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もう会えないと嘆き、それでも誰かと出会って

降り続く雨に濡れ、案じる足は彷徨って 後編

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【4】

此処こっから、か・・・」
 潜めて呟く。近付けば見えてくる扉。隔てていた筈のそれは脆く砕け、隣が微かに見える。その奥から、ギシギシと何かが軋む音が聞こえくる。不安を抱かせるそれに、ガリードは警戒を深める。
 不規則に、重なるように響くそれは生物が起こしているとしか思えず、彼は小さく息を飲む。
 原因の分からないそれに剣を構えながら音のする方へ距離を詰める。その音のみならず、別の音も聞き取るように神経を集中させて慎重に。
 少しずつ光から遠ざかる毎に音は次第に鮮明なものへと変わる。着実に距離は狭まり、同時に不意を衝かれて襲われかねない状況、少しずつ緊張に身体は強張っていく。
 余計な音を立てぬように隙間を潜って隣へ侵入する。その部屋に光は届かず、静かな闇に融かされる。少しずつ暗順応が適応する中で見渡すガリードは小さく息を吐く。
 音は近く、何かが潜んでいる事は間違いない。暗闇の中、得体の知れない何かの気配は恐怖の対象でしかない。それでも彼が接近するのは今の場を安全にする為、ではなく怖いものの見たさ、反面に僅かな期待を篭めて。それでも顔は緊迫して余裕などは無い。
「ッ!?」
 緊張故か、暗闇の中を見極めようとした所為であろう、何かに脛をぶつけてしまう。不意の激痛に思わず叫びたくなった彼は蹲って苦悶する。声を殺し、形相を歪めて我慢する。
 その内に痛みに慣れ、引いた為にぶつけた何かを確認する。視認し辛いそれは人よりもかなり大きく、長方形に模られる。答えを言ってしまえば、ベッドが部屋に無造作に放置されていた。
 隅に脚が取り付けられ、高さがある為に偶然にも脛をぶつけてしまった様。変哲もないベッドを睨み付けて怒りを露わにして彼は立ち上がる。
 次に周囲に意識を向けるのだが、視線は再び足元に定められる。其処から音が聞こえる為に。確認し、気付く。暗闇の中、ベッドの上には確かに何かが居ると。だが、ベッドに備えられた掛け布団か何かを被って正体が分からない。
 恐る恐るにそれへ手が伸びる。触れた感触は柔らかく、多少荒い生地の布。掛け布団である事は間違いなく、その端を握り、ゆっくりと動かす。柄を握る力を緩めず、明かされる正体に対して警戒は深まった。
 布を捲り、凝視する先には確かに何かが居る。輪郭を辛うじて捉えられる程度だが、確かに。それならば近付くだけ。警戒し、近付いていけばその正体が分かった。
「・・・人、か?」
 ある程度近付けば驚きと疑問が顔に浮かび、凝視する目に力が篭められる。
 布の中、ベッドの上に居たのは確かめるまでもなく、人。模した物体ではなく、明確に人間である。呼吸を行い、時折寝返りを打つ、確かに生きて。
「んだよ、驚かせやがって・・・」
 正体が分かれば緊張する必要などない。取り越し苦労と言わんばかりに脱力する。
「何時の間に居たんだ?俺が来た時には居なかった、よな?ベッドも端っこにあった筈だし・・・」
 記憶を辿り、相違点に頭を悩ます。また、捜索中に人気を感じなかった。気取らせないよう、息を潜め、此処に隠れたとは寝息を立てる姿から到底思えず、疑問は膨らむ。
「ま、別に良いか」
 安心すれば気を揉む必要も、あれこれ考える必要もない。ただ、誰かが此処に迷い込んで来ただけの事だと、楽観視して落ち着く。
 そう判断した彼は起こさぬように多少気を遣い、零れる光を頼りに部屋を後にしていく。ふと、此処で寝ている事情や何かしらの情報を聞きたい思いが生まれるも、起きて来た時に尋ねたら良いと決定し、隣へと戻っていった。

