上 下
40 / 113
もう会えないと嘆き、それでも誰かと出会って

何気なく、それでも続く日々 後編

しおりを挟む
【4】

「ふぅん・・・」
 黄金色に輝き、揺るがない陽光を遮る場所。群れて立ち尽くす建造物ではなく、硬く厚く囲みくる洞穴でもなく、心も曇らせるどんよりとした雲でもない。薄い緑の葉と大小様々な枝を茂らせる密林地、薄暗き森林地帯。
 そのとある場所、恵みの村の異名を持つフェリスから離れ、森林地帯と草原地帯の境目からおよそ中間地点と推察出来る位置。その場所でガリードは背負う身の丈ほどある巨大な剣を振るっていた。
 若くとも、日々の鍛錬で鍛えた筋力とバランス性を活かし、太き刀身を唸らせて揺るがぬ一撃を繰り出していた。
 両断される灰色の体毛に包まれた身体を持つ、ローウス。獣の身体がいとも簡単に空中で分断され、血を散らして地面に落ちる。
 草木は血で濡れ、動かなくなった遺体は落ちて少し転がった。その後は動かず。
 動かぬ物体となったその上、何かが過ぎる。同じような形状のそれは攻撃を終えたガリードに襲い掛かった。しかし、牙が首に届く事は無く、首を掴まれて制されてしまった。
 攻撃に気付いたガリードは即座に片手で首を鷲掴んで動きを制す。掴まれた、少々若く小柄なローウスは苦しみにもがき、呻きながら四肢で抗う。けれど、最後の抵抗、小さな足掻きに過ぎず。
 生け捕りにした彼は少々不満そうにする。何十回と同じ魔物モンスターと戦った経験を有する。生傷を多く刻まれつつも数多くの屍を作り上げてきた。度重ねて戦闘を繰り返し、行動の全てを読み切って予測を立てられる程に。そうなれば姿を見るだけでも嫌気を覚え、嫌悪感が込み上げてこよう。しかし、今の彼はそんな事を気に掛けていない。
「・・・仕方ねぇ、これにするか」
 彼独自の基準に基づいて判断して諦めながら決定していた。
 大剣には血が伝う。それを振るって大方散らして背に携える。その手で腰に提げるウェストバッグに伸ばす。取り出すのは縄、やや使い古したそれを使い、まだ生きているそのローウスを縛り付ける。
「でも・・・貧相だな。たらふく美味いやつ食わせてやりてぇけど・・・まぁ、そんなに早く決めなくても良いか。後はこいつと・・・」
 逃れようともがくローウスの隣で、分断したもう一体へ向かうガリード。血や汚れの処理を行い、肩に提げる準備に取り掛かっていた。
 少し残念そうにする彼、狩りを行っているのには理由がある。今、彼はフェリスに滞在していた。同行者には天の加護と導きセイメル・クロウリアに所属する職員が一人。
 そして、狩る理由は料理を振る舞う為であり、子供達である。その動機は唐突に始まった。そう、彼の周到な準備からではなく、単なる思い付きから開始し、今に至っていた。

