得られるほどに美味しかった。
「さて、そろそろ行こうか」
「うん!」
一頻り齧り終えたシパの様子を見て、バーテルは娘にも促す。応じた少女と子犬は元気良く返事を返して駆け寄る。
「何処かに行く予定があったのか?」
「・・・いや、何時もなんだけど、天の導きと加護にお邪魔しようと思っていたんだよ」
「ああ、そうだったんすね!じゃあ、一緒に行きますか?今買い物の途中で立ち寄ったんスよ」
思わず寄り道していると言い掛けたトレイドだが飲み込んでいた。
「そうなのかい?じゃあ、何時もお世話になっているし、手伝おうかな」
「うん、手伝うよ!ガリードのお兄ちゃん!」
「んじゃ、頼むっスね!」
と、話が決まれば行動あるのみと席を立つ。エールに料金と美味しかった旨を伝えて皆は外へと繰り出していく。
途中、何度もガリードに噛み付くシパの姿を見て、鬱憤が薄れる感覚となったトレイドであった。
【4】
トレイドやバーテル、レイナの助力もあって、天の導きと加護への買い物は直ぐにも終え、四人で分配して運ぶ。
その途中でやはり噴水が備わった広場に立ち寄る。その日は珍しく人気が無く、噴き上げられ、散って舞い落ちる音が聞こえるほどに静まり返っていた。
この静寂に立ち止まり、レイナのような子供も居る為、小休憩する事が決まる。噴水からやや離れた位置に設けられたベンチへと腰掛けていく。
「いやぁ、助かったっス。バーテルさんやレイナちゃんのお陰で更に多く買う事が出来たっスよ」
「いやいや、何時もレイナがお世話になっているからね。これぐらいはしないとね」
ガリードが親子に礼を告げるのだが、其処に友人の名前が無いのはわざとだろう。それに当人は指摘せず、だが溜息交じりに空を眺めていた。友人と親子の会話を耳にしながら内面に抱く葛藤、とまではいかないが多少の迷いを巡らせていた。
しかし、最早決定事項であり、様々な心配、懸念を巡らせたとしても、尽力するだけだと思い直して視線を落とす。その何気ない動作が、偶然通り掛かった人物と目が合った。
「クルーエ、如何したんだ?その荷物は」
「トレイドさん」
通り掛かったのはクルーエであり、彼女では少し重そうに映る荷物を移る。気付き、近付けばそれが工具や鉄釘などの道具である事を知る。住む区画の建物に使うにしては多く。
「お、クルーエさん。クルーエさんも買い物に出てたんだな、奇遇だ」
「お早うございます、クルーエさん」
「お早う!クルーエのお姉ちゃん!」
続いて三人も挨拶を交わす。それに彼女が応じている間にトレイドがその荷物を確認、引き受けるように持つ。
「これは・・・もう準備しているのか?今朝に聞かされたばかりだぞ?」
「はい、決まったので先に準備を進めようと言う事で、丁度手が空いていましたので、手伝っていました」
そうして買い物の役を受けたのだろう。幾ら、操魔術を使えるとしても細腕で鉄道具を持つのは頂けないと自然と代わりに持っていた。
彼女の言葉、魔族達のその決定は早く戻りたいと言う気持ちの表れであろう。そう、例え、思い出したくない記憶が焼き付いていようと、それ以上の思い出が眠っている場所であり、隣人が眠る場所でもある。戻りたいと言うのは心情であろう。
「そうか・・・まぁ、一応ステインには話を通してはいる。当人は用事があってイデーアに出ているが、数日程で戻ってくる。その時に本格的に話を進める積もりだ」
「そうなんですね」
「多少は応援、手伝ってくれる者を出してくれるかも知れないが・・・期待は薄いだろうな。まだ、新しくギルドを作り直して日が浅い。人手は要る筈だからな」
「それは大丈夫です。元々、あの村も魔族達だけで造ったと聞いていますから」
人手が足らなくとも、例え断られたとしても戻る意思は彼女からも読み取れる。意思は固い事を再度理解し、重い表情で頷いていた。
「なぁ、そろそろ買ったもん持っていきたいんだけど、良いか?」
やや重くなってしまった会話をガリードが遮る。それに気持ちは削がれて彼に視線が向けられた。
「もしかしてなんか用事が出来たのか?」