【5】

 暖かさが多少広がった居間に戻ってきたガリードは一直線に暖炉の前へ向かい、置いていたウェストバッグの前に腰を下ろす。
 温もりと明かりを受けてウェストバッグを探り、中から両手では収まらないぐらいの箱を取り出す。それを開ければ、幾つかの三角に掬んだ手料理が詰まっていた。
「さ、飯を食うか」
 今朝、朝食を作る序でに拵えたもの。密かに美味しさを探求する彼だが、この度は奇に衒う事も純粋に美味しさを高めようとせず、ただ空腹を満たす為のもの。兵站と言えようか。
 濡れてはいないが冷えたそれの一つを手に取る。選ぶまでもなく、手に取った丸みを帯びた三角のそれを齧り付こうと大口を開けた。
 けれど、口へ運ぶ手が止まる。ふと、隣、右隣から何かしらの気配を感じ取った。顔を向けると、見知らぬ女性が顔を伸ばしていた。あまりにも馴染み深く佇んでいた為、一瞬その違和感に気付けなかった。
「うおッ!?誰だよ、お前っ!?何してんだ!?何で俺の隣に居るぅっ!?」
 心臓が飛び出るほど驚くとはこの事か、絶叫に似た大声を響かせて飛び上がったガリード。即座に距離を取り、質問を浴びせ掛ける。驚愕の余りにおむすびを落としそうになり、情けない表情と姿になりながらも受け止めていた。
 そんな転げ回って過剰に反応したガリードには全く興味を示さない女性。ガリードと近い年齢であろう、彼女はやや細い瞳を一点に集中させていた。
 眠たそうな眼差し、小さな口を閉ざして佇む様は無口な雰囲気が見える。やや濡れた頭髪は茶色であり、耳をやや隠すほどの長さ。その特徴は頭頂の二か所が上に跳ねているように尖り、耳に見えなくもない。
 何処か、猫のような雰囲気を醸す彼女は驚きが治まっていく姿も気に留めず、ただただ一つを物欲しそうに見つめる。
「・・・なぁ?聞いているか?って、何見てんだよ?」
 冷静さを取り戻して再度問い掛けても目を小さく動かすだけの反応の薄さ。眺めていれば彼女の視線に気付き、目で追っていく。
 この折、ガリードは突然出現した彼女の出処に疑問が抱かなかった。しかし、単純な事、彼女は先程ベッドで眠っていた人と言うだけ。その事に気付かない、考えない彼は鈍感と言うより、あまり考えていないか。
 無言で佇む彼女の視線を辿れば、ガリードが手に握るおむすびへ行き着く。または、傍に置いていた木箱の中に納めた幾つかのおむすびへと。
 それを知り、顔を顰めておむすびと彼女を交互に見やる。熱烈な視線である事、無表情ながらも強烈な欲を感じ、察する。
「・・・もしかして、欲しいのか?」
 尋ねると彼女は反応する、コクリと小さく頷いた。続き、黙ったまま片手を突き出して寄越せと促す。余程の空腹なのか、それとも雨に因るものなのか、少し瞳が潤む。
 主張する腹の音を聞き、苦い顔でガリードは少し考える。だが、考える間に彼女はガリードの手からおむすびを抜き取っていく。
「あ、お前・・・まぁ、良いか・・・」
 勝手な行動に一瞬腹を立てる彼だが、深い溜息と共に諦めて了承も無しに食べ始める姿を眺める。
 小口とも言える量を含むのだがその勢いは凄い、まるでハムスターの如く。それでもちゃんと咀嚼して飲み下し、十秒も掛けずに食べ終えていた。
 食した余韻に浸らず、彼女は再び視線を落として木箱を、別のおむすびを見つめる。無言の圧力は強烈であり、食欲は遠慮がない。無言で手が伸ばされ、ガリードが慌てて掴んで阻止する。
「お、おい。俺の分まで食う気か?俺だって腹減ってんだぞ!?」
 抗議したのが、彼女は躊躇もなく別の手でひょいひょいとおむすびを強奪する。残されるのは一つのみ。 
「あ!おっ!」
 阻止の気持ちは虚しく、水を飲むようにおむすびは彼女の栄養となった。
 恨めしく睨み付けていた彼だが、諦めるしかないと深く長い溜息を吐き捨てて項垂れる。
「あ~あ・・・全く・・・」
 泣きそうな顔で惜しみつつ、最後を手に取る。初対面であり、承諾も無く、勝手を振る舞う図々しい彼女を恨めしく睨みながら一つ、二つと齧って飲み下していく。
 ここで漸くあれこれと考え始めるガリード。何処から湧いて出て来たのか、如何してこんなに遠慮がないのか、そもそも何で一人なのか、そう色々と巡らせる。だが、ただ黙って見つめてくる彼女に考える意欲が萎え、溜息を零すのみであった。
 彼女と比べ、明らかに遅く、満足も出来ないまま食し終えた彼は項垂れて少しの間固まっていた。
「・・・ありがとう」
 ふとした拍子に小さな声で感謝が告げられた。それに目を見開いて驚くガリード。散々無礼な働きを行った彼女を怪訝な面で睨む。けれど、彼女は真顔であり、悪びれも無い様子。それに怒る気持ちが収束していく。
「バクバク食っといて・・・まぁ、良いけどよ」
 彼女の雰囲気がそうさせるのか、不思議と怒気が失われ、珍しく寛容に許していた。
 それから会話も無く、黙って目の前で暖炉の灯りを見つめる。時折薪を投入して維持させながら身体を暖める。静々と時間は流れていった。