【5】

 数日前の事、子供達に遊ばれ、玩具とされていたガリードは何とか抜け出し、昼飯の構想を広げていた。主として肉料理、それからローウスを連想した。何度か食べさせた事があるものの、食費が掛かってしまうのが難点。
 ならば浮かんだのは狩れば良いと安直な答え。そして、どうせ食べさせるなら新鮮なものが良いと言う単純な思想。思い込めば、彼の脳内に縛られるように固定された。
 それから時間が過ぎ、趣向を変えて麺料理を振る舞った後、子供達と遊ばずに孤児達の保護者であり、天の加護と導きセイメル・クロウリアの責任者であるアニエスを探し出して切り出した。本当に突然に。
「フェリスに皆連れて行きましょう!」
 本当に唐突過ぎた。脈絡どころか、開口一番に切り出す。笑顔、自信に満ちたそれでも困惑させるには充分であった。
 彼の提案は偶然居合わせた他の職員も立ち止まり、唖然として彼を見つめる。子供達も居れば首を傾げていただろう。
「・・・い、いきなり、如何したのですか?」
 当然の疑問を投げるアニエス。知的で凛とした面持ちは困惑に満ち、二ッと笑うガリードの反応に益々困って。
「あいつらに一杯のローウスの肉食わせてやりてぇ、って思ったんスよ。んでも、普通に買おうと思ったらちょっと金が掛かっちまうから、狩った方が早いって思ったんス。だから、フェリスに行ったら新鮮な奴を狩れるし、気晴らしになると思って丁度良いと思ったんス。如何っスか?」
 そう自信に満ちた笑みで提案する。それにアニエスは難色を示す。居合わせた女性も同じように悩む。
「あんまり外に、セントガルドの外に連れて行かないっスよね?だから良いんじゃないっスか?フェリスって空気が美味いし、長閑っスから一回ぐらいは連れて行きたいんスよ。如何っスか?」
 自分でも良案が思い浮かんだと自己満足して彼は語る。それにアニエスは首を縦に振らなかった。近くの職員も同じく、賛成意見はない。
「大丈夫っス!俺、なかなか強いんスよ?頼りにしてくれても大丈夫っス!ローウスの群れはばったばったと薙ぎ倒して良くっスよ!」
 豪語すれど彼女は決して意見を受け入れる事は出来なかった。
「・・・嬉しい提案ですが、子供達を連れていく事は出来ません。言う事を聞かない子が居ますし、体力の少ない幼い子も居ます。貴方が幾ら強くても・・・絶対、ではありませんから。ですので、駄目です」
 偏に子供達の身の安全を心配した。例え、ガリードが万夫不当の武人であっても万が一、絶対など無いのだ。確かでないものに委ねるほどの度胸はアニエスにない。子供達の身を最優先し、危険を冒す事は出来なかった。
「そうっスか・・・それは残念っスね・・・」
 断られ、肩を落とすガリード。その姿にアニエスは申し訳なさそうな様子を示す。それも束の間、直後に別の提案が思い浮かんだのか、ガリードは気力を取り戻す。
「じゃあ!俺だけが行って取って来るっス!それなら、たらふく食わせてやれるっスよね!」
 子供達を危険に曝せないなら連れて行かず、ガリードだけが行けばいいの話。それに行き着いた彼はやる気に満ちて。
「それは、とても嬉しいのですが、良いのですか?ガリードさんは本業があるのでは?」
「大丈夫っス!この事はユウさんに言ってますから。これも人助けに当たる事で、子供の世話は大人のする事、当然って言ってたっスから!」
 上司の言葉を借りながらの台詞、本心も篭ったそれを口にする。それはアニエスの表情を綻ばせた。
「なら、俺も行っても良いか?」
 アニエスが何かを言い掛けた時、誰かが割り込んできた。気の強そうな口調の子供の声。振り返れば、子供が一人立っていた。丈は孤児よりも高いものの子供である事は変わりない。着込む衣服は白、修道服である。
 少女、いや少年であろうか。被った修道帽から白い頭髪が見え、強気な性格が宿る幼顔。その顔はラビスと同じ、全く同じである。双子であろうか。
 更に一つ、その背には物騒な物が背負われる。それは剣、小柄な体系、幅と丈に合致しそうな両刃の剣が背負われていたのだ。けれど、居合わせた者は指摘をしない。それが普通である事を指す。
「おう、良いぞ!」
「ラギア!いきなり何を言っているの!?駄目に決まってます!」
 聞いた二人は真逆の意見を出す。二人の責任者の発言を前にラギアと呼ばれた少年は不服そうに腕を組む。
「駄目って、ガリードは良いって言ってるぞ?」
「大丈夫っスよ!俺が一緒っス!危険になっても、俺が身体を張って守ってやるっスから!」
 アニエスの心配を打ち払うようにガリードは胸を張り、任せてくれと体現して豪語する。それにアニエスは困った様子を見せ、次にラギアを見た。不安要素を考えながらも、諦めたように溜息を吐いた。
「・・・分かりました。ガリードさん、ラギアを宜しくお願いします」
「任せて下さい!」
「ラギアも、くれぐれもガリードさんの迷惑を掛けないように!良く注意を聞いて行動しなさい!」
「分かっているよ、言われなくても」
 ガリードが胸を張っても、強気な反応を見せても、不安は尽きない。孤児より年上であってもやはり子供、心配しよう。それでも許可するのは少年自身が成長を望み、その意思を酌んだから。
「じゃ、レイホースとかの準備をしてくるっス!三日後ぐらいに沢山持ってくるんで!ラギアは入り口らへんで待っててくれ」
 楽しそうな様子で歩き出すガリードは、後ろで聞こえるアニエスの小言とラギアの嫌そうな声を耳にし、表情を綻ばせていた。

「と言う事でフェリスに行って来るっス!」
 準備をする前に、まず仔細をユウに報告に向かったガリード。仮にも人と人を繋ぐ架け橋ライラ・フィーダーに所属する身、報告は最低限しなければと。
「そう、分かったわ。それにしても楽しそうね」
「はい!あいつ等がどんな反応してくれんのか、今から楽しみっス!」
 ガリードの性格が表れる発言に、ユウは嬉しそうに表情を綻ばせる。
「それは良かった・・・あ!それなら、フェリスの支所にこれを届けてきて。丁度良かった」
 ふと思い出した用事、それを近くの小棚から取り出した小包と一緒にガリードに手渡す。
「これをフェリスの支所に持って行けば良いんスね?分かりました!」
 頼られて嬉しそうにする彼はウェストバッグに大事にしまう。
「そういや、トレイドの事は何か聞きました?」
「・・・聞かないわ、残念だけど」
「そうなんスね。まぁ、大丈夫でしょ。じゃ!行って来るっス!」
「気を付けてね。そのラギアと言う子、ちゃんと守ってあげてね」
 送られた言葉に答え、自信満々に笑みとぐっと握った拳を見せ、部屋を後にしていった。
 立ち去った姿を見送ったユウ、閉扉音が治まってもなお見つめるその眼差しは憂う思いに満ちる。小さく息を吐き、気を取り直して業務に取り掛かるのであった。