「大した事ではないのですが・・・ガリードさん達は食料を買っていますが、戻る途中だったのですね」
少し紛らわし、四人で運んでいた食料を詰めた紙袋を指摘する。
「そうそう、今から天の導きと加護に戻る所だったんだよ。でも、用事が出来たんなら・・・」
「なら、私も手伝っても宜しいですか?」
「いや、まぁ、それは良いけど、クルーエさんに持たせるのはなぁ」
それは嬉しいのだが、既に荷物を持っている彼女に更に持たせるのは悪いと考える。けれど、彼女は明るいもの。
「大丈夫です、操魔術を使えますので。なんでしたら、皆さんの荷物も多少は軽くします」
「そっか、そう言やそうだったな。んじゃ、頼んでも良いかな?」
「はい」
その事に失念しており、思い出せば調子良く頼む。それを受けた彼女は快く引き受けていた。
「クルーエ、この阿呆に付き合う事は無いぞ?」
「いえ、大丈夫です」
何気なく友人を罵倒していたのだが、当人は言われ慣れてしまったのか反論はせず、笑っていた。
やや余計と言える時間を要したが無事に買い物を済ませ、一行は天の導きと加護に到着する。
アニエスと会い、バーテル達は挨拶を済ませて食材を指定の場所へ運ぶ。その後にバーテル親子は他の子供達に混じって遊びに繰り出す。それを横目に、ガリードは昼食の準備に取り掛かる。
「トレイド、クルーエさん」
用は済んだと、次に魔族の用事に取り掛かろうとする二人を呼び止める。振り返った先、せっせと調理するガリードの背が映る。
「此処に移ってから早々手伝えないかも知れないけど、もしもの時は遠慮なく言ってくれよ。力仕事とかさ」
トレイドから聞かされ、手伝いたい気持ちが強かったのだろう。その心遣いに二人は頬を緩めた。
「ありがとうございます。人手が必要となった時にはお願いします、ガリードさん」
「そっちも、俺で出来る事があったら遠慮なく言ってくれ」
厚意には厚意で返し、その場を後にする。子供達のまさに弾んだ声を背に、二人は今後の為の準備に取り掛かっていった。
後日、トレイドはステインと会い、例の件の相談を行った。その結果、快諾してくれた。それに追従する者達は今の仕事から外れ、代わりの者を充てる事も約束した。それは正式に決定していた。
感謝していると伝えた後、それの最終準備に取り掛かり、程無くしてセントガルドから出立していた。
それは今生の別れでなく、ただ離れた位置に移るだけ。それでも感慨深く、涙を浮かべる者も居て。トレイドもそれに少々当てられつつも、様々な思いが残る地へと向かう。必ず成功させ、危険を及ばせない心意気で手綱を握り、鞘に携えた剣の柄に触れていた。
本当の姿、紛れもない真実。それ等を目の当たりにした時、動揺しない人間など居ないだろう。それはトレイドとて同じであり、既に似たような経験を経た者でも同じように。これからも必要な者、分からなくとも決して喪って良い筈も無い。それでも代償のように喪われた。先の見えない世界、恩寵賜る母たる大地。失意に塗れ、挫折しそうになり、それでも立ち上がり、様々な葛藤、迷い、痛みを感じながらも人は歩む。それはトレイドでも、誰であっても同じ。
真実がどのように牙を剥くか分からない、どの様な形で裏切るのか分からない。だとしても進むしかない。そう、指し示すように皆は生きていくのだ。真実を突き付けられたとしても。
新たなギルド、曙光射す騎士団での初仕事と言える各地調査から更に数日が経過していた。
セントガルド城下町の生活区にある路地の一つ、魔族が住まう其処にてトレイドは目を覚ます。
「・・・ふぅ」
日常の一部となってしまった、己を呵責するだけの悪夢から起き、疲労感の中の彼は思う。やはり、使い慣れた布団の中なら幾分か寝心地が良かったと。朝支度の最中、見慣れた光景が広がっている事でそれを強く感じていた。
その彼に一人の女性が訪れる。此処で住むなら訪れるのは大抵が魔族となり、彼を訪れるとなればある程度決まっていた。
朱色の長髪、特有のローブを来ていれば目立たないものの、曝け出していれば嫌でも目立つ色合いと膨らみ具合だ。彼女の性格、慈愛篭る包容力を表すように広がる長髪を揺らして入ってきたのはクルーエ。