【6】

「・・・なぁ、何で此処に居るんだ?ーか、何時から居たんだ?」
 沈黙に耐え切れず、堰を切って彼は尋ねる。だが、彼女は答えようとはしない。少しの間返答を待っても、無く。
 納得の出来ない表情で眺めていれば彼女の身形が視界に入り、疑問は増す。
 その身はとてもみすぼらしい。深緑のつなぎを着ているのだが、損傷が激しく、所々素肌が見えている。それを全く気にせず、凍える様子もなく。
「・・・教えてくれても、良いだろ?」
「・・・そう言う貴方は、何で此処に居るの?」
 会話が続かないと嘆くように再度語り掛けると、その容姿に見合う、気怠げで少し低めの冷めた声で尋ね返される。
 逆に投げ返された事でガリードは一瞬言葉を失う。まるで図星を突かれたように、胸の内を探られているような気分に陥って。
「・・・まぁ、そうだな。ダチ、を探して、だな」
 少し迷ったものの、思い詰めた顔で話し始めていた。そうして、気持ちを少しでも紛らわせようとして。
「・・・この沼地地帯?で居なくなったらしいから、捜索してたんだ。そしたら此処を見付けてな?でも、探しても見付からねぇ上に夜になっててよ、仕方ねぇから此処で一晩過ごす為、此処に居るって訳」
 暖炉の中で燃える焚火を見つめてガリードは苦笑交じりに語る。見付けられない事への歯痒さが少し。
 語られる事情を、彼女は無表情のまま聞き受ける。その様子は料理への物足りなさを抱いている風に見えて。
「・・・何で、居なくなったの?」
「それは・・・」
 声は詰まり、躊躇う。顔を逸らして深く悩み込む。迷いと不安を顔に表し、ただその思いに囚われて。
 正直に告げた所で、栓のない事。無関係者を困らせるだけ、或いはそれで多少気持ちが晴れるのみ。益など、皆無に等しい。それほど難しく考えていなくとも、大まかにそう考えて。
 どうしようもない不安感にガリードは苦悶する。思いの中に、自身の不甲斐なさがあり、開放されたい淡い気持ちもあった。その為であろう、何時の間にか胸の内を打ち明けていた。下がっていく自分を、慰めて貰いたいように。
 落ち込んだ様子で真剣に話す彼を、彼女は変わらぬ様子で聞き受けていた。