 そうして、遠出の為の準備を済ませ、ラギアと共に森林地帯、延いてはフェリスに向けて出発する。それまでの行路は長いもの。レイホースに乗って走らせても半日は掛かろうか。
 ガリードがレイホースを操り、その背にラギアを乗せる。少年を落馬させないように繰っている様で、彼は実に楽しそうに手綱を握っていた。
 長き行路、ガリードの口は止まらなかった。その多くが森林に入った際の注意事項とも言える点の説明。経験する者として偉い心構えだが、その教え方が四方八方に散らばるような言い方で分かり辛く、度々に少年を苛立たせていた。
 その道程は際立つような事柄は起きず、ガリードが一方的に楽しむ時間だけで過ぎていった。

【6】

 日を跨ぎ、森林地帯に到着した折、ガリードの成長が際立った。
「ラギア、一旦持ってるもん確認すんぞ!俺が守ってやるけど、一応な!」
「必要ないだろ?聖復術キュリアティを使えば傷なんて・・・」
「良いから、しろ!」
「わ、分かったよ」
 やや反抗的な少年を恫喝めいた言葉で命令する。その勢いに負けた少年は渋々と所持品を確認する。
 どんな状況に陥るか分からない。所持品を改め、僅かでも万全を期す為に記憶を新たにする。無理矢理にでもさせる事に意味がある。
「よし!んじゃ、目指すはフェリスだ!」
 そう張り切り、ラギアを後ろにしてレイホースに跨り直し、もう一度歩き出していく。小さな不安の面と余裕に見える強気な面の中の緊張が、蹄鉄の音に隠されて。
 設けられた道に沿って森林に踏み込む。ガリードには見慣れ、自然と気が引き締まる空間。まだ未知であるラギアには緊張を高める場所。その不安はガリードの底抜けた陽気さが誤魔化した。
「こっから先は本当ほんとに気を付けろよ!?魔物モンスターが出てくるからよ!無暗に動き回んなよ?俺が守れなくなるからな。俺が下手して戦う事になっても、倒そうとするなよ?俺がぶっ倒すからな」
五月蠅うるせぇ!子供扱いすんな!魔物モンスターぐらい・・・」
「俺からしたらガキだから言ってんだ!もし、傷させちまったら俺がアニエスさんに、そんでユウさんに怒られんだからよ!」
 反骨精神を出そうとした少年を、上回る気迫で黙らせる。例え、戦う意思が高かろうと戦闘経験の無い幼少。おいそれと戦闘に参加などさせられない。そして、万が一となれば二人の責任者に顔が合わせられないと気を張って。
 ガリードの発言にラギアは押し黙る。冗談の類ではなく、見えないものの真剣な面持ちと声色から察し、更なる緊張に囚われる。
「だから、俺の傍から離れず、勝手をしなきゃ良いんだ。全部俺に任せろ。今日は、俺の戦いを見るだけで良いんだ。俺は誰かの戦いを見て云々言えるぐらい強くはねぇからよ、代わりに戦闘の空気ってもんを感じりゃ良い」
 振り返り、今後の励みにしろと笑みを見せる。頼り甲斐を感じる男らしい笑み、強くはっきりとした発言は兄のような雰囲気を醸す。それにラギアは安心感を小さく胸に。
「まぁ、今はちょっと周辺に気を付けていりゃいい。そんで、フェリスに着く事を思ってたら良いんだ」
 そう告げて少し強めに手綱を振るう。その指示にレイホースは早足に切り替えて森の中を進む。強くなった振動から振り落とされないよう、ガリードの腰に回された腕の力は強くなった。
 頼りとされた事と同時にガリードの表情から陽気が消える。気を引き締め、神経を張り詰める。レイホースを繰りながら即座に行動に転じられるように。
 臨戦態勢に移った彼は常時、剣の柄を握り締めていた。戦える者が自分しか居ない事を肝に銘じ、魔物モンスターをいち早く感知出来るように意識を周囲に向ける。たった一つ、それでもその一つである少年の命を守る、それを念頭に置き、一時も気を抜かず。
 その重圧、今だ嘗て経験した事のない計り知れない重さを身に受ける。喉の奥が渇く責任を感じつつ彼はゆっくりと進ませていく。

 道を進み行けば、状況は変化する。けれど、それは危機的なものではなく、寧ろ好都合と言えた。そう、ローウスと遭遇を果たしたのだ。それは道行く先にのっそりと歩み出しており、偶然の遭遇であった。
 急襲されなかった事を喜びながら、ガリードは颯爽と降り立つ。
「動くなよ」
 そう冷静に言い残し、数体の群れに向かってガリードは歩み出していった。