「トレイドさん」
「・・・如何した?」
起きて早々訪れると言う事は余程大切な事だと、彼女の真剣な面持ちから察し、相応の態度を以って尋ねた。
「・・・前に相談していた事で、進展がありまして」
「・・・そうか。ある程度、予測はしているが」
彼女はやや躊躇いながらも切り出し、受けたトレイドもある程度想像出来ていた、来る時が来たと言った様子で対応する。
それは今後の魔族の将来を決めるものでもあり、妥協は出来ないと真剣に言葉を交わしていた。
それから少し時間が立ち、トレイドは外へと出ていた。今日は久し振りの暇、非番を得られたのだ。とは言え、する事が無いと、已む無いと言った様子で町の中を散策していた。
被災の爪痕も消え、笑顔と明るさが取り戻された町中を眺め、ゆっくりと空を見上げる。既に陽は見える位置に浮かび、青々とした空が頭上に広がっている。其処に不穏な影など一切なく。
羽根を伸ばすように、彼は歩みを再開させる。周りを眺め、平穏な時間を肌で感じるように。けれど、何時しか警邏のように歩き始めるのであった。それは彼の性分か、それとも習慣か。
暇潰しの筈が何時の間にか警邏のように歩み、何時の間にかとある場所に近付きつつあった。其処を一言で言えば全てが事足りるであろう。教会、加えるなら十字架を抱える其処。そう、ギルド天の導きと加護に辿り着こうとしていた。本人にその気はなくとも。
一瞬迷った彼だが、此処まで来たら関係ないかと足を止めなかった。
清く佇む教会が敷地に入って直ぐに設けられ、それを迂回すれば運動場、その奥に離れの建物に至る。その中間、子供達の遊び場でもある其処で朝早くから慌しく走り回る青い短髪、褐色の肌をした青年の姿があった。
褐色の肌を活かすように精悍な顔付きの彼は明るい笑顔を振る舞い、その性格を具に表す。その身は鍛錬の賜物で頑強にされているのだが、現状では宝の持ち腐れと言える。いや、逆に役に立っていると言えるだろう。子供達に囲まれ、遊びと称した無邪気な暴行を受ける際には。それか、追い掛け、大量に抱きかかえる際には。
今も鍛えた身体を活かして逃げ惑う子供達を瞬時に捕まえ、責任者であるアニエスに引き渡している所であった。
「ありがとうございます、ガリードさんが此処に来て非常に助かってます」
「それは嬉しいっスね。んでも、なんでこんなに朝っぱらからこんなに元気なんスかね?」
「ガリードさんが遊んでくれると思っているからでしょう」
「それは、喜ばしい事ではあるんですが・・・」
求められる事は嬉しい事。けれど、負担も跳ね上がる為に非常に面倒だと表情に映して。
「んじゃ、俺、買い物に行って来るっスね」
「はい、宜しくお願いしますね」
男手、それも力持ちが入ってくれた事を非常に喜んでアニエスは快く任せる。その手はしゅんとし、これから受ける説教を恐れる子供が二人。大人しく連れられていく。
それを確認せず、振り返って踏み出そうとしたガリードは丁度姿を現したトレイドに気付く。
「おお、トレイド。暫く会わなかったな。あれだよな、各地の調査に出てたって聞いたぞ」
「ああ、その通りだ。まぁ、結果は然程、だったが」
多少の発見はあったものの、進展は無かったと残念そうにする。けれども、二人は楽し気に表情を明るくする。気を許せない友人との再会は自然と心が弾むだろう。
「お前の方は如何だ?天の導きと加護の仕事には慣れたのか?」
「・・・慣れるどころじゃねぇよ、初めて此処に来たと同じ、ガキ共の玩具だ。そうそう、お前暇か?だったら、買い物に付き合え」
「構わないが・・・そうか、頑張っているようで何よりだ」
少しの愚痴を静かに笑い飛ばす。けれど、彼自身は苦ではない、寧ろ楽しいと言った様子に笑みを零し、共に公道へ流れていく。
【2】
「そうか・・・ラビスもシャオも頑張っているようだな」
「だな。偶にフーさんが来てくれて指導してくれているぜ。子供達にも護身術紛いの格闘術も教えているな。御蔭で俺は練習台でボッコボコにされるし、俺だけ酷ぇ扱いを受けるばっかりだ」