「・・・へぇ」
 粗方の事情を聞いた彼女が発した第一声はそれ。自分から尋ねておきながら興味無さそうに呟いた。
 その態度に、ガリードは不快感を大いに出す。何となく予想出来ていた反応であったものの、やはり機嫌を損ねてしまった。
 けれど、素っ気ない態度や台詞は想定内であった。恩人を亡くしたと言われても、友人がその責任に耐えかねて姿を消したかもと告げられても、返答に困るのは誰しもだ。加えて重い話を聞かされても言葉を失おう、空気は重くなろう。
 暖炉の熱とは別に、冷めていくような空気の中、話さなければ良かったと彼は心中で後悔を抱いていた。
「・・・なんで貴方は、そんなに苦しそうにするの?」
 再び沈黙が訪れたと思いきや、彼女が藪から棒に問い掛けた。それにガリードはあからさまな動揺を示した。
「・・・山崎、って言う度に、自分を責めている様に見えたから、そう思ったのだけど?」
 それは本当に図星であった。その指摘に彼は真剣な面で見つめる。眠たそうな表情、しかし黒い瞳は確りとガリードを捉える。その揺るがない瞳が心中を見透かすような眼力を持つようで。
 視線を合わせていると隠したい気持ちが揺らぐ。逃げ切れないと察するような苦い表情は、ポツリポツリと話し始めると同時に後悔の念に歪まれていく。
「・・・俺は、あいつが苦しんでいたのを知ってんだ。今回の事も、出会う、前の事もよ・・・」
 胸の内、締め付けられる思いを耐えて語る。
「なのに、俺は何も出来なかった。独りになろうとした時も、俺は元気付ける事も出来なかった。独りで考えさせて、追い詰めさせちまったんだよ・・・」
 後悔に俯く。友人であると決めておきながら、肝心な時に役に立てない事への不甲斐なさに額を押さえ、身体を小さくする。
「でも、貴方は捜している。それは、何で?」
 その問いは素朴な疑問、ではなく、思いに訴え掛けるように。
「それは・・・ダチ、と思っているから・・・」
「なら、迷う必要はないんじゃない?」
 直ぐにも返された言葉にガリードは面を上げ、眠たげな顔を見つめる。
「それに、もし、貴方の事を迷惑に思っているなら、今迄一緒に居る必要はないと思うけど?」
 言い方は素っ気なさそうに力無く、事実や自身の感想を淡々と述べているよう。だからこそ、ちゃんと聞き止め、解釈してくれた事が分かった。
「・・・そう、思うか?」
「私は実際に会っていないから分からないけど、貴方は一緒に過ごしてきた。なら、貴方が一番分かると思うのだけど?」
 呟くような声で尋ねられ、ガリードは記憶を遡る。思い返す光景は一年ほどの思い出、それでも充分である事は少しずつ明るくなる面から見て取れた。
 そう、損得勘定を含めなければ、嫌悪する人物と関わり続ける必要性など無い。彼の性格ならはっきりと拒絶するだろう。思い返す彼は面倒がる姿や不機嫌な面を見せる。それを加味して思い返せば、日々を共に過ごし、一緒に笑ってくれる場面が多かった。
 人の手を借りての自問自答、それに決着を付けたところで、現実は全く異なるかも知れない。だが、自分なりに解釈し、納得するだけで身体は、心は軽くなって。
「・・・ありがとな、何かスッキリした!」
 胸に閊えていた何かが取れ、介抱された気分となった彼は爽快な面で感謝を告げる。明るさが差したその面は頼りない暖炉の火に照らされた中でも輝かしく。
「・・・そう。役に立ったなら良いわ」
 照れや威張らず、彼女は表情と態度を平静に保ったまま返す。謙虚や遠慮を感じさせない様子に、ガリードは思わず笑いを零す。
「・・・で、何で此処に居るんだ?」
 気分が晴れたところで関心を引き戻す。それは食事の代償を求めるように、驚かされた事の詫びの代わりを求めるように。
 彼女は依然と無表情のまま。ぼんやりとした面のままで独白を挟む。だが、それは躊躇っていると言うより、記憶を巡って答えを探っている様。間の瞬きする面が真剣さに欠けて。
「・・・さぁ?」
「さぁ!?」
 興味無げな返答にガリードはやや大袈裟に反応して怪訝な面を向ける。
「・・・分からない。雨が降っている場所で目が覚めた。何処に行って良いのか分からないから彷徨ってた。そしたら、此処を見付けた。夜になりそうだったから、この一軒家に入った。暖炉を見付けたら火を焚いて身体を温めていた・・・そしたら、眠たくなってきて、ベッドがあったから寝ていた」
 箇条書きのような説明、自身の体験を大まかに語ったのみ。それだけで多少は事情を把握出来るかも知れない。だが、彼は疑問符を浮かべて。
「・・・えっと、何処どっから来たとか、分かんねぇのか?何をしてたのか、ねぇのか?」
「・・・さぁ?」
 答える気が無いのか、それとも自身の事すらも興味が薄いのか。感情の乏しき表情で首を傾げられては、疑念は薄れて呆れが生まれる。
「・・・寝る」
 呆れる視線を浴びる彼女は全く気にしないままそう切り出して立ち上がる。
「寝るって、さっきまで寝てたのにか?」
「・・・そうだけど?」
 さも当然の事だと、寧ろ問う事自体が間違っていると言いたげな反応は辛辣に映る。それに苦笑しか出来ず。
「お、おう、そうか。そうか・・・じゃ、おやすみな・・・っと、俺はガリードって言うけど、何て言うんだ?」
 就寝の挨拶の際に気付く。そう言えば自己紹介も済ませていないと。
 遅い自己紹介を受けて彼女は少し立ち止まり、間を置いてから口を開いた。
「・・・ノラ」
 その声は不機嫌そうに聞こえ、ガリードは再び表情を苦くするだけであった。
「そうか、ノラか。じゃ、じっくり寝ろよ」
 陽気さを取り戻した声に送られ、彼女、ノラは無言で立ち去っていく。扉であった箇所を潜り、少し時間を置いて軋む音が聞こえた。ベッドを軋ませるそれを聞き、彼はもう一度暖炉へと視線を戻していく。
 薪が火に抱かれ、水分が弾かれる音が響く。その音色、力強く燃え盛り、揺れて消える輪郭の様を眺めて沈黙する。けれど、焚火の動向に集中しているのではなく、難しき顔で思い耽っていた。
「・・・なぁ、今何処に居んのか分かんねぇけど、生きてんだよな?生きてんだったら、また会えるんだよな?そうに決まっているよな。だったら、帰って来いよ・・・俺等の、皆の元によ。じゃなきゃ・・・殴ってやる」
 乾いた薪を火に焚べるガリードは不安をそのまま言葉に乗せる。やがて、彼も睡魔に襲われ、その場に横になり、眠りに就くのであった。