 そう言った流れでガリードはローウスと戦い、見事仕留め、捕らえるに至っていた。
 処理を終え、相対する状態の獲物を肩に担いだ彼は歩き出そうとする。その寸前、立ち止まって提げた獲物を一旦置く。ほぼ同時に付近の茂みが音を立てた。
「おい、如何した・・・」
 ラギアが問いを投げるのだが、その理由は直ぐにも示された。
 低く小さく息を吐き捨て、背に手を伸ばすガリードの視界が、茂みから歩み出る獣を捉える。続いて四体、唸り声を上げながら道を塞ぐように立ち止まった。
 対面したガリードは一瞬嫌気を感じた。既に何十体と狩ったとは言えど、殺める事自体が好きな訳ではない。けれどそれは負けないと言う奢った考えに基づいて頻繁に命を奪いたくない気持ち。命を想う気持ちを抱く者だからこその思考と言える。だが、今の彼にそんな腑抜けた思考を展開出来る状況ではなかった。
 振り払うように剣を引き抜き、一斉に駆け出して接近するローウスの群れを迎え撃った。
 俊敏に駆け、先頭に位置するローウスが初手を繰り出す。武器たる牙、爪で引き裂かんと。だが、敵の目の前での不用心な跳躍は隙でしかなかった。
 一番の武器ながらも無防備な顎、瞬時に見極めたガリードは片手を放し、開かれる下顎を下方から掴み掛かる。強制的に咬合させ、歯の接触する音が響き渡った。
 飛び掛かってきた勢いを腕力だけで押し殺しつつ、続いて接近する他のローウスへ視線を向ける。並行して大きく踏み込み、大振りに腕を振るって叩き付けるように投げ付けた。
 予期せぬ出来事であり、ローウスは気付きながらも回避が間に合わず、激突した末に縺れ合ってしまう。その連鎖させて生じさせた大きな隙、ガリードは一寸たりとも見逃さずに更に踏み込んだ。
 自身の勢いを乗せながら大剣を振り被る。乱れも無い、綺麗な弧を描きながら、鉄塊を思わせる太く分厚い刀身を渾身の力で振るう。無骨な刃は縺れた獣の肉体を両断、骨を粉砕する。その威力は相当なもの、一秒も掛けずに両断、地面を少しばかり割いてから止まった。
 一撃で二つの命は終わる。辛うじて感知し、別方向へ飛び出した二体は僅かに血を浴びる。それを噛み締めるように牙を剥き出して左右に別れていく。その布陣は偶然にも敵を挟み撃ちにする形に。
「か、囲まれたぞ!?大丈夫なのか!?」
「気にすんな!!大丈夫だから、確り見ていろよ!!」
 ラギアの心配は威勢の良い声に掻き消される。良い姿を見せようと言う気持ちは少しばかりあるものの、心配に及ばせないと言う気概が強く表れていた。
 そんな彼が立てる予測通りに二体は動く。一旦距離を開けた後、同時に土を蹴り出した。その姿を一瞥して、ガリードは何と大剣を手放した。少し痛みが走る手から落とされた剣は悲しげな音を立てた。意図の読めない行為はラギアを大いに困惑させた。
 ハラハラとする視線が緊迫する状況、その一部始終を見つめる。わざと武器を放した彼に接近するローウス二体。一定の距離を詰め、後ろ足で大きく飛び上がる。息を飲み込まれ、目が見開かれた。
 手ぶらとなったガリードは直前に両腕を広げ、接近してきた二体のローウスの横顔に添えた。瞬間、手に血管が浮き出るほどの力が加わった。
「フンッ!!」
 凄まじい気迫の篭った力む声が滲み出す。直後に硬く重い痛ましい音が鳴り響いた。それは二体のローウスの頭部同士が接触して出されたものであり、その音の痛々しいたるや、頭蓋を打ち砕いたかのように。全力を篭めた形相、僅かに見える腕は肥大し、掴む手は引き裂きかねないほど。
 しかし、死には至らしめていない。だらりと全身の力は抜け落ち、ガリードの腕を支えに垂れ下がる。強引で力任せな手を合わせる行為は相当な衝撃を伴い、激痛を以て気絶させていた。
 気絶した二体の魔物モンスターの重みに気を緩めたガリードはスッと放す。地面に落ちた二体は動かず、完全に気は失われていた。
「さて、と・・・」
 新たにウェストバッグから取り出した縄で生きた二体を縛り上げるガリード。斬った別の二体は持って行こうとはしない。それ以上持っていくのは難しいと判断した為に。
「ちゃんと見てたな?ラギア」
「あ、ああ・・・」
「俺の戦い方だけど、魔物モンスターとの戦いは大体がこんなんだ。分かったか?」
「・・・ああ」
「そっか!よし」
 手応えがあったと、手早く縛り、担ぎ上げたガリードはとても満足気にする。
 片手でひょいと大剣を拾い上げ、背に携える姿を眺めるラギアは圧倒されていた。魔物モンスターの凶暴性より、ガリードの力だけの戦いぶりに。同時に難なく倒せる力量に感心し、評価を改めていた。
「ラギア、こっからは歩いてくれ。今捕まえたローウスを乗っけるからよ」
「わ、分かった」
 のっしのっしと戦利品を担ぐガリードに指示されて降りるラギア。せっせとレイホースの背に乗せる様子を眺めて少々物思いに耽っていた。それはまるで何かと話しするように。
 数分も掛けずにローウスを積み終えたガリードは一旦周囲を見渡す。周辺に他の魔物モンスターが居ない事を確認したのだろう、小さく口辺を上げると手綱を握って歩き出した。
「奥に行っているけど、如何するんだ?充分捕まえたんだよな?それなのに戻らないのか?」
 続く道に沿って歩き出す事に問いが投げられる。少年としては直ぐに帰る事には反対の様だ。
「そうだな、帰らずにフェリスに行くんだよ。其処で知ってる奴が宿屋をやってて、借りて二日ぐらい泊まる積もりだ。明日、もうちょっと狩って、んで明後日帰ろっかなって考えてんだ」
 何方にしても一度フェリスに向かわなければユウに頼まれた用事は達成出来ない。
「分かった」
 それの聞き分けは良く、ガリードの方針に了承していた。少しの心変わりがあるのか、もう少し狩りを知りたいのか。どちらにしても、二人は奥に向けて再び歩き出していった。