向かう道中、互いは近況を伝え合う。今の話題は以前、ラビスの強くなりたい意思に共感したフーが指導すると言うもの。語る彼は楽しげでも、折々と思い出して嫌そうな表情を浮かべる。
「なら、天の導きと加護の女性陣が黙っていないんじゃないのか?子供の性格に影響しかねないと思うが」
「いや、多分ねぇよ。俺で発散しているような感じだしな。それよりもアニエスさん達は歓迎していたよ。何時かはそう言う術も知らなきゃなんねぇし、寧ろ、アニエスさん達も教えてもらってたしな」
「そうか、女達だからな。もしも、の時か」
「そう言う事。俺が居るっちゃ居るけど、何時もじゃねぇしな。寧ろ遅かったってアニエスさんは言ってたよ」
心配は杞憂であり、寧ろ良い方向に運んでいると判断して表情を和らげる。
話している内に彼等はセントガルド城下町の中央部、美しく煌く水飛沫を散らす噴水へと到着する。今其処に同じように踏み入る数人が居た。
「おっ?ユウさん!ステインさんも、これから何処かに行くんスか?」
「セシアも、如何かしたのか?」
三人、レイホースを連れて歩く。黄色の癖毛の短髪は風では容易く揺れず、変わった口癖が特徴の青年であり、新たなギルドのリアとなったステイン。多量の武器は最早小さな武器庫のよう。
彼を補佐する、と言うよりも彼女が支えていたと言っても過言ではない。ユウと呼ばれる彼女は艶やかな黒の長髪を流す。今は朱色の鎧を着込んでの武装している為か、後ろに纏めて蠱惑的に揺らす。
最後に、やや口悪く、妹思いの彼はやや眠たげに歩く。魔族の象徴と言える瞳にやや角張った十字模様を刻み、群青色のやや長めの短髪でやや隠すように。
ステインとユウの組み合わせは時折見掛け、不自然は見られないのだが、セシアが加われば別であろう。それに二人は引っ掛かって。
「あら、ガリード。トレイドも居るのね」
「少し、少々、些かな用事でイデーアに向かわなければならなくなった。だが、直ぐにも終わるだろう」
「俺は偶々暇が出来た所を捕まった。単に同行を強制されただけだ」
ユウは二人に好意的に反応し、ステインは多少明るく接し、唯一セシアだけは不満げに事情を語った。
「イデーアかぁ、何時かは行ってみたいなぁ・・・」
「・・・雪山とは真逆の場所だ、十分に対策はするんだな」
何時しか赴きたい思いを示すガリードとは異なり、トレイドはセシアを、延いては二人も案じていた。
「手伝う事はないか?俺も同行しなくても良いか?」
「俺も手伝える事はないっスか?」
「お前は天の導きと加護に集中しろ」
暇だからと申し出るのだが、直後に調子のいい言葉に反応して注意する。恰好を付けようとして邪魔された為に彼は不満げにして。
「大丈夫よ。人数が居る事でもないから」
「君は折角の休みだ、気にせずに休んでいてくれ」
気遣いは有り難いと受け取りながらも、彼等もトレイドを思って断る。断られれば仕方ないと引き下がっていた。
その隣ではガリードとセシアが話をしていた。その話題はセシアの妹、ティナについてである。
「ガリード、何時も妹、ティナが世話になっている。他の子供達に迷惑を掛けていないか?」
「何時もって、俺は最近入ったばかりだしな。まぁ、アニエスさんには言っておくわ。んで、ティナちゃんだけど、俺も助かってんだぜ?元気っちゃ元気だけど、お前の教育が良いんだろうな、周りのガキ共を諫めてくれるから凄ぇ助かってんだよ」
そう互いに妹が世話になり、助かっていると礼を言い合っている。ガリードの友好的な性格に拠って、今や友人と成り果てていた。彼のコミュニケーション能力、改めて驚嘆するほどに高く。
「何かあればフーに、それかアイルードと言う、元法と秩序の幹部だった人間に伝えてくれ」
「数日程度で戻るから心配する事は無いわ」
そう言い残して三人は再び歩き出す。その直後、トレイドが数歩出て、呼び止めた。
「ステイン、用事が終わったら伝えたい事がある。前に相談した事だ、もう準備も進められているが」