【7】

 沼地地帯に訪れる朝はひっそりと迎える。包み込むような雨音が目覚めを促すよう。
 朝陽を阻む閉所、嘗ての生活の跡を色濃く映し出す廃墟の一つ、もう既に鎮火した焚火を抱き込む暖炉の傍。壁の隙間から漏れ入る僅かな光で薄暗い部屋にて、ガリードはゆっくりと目を覚ました。
「・・・っ?うおっ!?」
 眠気眼を何度か瞬きを繰り返した後、驚いて思わず声を発する。視界を埋めたのは、覗き込む誰かの顔。それは誰でもない、ノラが無表情に覗き込んでいたのだ。
 驚き、飛び上がった彼は慌てて周囲を見渡して警戒する。直ぐに自身の状況を思い出し、昨夜知り合ったノラを思い出して安心を一つ。
「先に起きてたのかよ、驚かすなって」
 安心して息を零しながら傍のノラを眺める。感情なく、観察するような面を見て首を傾げる。
「・・・で、俺が起きるのを待ってたのか?」
「・・・そう」
「なんで?」
「・・・何か頂戴」
 目覚めを待っていたのは食事を請う為に。それに言葉が失われ、かなり苦い顔が浮かぶ。流石の彼も、図々しさに唖然とした。
「・・・ねぇよ。昨日のは一応で持ってた奴だからな。村に戻らねぇと、何にも食えねぇな」
「・・・そう」
 そう告げられ、態度は変わらずとも露骨と言えるほどの落胆を見せるノラ。それを見た彼は頭を少し掻き、周辺に散らかしていた服や大剣を装着して準備を終える。
「んじゃ、一回戻るか。腹減ってる状態で歩き回っても仕方ねぇしさ」
 眠気眼でぼんやりと見つめてくる彼女に促せども頷きもせず見つめるのみ。それを了承と取り、濡れそぼっている雨具を手渡して外へと出て行く。受け取った彼女はちゃんとそれを着て後に続いていった。

 雨天の外、強い雨も降る事無い光景の中を二人は進む。ガリードが先導して泥濘の地を突き進む。フラフラと彷徨い歩いていた彼だが方向感覚は優れており、間違える事無く沼地の村に向かって歩く。
 その間、会話を交わしていたのだが大した成果は得られなかった。
 先ずは山崎の行方、一切知らず。自身の行方、何時の間にか居た以外語らず。記憶喪失の類ではなく、自分語りは好まず。ただぼんやりと周辺を眺めて続くのみ。
 その掴み所のない様子にガリードは苦い顔を浮かべて直向に村に向けて進む。時折、彼女の様子を確認しながら。
 道中、魔物モンスターに遭遇する事は無かった。ただ単調に、小雨に打たれて肌寒く感じつつ進む。その内に村に到着する。