 その後、無事にフェリスに到着した二人。ラギアの感動もそこそこに宿屋へ向かう。宿泊する旨を伝えると、直訳して捕らえたローウス、その料理を宿泊代に寄越せと言われ、泣く泣く奪われてしまう。勿論、ラギアに反対されるも、明日群れを狩ると宣言して無理矢理納得させていた。
 後日、宣言通りにそれなりの群れと遭遇し、数体を生け捕りにし、残りを斬り伏せた。大量と喜ぶ隣、ラギアは悪態吐きつつも一安心していた。その日の夜、再び数体分奪われた事は言うまでもない。
 そして、次の日。支所に荷物を届け、成果と戻る旨を伝書鳥にて二通送った後に帰路に立つ。その道中、捕獲数が少なくなった事に気に掛けているとまたもや遭遇を果たす。追加で捕獲し、その憂いは消えていた。それ以降はトラブルもなく、無事にセントガルドに到着を果たしていた。
 それから程無くしてローウスの新鮮な肉を使った料理は振る舞われた。子供達には大好評であったと言う。そして、ちょくちょくお願いしますと頼まれ、返答に困っていたと言う。

【7】

 日々の時間は流れ、時刻は日暮れを迎えていた。空は薄く茜色に染まりつつあり、僅かな冷気が町中へ流れようとしていた。
 夜が訪れようとした時に寂しく感じるのは何処も同じであろうか。セントガルド城下町も例外ではない。暮れ行く町並みに篝火が灯されていく。赤く淡い光が小さな音と共に流動し、周囲を照らし出す。その光に当てられ、人々は家路に立ち、帰るべき場所に急ぐ。少しずつ慌しくなる城下町の一角に笑いが零されていた。
 噴水を特徴とする中央広場から分岐した公道の内の一つ。やや人波が少ない其処にとある二人が見える。歩く道の先、見た目こそ酷くとも頑丈で繁盛から掛け離れた静けさに包まれた建物が存在し、其処に向かっていた。
「そういう事かよ。だから、最近、見えねーと思ってたんだわ」
 やや低い若い男性の声は弾み、相手に対して納得の言葉を掛けていた。
「そうなんスよ。そうだ!今度フーさんも如何っスか?あの餓鬼共、ちょっと容赦ないっスけど、可愛げがあって、遊び甲斐もありますから」
「そうだな、時間があったら行ってみるか」
 会話の相手をするのはガリード。実に楽しそうな笑顔と弾む声で勧める。それに相手、フーは小さく思案する。彼もまた子供が好きなのだろうか。
 立て掛けられた篝火、建物から漏れる光等に照らされる彼等は実に楽しそうに帰路を歩む。
「てっきり、お前もトレイドと同じ様にどっかに連れてかれちまったもんだと思ったぜ?それか、ふらっと消えちまったのかとな」
「いやいや、そんな事しないっスよ!」
「冗談、冗談に決まっているわな・・・まぁ、トレイドが法と秩序メギルに連れてかれちまったって聞いた時は笑っちまったけどな」
「そうっスね!俺も予想外だったっスよ!」
 楽しそうに二人は笑う。話題は戻ってきて直ぐに連れていかれたトレイドに変わる。
「にしても、あいつ、まさか、魔族ヴァレスと関わってたなんてな。なんか吹っ切れたと思ったら、面倒な事してたんだな」
 楽し気な反応を前にガリードは少し表情を険しくする。それは魔族ヴァレスと言う単語に触れた為に。
「・・・フーさんは魔族ヴァレスの事、如何思ってんスか?」
 単刀直入に切り出した。それが吉と出るか凶と出るか、密かに考え抜いて尋ねた。心中、どんな風に考えているのか知りたくて、意表を衝くように。
魔族ヴァレス?・・・って、言われてもな・・・」