その発言に三人の足は止められる。ユウとガリードはそれが何なのか知らない為、疑問の視線を向けて首を傾げる。セシアは知っている為、真剣な面で受け止めていた。
「分かった」
同じように把握するステインは了承の言葉を述べ、ゆっくりとイデーアに向けて歩みを再開させていった。
「なぁ、今さっきのは何の事だ?」
三人を見送りながら抱いた疑問を、ガリードはそのまま問い掛けた。
「魔族に関わる事だ。近々、雪山地帯に、あの村に戻って再建させる話が出て、大方進められている状態だ。俺もそれに同行する積もりだ。その事で、だな」
少し躊躇ったが友人であり、隠す事でもないと正直に話す。それにガリードは表情に影を落とす。離れる経歴を知り、戻りたい気持ちも理解している為、悲しい気持ちが全面に出ていた。
「・・・そっか、俺も手伝いてぇけどな・・・」
「お前は、お前のする事をしろ。気持ちだけは貰っておく」
ガリードの気遣いに笑みを零し、再び歩みを再開させていった。
【3】
「そういやよ、お前。レイナちゃんの事、聞いてるか?」
「確か、バーテルの娘、だったな。何かあったのか」
唐突にその少女の話題を出されて眉が顰められる。その反応にガリードは確信する反応を見せた。
「そっか、じゃあ、シパの事を聞いてねぇんだな」
「シパ?」
「んじゃ、会いに行こうぜ」
一度は見てみるべきだと、その内心は痛い目に遭えと言う気持ちで進路が変更される。
「おい、買い物がまだだろ。寄り道して良いのか?」
「ちょっとぐらいは大丈夫だって。バーテルさんの所に行こうぜ!」
彼のきまぐれで目的は変更される。こうしたいい加減な所に少々苛立ちを感じれども、最早修復など出来ないと、今更言っても仕方ないと諦め、その後に続いていった。
拠って、次に足を運ばれたのは彼が働く西洋風の酒場である。トレイドは過去に数えるほどしか尋ねていないのだが、忌まわしい記憶が作用してか、場所と形状は良く覚えていた。
まるで其処だけ世界観が異なり、異物感と見做しても仕方ないだろう。だが、立派な酒場として知られ、使用される其処に向かう。ガリードの足取りは軽く、早いものだがトレイドはやはり重く、抵抗を見せながらも両開きの扉を押し開けていった。
まだ開店していないのか、店内は閑寂とする。落ち着いた色合いに包まれ、馬鹿騒ぎして酒を浴びるように飲む居酒屋のような雰囲気は泣く、静かに酒の味と会話を楽しむ雰囲気を醸す、とも異なる。言うなれば、日常に融け込み、普段の姿で友人達と酒を酌み交わしたり、食事を楽しむ場と言った雰囲気が流れていた。
「あら、まだ開店していないんです。申し訳ありませんが、後一時間程後で改めて来てもらっても良いですか?・・・って、ガリードさんと、トレイドさん。珍しいですね」
入店の物音を聞き付けて奥から女性店員、エールが出てくる。その直後、彼女は入店してきた二人を知って表情を少し変えた。
トレイドに対しては彼自身の問題があってそれほど足を運ばない。それも加えて覚えている事は相当物覚えが良いのだろう。そして、ガリードに対して特に言及がないのはそれなりに足を運んでいる証拠か。
「バーテルさんとレイナちゃんに会いに来たんスけど、居ないんスか?」
店内を見渡したとしても彼、少女と思わしき姿は見当たない。裏で雑務をしているかも知れないと率直に尋ね掛ける。
「バーテルさんは今日休みなんです」
「そっか、タイミングが悪かったなぁー。んじゃ、俺達は・・・」
「冷やかしは駄目ですよ?まだ開けていませんが、折角ですし、ジュースか何か飲みます?」
ならば用事は無いと切り上げようとしたのだが、寸前でその肩を掴み掛かる様に彼女が釘を刺した。それによって退店は許されなくなってしまった。
「・・・それなら、何かあるか?」
彼女の言い分も一理あり、ただの挨拶だけで済ますのも彼女に悪いと諦めたトレイドは注文をしようとする。
「酒は・・・」
「阿呆を言うな。冗談でも口にするな」
冗談の積もりで言い掛けた台詞をトレイドは厳しく切り捨てる。まだ仕事があり、子供と接する仕事にも就いている。酒に関する規定は一応定め直され、その年に達していない事も踏まえて厳しく取り締まっていた。其処にはやはり私怨も混じって。