 復旧途中の濡れそぼった村、人の姿は疎らに。けれど、勤しむ人々は道具や材料を用いて道を行き交う。寂れた雰囲気が立ち込めていながらも、今は人気と人の意欲が雨水に隠し切れないほど溢れて。
「さて、取り敢えず宿にでも・・・」
 そう語り掛けながら振り返ったガリードの声は止まる。後ろに居た筈のノラが居なくなっていたのだ。それに驚き、周辺を見渡せども何処にも居らず。
「んだよ、いきなり現れて、んで、勝手に消えんのかよ」
 境界は無くとも、村の敷地内に踏み入るまでは直ぐ傍に居た。なのに、瞬く間に姿を暗ます。その自由奔放振りに呆れを抱かずには居られなかった。
「・・・まぁ、良いか」
 彼女にも何かしらの事情があり、彼女の都合がある。別段、文句を口にする事無く、直ぐにも切り替えて宿に直行していく。結局、雨具を返されぬままになっている事には気付けずに。

「いや、帰ってきてねぇな」
「そっか、ありがとうな、おやっさん」
 宿に戻り、一先ず濡れた身体と衣服等を拭いた後、店主に山崎の動向を尋ねたのだが予想通りの返答で終わる。それに小さくとも消沈せずには居られず。とは言え、落ち込んでも仕方がなく、直ぐにも切り替え、再び外へ繰り出していく。
 再度降雨に包まれた村の光景を前にし、頭を掻きながら見渡す。その脳裏にもう一度外の探索、若しくは村で情報を集める、その二つの選択肢を思い浮かべていた。
 思案しつつ、溝へ雨水を流し込む石畳の道へ歩み出す。その不用意な行為が誰かを危ぶめる。
「あっ!」
 突然目の前に現れたガリードに驚き、その誰かは声を上げる。立ち止まって衝突を避けようとしたのだが間に合わず。
 呆気無く二人は衝突する衝撃で転倒までいかなくとも、互いに体勢を崩してよろめく。拍子に誰かの手から荷物が滑り落ちてしまう。
「っ!?あ!悪ぃ!」
 不意の衝撃を受けたガリードは反射的に謝り、足元に散らばった荷物を拾い上げていく。
「い、いえ、お気に為さらず。私が拾いますので・・・」
「いやいや、俺がわりぃから」
 ローブで身を隠し、フードを深々と被って顔を隠した女性が慌てて荷物を拾う。その様子は焦り、所作は忙しなくされる。その彼女に詫びながらガリードは早急に拾っていく。
 地面に散らばった荷物は手提げ鞄に全て入りそうな小物ばかり。小道具や何かの入れ物、封筒と言ったもの。抱える鞄から零れた事を、拾う彼女が入れる様から理解して。
「ほいよ、悪か・・・」
 最後に封筒を手渡そうとしてその手が止まる。封筒の表面に書かれた文字、それがガリードと読み取れたから。瞬間、差出人が誰なのか気が気でなくなり、了解も得ずに裏返して確認する。書かれた文字、トレイドと読めた。それは山崎の、もう一つの名である事は既知している。
「なぁ!コレ、この差出人はトレイドで間違いないんだな!?」
「は、はい。そうですが・・・」
「あれか!?人と人を繋ぐ架け橋ライラ・フィーダーに所属しているガリードに渡すようにとか言われてねぇか!?」
「そ、その通りですが、もしかして貴方が?」
「そのガリードだよ。山崎の、トレイドのダチだよ!!」
 思わぬ朗報に、戸惑う彼女の前でガリードは喜びを大袈裟に露わにする。
「おお、そうかっ!あいつ生きてたんだな!なぁ!?あいつは何処に居る!?会って、一発ぶん殴ってやんねぇと気がすまねぇ!!」
 封筒を片手に、届けてくれた女性に掴み掛かって居場所を聞き出そうとする。その圧力に戸惑いが増す魔族ヴァレスの女性。
「あの、その・・・場所は教えられ、ません・・・すみません」
「ええ!?何でだよ、教えてくれたって・・・」
「おい!其処!何を騒いでいる!!」
 嬉しさで詰め寄ろうとした矢先、若い声に水を差されてしまう。それは明らかにガリード達を注意するもの。
 振り返ると、不思議そうに眺める通行人とは別に、明らかに接近してくる者が映った。一人、不機嫌そうな態度で。