 問われ、真剣な話題と判断した彼は頭を掻きながら思考する。やや野性味の溢れる表情を引き締めるのだが、その面は困惑が見える。面倒や嫌悪感ではなく、ただ困った様子。
「・・・何か散々言われてるけど、別段、考えた事ねーわな」
「考えた事、無いんスか?」
 予想外な返答に首は傾げられた。その反応は隠す意思は感じられない。
「そもそもよ、俺は魔族ヴァレスに対する記憶、遺伝子記憶ジ・メルリアがねーんだわ。んでもって、会った事もねーから好きも嫌いもねーわな。聞きかじった情報で偏見はちょっとはあるけどよ、そんな事で存在否定するような真似をする訳ねーよ」
 相手を知らなければそもそも評価など出来ない。知らず、色んな情報からくる偏見を抱いても、その人を、全体を否定する事などあってはならない。その事を彼は語る。それで如何言った考えを知り、ガリードは安心を抱いた。
「良かったっス。フーさんが懐が広い人で」
「なんだよ、お前。俺が魔族ヴァレスを全否定するような奴だったら、如何する積もりだったんだ?」
「そん時はそん時っス!」
 もしそうであれば一触即発の空気になりかねなかった質問。それを笑って済ませられるのは物事を深く考えようとしない性格と相手がフーだったからだろう。
「そういや、あいつもそんな感じで法と秩序メギルとやり合ったそうなんスよ。んで、捕まったって、ユウさんが言ってたっス」
「・・・ああ、そう言えば言ってたな」
 フーもまたユウから多少は聞かされていた。誰かを庇った事、それが魔族ヴァレスであっても救おうとした事に、彼は険しい表情を和らげていた。多少評価が低い方向へ傾倒したのだが、その一件で見る目が少し変わって。
「あいつ、帰ってきた時、少し見た目が変わって・・・」
「あれ?」
 トレイドの変化に踏み込もうとした矢先だった。彼等の前に見知った人物が横切った為に言葉が止まり、思わず立ち止まっていた。
 黒く、僅かに煌く長髪を揺らし、朱色を基調として銀に輝く部分装甲する格好の女性。その表情は暗く、憂いを残して俯き加減に何処かに向けて歩く。その折に周囲を見渡す事はなかった。
 その女性は二人が良く知る人物であり、その表情を見た時、目的を推察して顔に影を落とした。
「・・・今日も、だな。行かねー日なんて、一日だってねー・・・つれー筈なのによ・・・」
「悲しい、っスね・・・」
 肯定の言葉が零れ落ちる。彼女の心情を思い、故人を思い出して気持ちはなお沈む。彼女を、その顔を見てしまえば思い出さずには居られない。忘れてしまっている訳ではなくとも、罪悪感に似た辛き思いが浮かぶ。
「・・・居なくなって、更に人と人を繋ぐ架け橋ラファーは静かになっちまった。まー、それは誰も関係ねーわな」
「そう、っスね・・・静かですよね・・・」
 静かになりつつある公道、行く先に存在する自分達が所属するギルドの施設を眺めて悲しげに呟かれる。
 気持ちから逃れるように視線を移せば、周囲は感情に感化されたように寂しく映った。静まりつつある、夜に落ち込みつつある町の風景は何時も以上に。
「・・・ちょっと、行く場所を思い出したんで、良くっスね。お疲れ様、っス!」
 ある方向を眺めていたガリードがそう切り出した。
「・・・そうか。まぁ、疲れねーうちに休めよ」
 切ない表情を見て、フーは心中を察したのか、詮索せず、同様の表情で了承していた。
 小さく会釈を行った後、ガリードは足跡を残して公道を走っていく。その行先は、先程ユウが通った方向と同じであった。