「分かってるよ、言わなくても。んじゃ・・・」
「そうだね、野菜ジュースなんて如何だい?まだまだ新鮮な野菜をふんだんに使うよ」
冗談が通じなくて困った様子のガリードは注文しようとしている時、隣から聞き慣れた男性の声が聞こえてきた。勧めてくれるそれに反応して振り返ると、目的とする男性バーテルが其処に立っていた。
ガリードよりも上背があり、やや大柄の男性彼はタンクトップと作業着の恰好、頭にタオルを巻いてと何処から如何見ても建築関係者と見える。隆々とした体格、引き締まる肉体は生地裏からでも曝していれば尚更に。加えて、酒豪と恐れられている人物でもある。
その隣、父親に引っ付くように立つのは娘のレイナ。緑色が掛かる黒色のツインテールを揺らし、歳相応の活発さが笑みから見える。だが、この少女の趣味とは思えない、黒色を基調とした白のフリルが山ほど付いたかなり派手な服、所謂ゴシックロリータを着込んでやや奇抜に。
細く小さな腕は小さな白い犬を抱えていた。舌を出して激しく息を繰り返し、細い腕に両前足を掛け、尻尾をバタつかせている。小さくも高い声を出して子犬は吼え立てる。何時の間にか犬を抱いていた事にトレイドは少し困惑し、眉を顰めていた。
「バーテルさん、今日は休みって聞いて・・・その野菜を詰め込んだ箱は何スか?」
レイナの元気な挨拶に続き、そこそこに挨拶を交わした後で疑問を投げる。その疑問は彼が抱える箱に集中された。
「そうだよ、今日は休みだったんだけどね。直ぐ近くでフェリスで野菜を育てているお爺さんとばったり会ったんだよ。そのお爺さんから取り寄せてていてね、野菜を受け取ったんだ。なら、来ない訳にはいかないからね。エールさん、何時も懇意にして貰ってありがとうって言われて、少し多くしてくれているって言われたよ」
まるで自分が育てましたと言わんばかりの笑顔を振る舞ってカウンターに乗せる。それは恰好がそう見せるのだろう。
「まぁ!今度お礼しないといけませんね!どれも新鮮で美味しそう!直ぐに搾りますね!」
野菜達の新鮮さに喜ぶ彼女は直ぐにもそれを受け取って裏へと向かう。それで注文になった事に二人は指摘せず。
「それで君達はこんなに早くからジュースを飲みに来たの?トレイド君はとても珍しいね」
「それはっスね、トレイドがシパの事を知らないって事で、一度店に来たんスよ」
「シパをかい?なら、エールさんがジュースを作ってくれるまで存分に愛でてもらおうかな」
「見たいの?はい、どうぞ!」
そう誇らしげにし、受けた娘はそれ以上に誇らしく、嬉しそうに抱えていた子犬を差し出す。近付けられた子犬はワンと鳴き、背に備わった小さな両翼で飛び始めた。
自身の知識と掛け離れた姿を見て、困惑を隠せないトレイドだが、目の前で滞空する子犬は可愛らしい為に自然と手は動く。撫でようとした手、その人差し指を見た子犬は流れるように口を開いて噛み付いた。
一瞬、動きが止まったが彼に痛みは感じず、甘えるように、じゃれるように齧られている為、為すがままにして顔をバーテルに向けた。
「何時の間にこんな子犬を飼っていたんだ?シパ、って言うのか?」
「うん、そうだよ!シパって言うの!聖獣なんだよ!」
「聖獣?・・・良く分からないが、良かったな」
齧られながら、別の手でその頭を撫でる。褒められて嬉しいのか、笑みは更にも輝きを増して。
「取り敢えず、以前レイナが大きな卵を抱えていたよね?」
「ああ、そうだったな。それから産まれたのか」
少女が抱えるほどの大きい卵を思い出し、それから産まれた個体ならば粗方の疑問が払拭された。最早、子犬が孵化したと言う事実は些細な事となる。そもそも、常識が異なるのだ。
立ったままで話すのは何だとカウンター席に腰掛ける。その時にシパはトレイドを解放し、代わりにガリードに齧り付いていた。まるで獲物を発見し、そのまま食べようとするように。その姿にレイナは楽しいと喜び、トレイドは小さく胸が空く思いを感じていた。
「それで、聖獣、って事なんだけど、それについては私も良く分かっていないんだ。色んな人にも聞いているんだけどね」
「俺も、知らないな」
「そうか」
説明出来ない事は遺伝子記憶にさえ刻まれていないと言う事。それを知るのはレイナだけであろう。少女となれば説明するのは難しい。だが、邪な存在ではない事は明らかなので、深くは考えないようにした。
話に区切りが付いた所でエールが戻ってくる。新鮮な野菜を作ったジュースは鮮やかな赤色を示し、全員に振る舞われる。瑞々しく、けれど野菜の味をふんだんに出されたそれは甘いとさえも感じ、子供にも好評を得られるほどに美味しかった。
「さて、そろそろ行こうか」
「うん!」
一頻り齧り終えたシパの様子を見て、バーテルは娘にも促す。応じた少女と子犬は元気良く返事を返して駆け寄る。
「何処かに行く予定があったのか?」
「・・・いや、何時もなんだけど、天の導きと加護にお邪魔しようと思っていたんだよ」
「ああ、そうだったんすね!じゃあ、一緒に行きますか?今買い物の途中で立ち寄ったんスよ」
思わず寄り道していると言い掛けたトレイドだが飲み込んでいた。
「そうなのかい?じゃあ、何時もお世話になっているし、手伝おうかな」
「うん、手伝うよ!ガリードのお兄ちゃん!」
「んじゃ、頼むっスね!」
と、話が決まれば行動あるのみと席を立つ。エールに料金と美味しかった旨を伝えて皆は外へと繰り出していく。
途中、何度もガリードに噛み付くシパの姿を見て、鬱憤が薄れる感覚となったトレイドであった。
【4】
トレイドやバーテル、レイナの助力もあって、天の導きと加護への買い物は直ぐにも終え、四人で分配して運ぶ。
その途中でやはり噴水が備わった広場に立ち寄る。その日は珍しく人気が無く、噴き上げられ、散って舞い落ちる音が聞こえるほどに静まり返っていた。
この静寂に立ち止まり、レイナのような子供も居る為、小休憩する事が決まる。噴水からやや離れた位置に設けられたベンチへと腰掛けていく。
「いやぁ、助かったっス。バーテルさんやレイナちゃんのお陰で更に多く買う事が出来たっスよ」
「いやいや、何時もレイナがお世話になっているからね。これぐらいはしないとね」
ガリードが親子に礼を告げるのだが、其処に友人の名前が無いのはわざとだろう。それに当人は指摘せず、だが溜息交じりに空を眺めていた。友人と親子の会話を耳にしながら内面に抱く葛藤、とまではいかないが多少の迷いを巡らせていた。
しかし、最早決定事項であり、様々な心配、懸念を巡らせたとしても、尽力するだけだと思い直して視線を落とす。その何気ない動作が、偶然通り掛かった人物と目が合った。
「クルーエ、如何したんだ?その荷物は」
「トレイドさん」
通り掛かったのはクルーエであり、彼女では少し重そうに映る荷物を移る。気付き、近付けばそれが工具や鉄釘などの道具である事を知る。住む区画の建物に使うにしては多く。
「お、クルーエさん。クルーエさんも買い物に出てたんだな、奇遇だ」
「お早うございます、クルーエさん」
「お早う!クルーエのお姉ちゃん!」
続いて三人も挨拶を交わす。それに彼女が応じている間にトレイドがその荷物を確認、引き受けるように持つ。
「これは・・・もう準備しているのか?今朝に聞かされたばかりだぞ?」
「はい、決まったので先に準備を進めようと言う事で、丁度手が空いていましたので、手伝っていました」
そうして買い物の役を受けたのだろう。幾ら、操魔術を使えるとしても細腕で鉄道具を持つのは頂けないと自然と代わりに持っていた。
彼女の言葉、魔族達のその決定は早く戻りたいと言う気持ちの表れであろう。そう、例え、思い出したくない記憶が焼き付いていようと、それ以上の思い出が眠っている場所であり、隣人が眠る場所でもある。戻りたいと言うのは心情であろう。
「そうか・・・まぁ、一応ステインには話を通してはいる。当人は用事があってイデーアに出ているが、数日程で戻ってくる。その時に本格的に話を進める積もりだ」
「そうなんですね」