【8】
 
 茜色は更に濃くなった。影を伸ばす斜陽に照らされたその場所は人気が感じられない。その為か、空の大半を覆い尽すように聳えた黒き壁の主張は強くなって。
 遠く、それでも近くで響くような、満ち干の波の音が鳴り続ける。その音は聞く者の心情を揺さぶる。壁が邪魔となって波間すらも見えず、悲しみだけを増幅させた。
 セントガルド城下町から離れて位置する其処は墓地、死者を埋葬し、冥福を祈る場所。喜色で気軽に訪れられない場所。無論、怒りなどでも来れる訳もない。相応しいのは哀や悲。その色にひっそりと染められて。
 沈黙が保たれた其処は多くの墓標が建つ。亡くなった事を、もう居ない事を刻み込むように。
 多くの人が眠る。祖父祖母、父母、姉兄、弟妹等と言った血縁関係の人々。友人、戦友、幼馴染、級友などの何かしらの絆を持っていた者達。妻や夫、恋人等の契りを交わした、大切な存在達。人知れず亡くなった者や名や姿すら覚えられていない者も葬られている。喪った理由は数が知れない。病気、外傷、老衰、衰弱、事故、行方不明・・・様々だ、有り過ぎて数え切れなかった。
 残されてしまった人々の思想が入り混じり、望まずに去っていった者の鎮魂が望まれ、そう思わずには居られない。それ故か、どの時間帯で訪れたとしても墓標が並ぶその光景を見れば、誰もが知らぬ者であっても胸が締め付けられる、辛くなろう。それは、時間の経過による明暗の差でも涙を誘うほどに哀愁を纏おう。それが今の時間帯であった。
 背が低く設計された墓標達は斜陽を受け、長い影を地に残す。訪れた者達の影もまた伸び、地は暗くなるばかり。
 辺りに一層の静けさが包む。訪れた者はその静寂に融け込む。この場所で騒ぐ者は決して居らず、聞こえてくるのは穏やかな風に紛れて届くすすり泣く声のみ。
 墓標達は異形の文字が刻まれる。とある墓標には、墓標と同じく真新しい文字が刻まれており、こう読み取れた。
『此処に眠り付く者は、情け深く、寛大な心を持ち合わせていた青年。その剣を振るい、弦を振るわせて命を救う。皆に無償な手を差し伸べ続け、絶大な信頼を寄せられる。所属していたギルドでは高い地位を築き、その優しき人柄で誰からにも愛されていた。その心優しく頼もしき彼、心惜しくも生短く、この世を去り逝く。この場にて安らかに眠りに就き、皆を見守る。 レイン 本名、島楓しまかえで
 無機質なその文字から哀しみがひしひしと感じ取れる。その墓を見るだけで、彼を知る者は身を裂かれる思いに支配される、双眸が熱くなってしまう。
 その墓前で今まさに女性が涙を流す。腰に剣を提げ、朱の鎧で身を着飾って武装する。勇ましく、だからこそ喪った悲しみが強く映る。
 黒い長髪の彼女は其処で眠る彼と親しい仲であった。幼き頃、親同士が仲が良かった所為か、何時の間にか知り合っており、日常を共に生きてきた。性別の違いなど関係ない絆が、三人・・の間に存在していた。数少ない親友と言っても過言ではない。その彼を喪った悲しみは計り知れない。人生を振り返られる強い想いに、膝を着けて手を合わす。唇を開かす事もなく、黙したまま涙を流し続ける。さざなみたるそれが彼女の頬を濡らす。地面に落ち、僅かな染みとなっていく。もう、幾多落ちたであろうか、それを調べる事など無意味だ。
 彼が、レインが不遇を遂げて、もう一週間以上が過ぎてしまった。それでも、その悲しみはまだ拭い切れていない。既に済んでしまった事とは言え、一言で片付けられるものでは、忘れられるものでもない。それが長年の、幼馴染であれば尚更、心に深々と刻まれているに違いない。
 こうなってしまった事に彼女自身に非はなく、とある青年に責もない。だが、彼女は自分を責めずには居られなかった。あの時の光景を思い浮かべる彼女は、たらればと後悔の淵に沈んでいた。何度、思い切ろうとしても、気が付けば思い出してしまう。彼はそうする事を望んではいない筈。そう考えるだけでも自分を責めてしまい、溢れた涙は止め処なく流れた。
 彼女は比喩ではなく、毎日此処に足を運んでいた。何時も同じ時間に、水を満たした木桶と数輪の花束をその手に持って。花束を満たす花は、嘗て彼が好きだった花。紫色の小さな花弁を思わせるがく、目立つ白い花弁が開く。供花としては似つかわしくないそれが彼女の手に持たれる。花言葉は、変わらぬ心。彼が目に入れる度にそう呟き、密やかに楽しんでいた。彼女の記憶の中で繊細に残余しており、だからこそそれを毎回選んでいた。
 墓参り、方法は様々。彼女はまず供花を置いた後に墓標に水を掛け、全体を布で拭く。汚れと水気を拭き取り、刻まれた文字に因る凹みの中を丹念に拭いた。それから昨日の萎えた供花を、今日持ってきた花と入れ替えていた。終えると再び正面に移動し、しゃがみ込んでから手を合わす。小さく、静かに黙祷を行っていた。
 それだけで十分だと言うのに、彼女は毎日行っていた。それほど絆が深い事を意味していた。
 そうして、彼女は半時間近く黙祷を続けていた。彼との思い出を走馬灯のように思い出して。未だに別れを惜しみ、この事態を受け入れられずに、涙を伝わせていたのだ。傍からみれば未練がましいと思おうか。
 だが、共感出来る部分も少なからずある筈。親友とは別れたくないと言う、その悲痛なる思い。更に手を下したのが二人の友人、幼馴染だと言う事実が遣り切れず。
 暫く続けた冥福を願っての祈り、それは静かに終わる。音を立てずに両手から力が抜ける。頬を伝った涙を脱ぎ、木桶と萎れた花を手に取って立ち上がる。墓標を見つめる切なき眼差しはまだ潤んで。 
「明日も、来るから・・・」
 震える掠れて言い残し、引き摺るような歩幅で立ち去っていく。その後に風が寂しく吹き抜けた。その風が花弁の一つを舞い上げる。白く小さなそれは僅かに残った陽の明かりに照らされて小さな影を作り、宙を舞うそれと同時に緩やかに移動して何処かへ消えた。残ったのは、落ちた涙の跡と悲しみだけ。