「多少は応援、手伝ってくれる者を出してくれるかも知れないが・・・期待は薄いだろうな。まだ、新しくギルドを作り直して日が浅い。人手は要る筈だからな」
「それは大丈夫です。元々、あの村も魔族達だけで造ったと聞いていますから」
人手が足らなくとも、例え断られたとしても戻る意思は彼女からも読み取れる。意思は固い事を再度理解し、重い表情で頷いていた。
「なぁ、そろそろ買ったもん持っていきたいんだけど、良いか?」
やや重くなってしまった会話をガリードが遮る。それに気持ちは削がれて彼に視線が向けられた。
「もしかしてなんか用事が出来たのか?」
「大した事ではないのですが・・・ガリードさん達は食料を買っていますが、戻る途中だったのですね」
少し紛らわし、四人で運んでいた食料を詰めた紙袋を指摘する。
「そうそう、今から天の導きと加護に戻る所だったんだよ。でも、用事が出来たんなら・・・」
「なら、私も手伝っても宜しいですか?」
「いや、まぁ、それは良いけど、クルーエさんに持たせるのはなぁ」
それは嬉しいのだが、既に荷物を持っている彼女に更に持たせるのは悪いと考える。けれど、彼女は明るいもの。
「大丈夫です、操魔術を使えますので。なんでしたら、皆さんの荷物も多少は軽くします」
「そっか、そう言やそうだったな。んじゃ、頼んでも良いかな?」
「はい」
その事に失念しており、思い出せば調子良く頼む。それを受けた彼女は快く引き受けていた。
「クルーエ、この阿呆に付き合う事は無いぞ?」
「いえ、大丈夫です」
何気なく友人を罵倒していたのだが、当人は言われ慣れてしまったのか反論はせず、笑っていた。
やや余計と言える時間を要したが無事に買い物を済ませ、一行は天の導きと加護に到着する。
アニエスと会い、バーテル達は挨拶を済ませて食材を指定の場所へ運ぶ。その後にバーテル親子は他の子供達に混じって遊びに繰り出す。それを横目に、ガリードは昼食の準備に取り掛かる。
「トレイド、クルーエさん」
用は済んだと、次に魔族の用事に取り掛かろうとする二人を呼び止める。振り返った先、せっせと調理するガリードの背が映る。
「此処に移ってから早々手伝えないかも知れないけど、もしもの時は遠慮なく言ってくれよ。力仕事とかさ」
トレイドから聞かされ、手伝いたい気持ちが強かったのだろう。その心遣いに二人は頬を緩めた。
「ありがとうございます。人手が必要となった時にはお願いします、ガリードさん」
「そっちも、俺で出来る事があったら遠慮なく言ってくれ」
厚意には厚意で返し、その場を後にする。子供達のまさに弾んだ声を背に、二人は今後の為の準備に取り掛かっていった。
後日、トレイドはステインと会い、例の件の相談を行った。その結果、快諾してくれた。それに追従する者達は今の仕事から外れ、代わりの者を充てる事も約束した。それは正式に決定していた。
感謝していると伝えた後、それの最終準備に取り掛かり、程無くしてセントガルドから出立していた。
それは今生の別れでなく、ただ離れた位置に移るだけ。それでも感慨深く、涙を浮かべる者も居て。トレイドもそれに少々当てられつつも、様々な思いが残る地へと向かう。必ず成功させ、危険を及ばせない心意気で手綱を握り、鞘に携えた剣の柄に触れていた。
本当の姿、紛れもない真実。それ等を目の当たりにした時、動揺しない人間など居ないだろう。それはトレイドとて同じであり、既に似たような経験を経た者でも同じように。これからも必要な者、分からなくとも決して喪って良い筈も無い。それでも代償のように喪われた。先の見えない世界、恩寵賜る母たる大地。失意に塗れ、挫折しそうになり、それでも立ち上がり、様々な葛藤、迷い、痛みを感じながらも人は歩む。それはトレイドでも、誰であっても同じ。
真実がどのように牙を剥くか分からない、どの様な形で裏切るのか分からない。だとしても進むしかない。そう、指し示すように皆は生きていくのだ。真実を突き付けられたとしても。
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