 それから数分達、次の来訪者が見える。ユウではなく、別の誰か。青い短髪を揺らし、背に物騒な大剣を負い、一輪の花をその手にして暗い表情で佇む。そう、ガリードである。
 到着する前に彼は先客であるユウと擦れ違っていた。言葉は交わさず、横顔だけを眺め、会釈だけ見せていた。そうして亡き恩人が眠る墓前に立っていた。
 ゆっくりとしゃがむと手にする花、供花を新たに添える。その目は墓標や既に備えられた花を見る。それから硬く目を瞑った。その顔に後悔を浮かべ、ゆっくりと開く。再び、彼の名前を確認した時、笑顔を浮かべた。それは満面とは到底言えない、苦笑でしかないもの。
「レインさん、こないだ、あいつが、トレイドが帰ってきたんスよ。でも、直ぐにあの法と秩序メギルに捕まったんスよ。魔族ヴァレスと関わったって言う、変な理由で・・・まぁ、あいつの事ですから、もうそろそろ出てくると思うんスけどね」
 苦笑のまま語り掛ける。笑い声を出しても、悲しく、虚しそうに。目は泣きそうなほどに潤む。
「・・・皆、レインさんが居なくなって、元気がなくなってます。もう、居なくなったから、受け入れるしか、ないんでしょうけど、俺はもう一度会いたいっスよ。多分、皆、そうだと思うっスけど」
 言葉が繋がらない。伝えたい思いが纏まらない。浮かぶのは言葉よりも人々の姿、顔だ。ユウやフーやトレイド。彼等だけではなく、レインと関わった全員の表情が浮かんでいた。思い出すと目から涙が溢れ出す。
「何で、何で、レインさんが死ななきゃならなかったんだよ・・・!こんな、こんな!こんな、良い人が、優しい人が、必要な人が、死ななきゃならねぇんだよっ!ふざけんなよ、畜生・・・!!」
 決して忘れていない。だが、少しずつ胸の中で彼の存在が薄れていたのも事実。今、改めて此処に足を運び、刻々と残される文字と墓を眺めて事実を噛み締める。知らないまま、喪った事実を。喪失感が彼を貫き、悲しみが奥底から呼び起こされる。
 今、涙を流し、その目頭を押さえ、彼が喪われてしまった事への恨みを口にして、涙を伝わせた。

 時間を掛け、ガリードは気持ちを落ち着かせた。息を吐きながら立ち上がる。墓標を眺め、涙を拭う。
「・・・皆、直ぐにも元気になります。だから、その・・・見ててください。レインさん、俺、頑張るっス!!」
 少しだけ吹っ切れた表情で宣言した彼は踵を返し、力強い足取りで走り出す。振り向かず、墓地を立ち去っていった。その後方には、涙の跡を残して。忘れてはならない事実を、胸に刻み込んで。
 寂しく吹き続ける潮風を含む風が、夕暮れ時に染まりつつある墓地を撫で、消えていく。日々、ただ過ぎていく時間の中、細やかでも鎮魂を望んで。

 人は何時も思う。残されてしまった者達は亡き人の生前の思考を想像する。絆が大きければ大きいほど嘆きながらも必死に考えてしまう。けれど、一生掛かっても解く事が出来ない。それでも何とか理解しようと躍起になる。大事なのは、死を受け止め、逝ってしまった者を忘れず生き続けていく想い、勇気にも似た意志。彼女はまだ少し足りないだけ。そして、彼は踏み出そうとしている。その違いは確かではなく、曖昧でしかない。だが、何であれ、何時かは受け入れてしまうのだろう。それが『人』なのだから。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:2,159

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:13,461pt お気に入り:321

とりあえず離婚してもらっていいですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,638pt お気に入り:296

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,577pt お気に入り:29,405

さらば、愛しき夫よ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,030pt お気に入り:15

あなたの愛はいつだって真実

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:154,408pt お気に入り:2,604

魔法道具はじめました

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:428

私の人生は私のものです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:107,193pt お気に入り:4,159

処理中です...