「ん?あれは確か・・・」
 気付き、記憶と照合し、その者が法と秩序ルガー・デ・メギルの一員と判断する。
 ガリードは知らないが、その青年は数日前、現トレイドと少々争った乱暴な青年である。
「そいつは・・・魔族ヴァレスか!」
 ガリードが原因であろう騒ぎを聞き、駆け寄ってくる法と秩序ルガー・デ・メギルの青年。その姿を見て、ガリードに掴まれる彼女は酷く怯えた。声を漏らし、彼の影に隠れようとするほどに。足は自然と逃げるように。
 それを伝わる震動から気付いたガリード、近付いてくるやけに敵意を見せる青年も見て、朧気に察して笑顔を見せた。
「わざわざありがとうな!もう行くんだろ?気を付けろよ!」
 そう元気に語り掛けて肩をポンと叩く。それは示唆、もう行っても良いぞ、早く行けよ、と言う小さな厚意。それを察し、彼女から怯えが薄れた。
「あ、ありがとうございます」
 忙しなく小さな会釈を残して女性は走り出す。脇目もせず、ただその場から逃げる為に。
「待て!おい、止まれ!!」
 魔族ヴァレスだと確信し、青年もまた駆け出す。前に立ち塞がるガリードを押し退け、捕縛しようと意思を昂らせて。だが、その肩をガリードに捕まれて阻止されてしまい。容易に振り払えず、逆に危うく転びそうになって。
「・・・っ!何だ、お前!邪魔をするな!」
 体勢を維持した後、喧騒を捲し立てるのだがガリードは動じずに肩を掴んで動きを制する。
 足止めを振り払えない青年は苛立ちながら、遠ざかっていく影が建物の陰に消える場面を目にする。それに大きく舌打ちを行った。
 苛立ちは直ぐにガリードに向かれる。意図的に邪魔した事は明らか、意欲は彼に向けて力強く腕を叩き払った。
「お前!何で邪魔をする!!俺は法と秩序メギルの人間だぞ!」
「まぁまぁ、落ち着けって。何でそんなに慌ててんだ?怖い顔してよ」
 明らかな職務妨害だと憤慨する彼に対し、払われた腕を気にするガリードはやや飄々と問い掛ける。その態度が更に怒りを助長して。
「ふざけるな!何が目的で俺の邪魔をした!まさか、お前あいつと同じ魔族ヴァレスか!?」
「何だよ、魔族ヴァレスって。あの人が何かしたのか?別に悪い事はしてねぇだろ?」
魔族ヴァレスだからだ!魔族ヴァレスは危険だと言う事は、分かってんだろ!」
「・・・魔族ヴァレス魔族ヴァレス、ねぇ・・・」
 連呼されたその単語を咀嚼するように繰り返す。すると、秘めた記憶に触発したのだろう、知り得ない記憶や知識がぼんやりと脳内を掠めた。それは彼にも遺伝子記憶ジ・メルリアが発覚しつつある事を指す。
「・・・で?それが、何だってんだ?」
「はぁ!?」
 真剣な面持ちでそう口にする。過ぎったのは紛れもない魔族ヴァレスに対する偏見による感情。だが、それを抑え、現実に向き合っていた。
「あの人は何もわりぃ事、してねぇぞ?なのに、捕まえんのか?それって、おかしくねぇか?」
「不穏分子、危険分子である事はお前も知っているだろ!それが全てだ!その記憶がある筈だ!」
「んな事は関係ねぇだろ!!俺は、あの人が、魔族ヴァレスが何をしたって聞いてんだよ!!」
 問われる意図が分からないと青年は眉間に皺を寄せる。その顔にガリードも呼応するように険しくする。
「なんだよ、じゃあお前、見掛けで判断すんのか?あいつは盗みそうな面してるから逮捕、人殺しみてぇな目付きしているから逮捕って、すんのか!?」
「そんな訳がないだろ!!それはただの冤罪だ!」
「だったら、教えろよ!あの人が何をした、最近の事でも良い!何か悪い事をしたのか!?犯罪をしたって言うのか!!」
「それは・・・」
 怒号を受け、彼は思い返す。そう言った光景はただ一つとしてなかった。最近出くわした光景は、通行人の頭上で材木が不可解な動きで浮き上がり、誰も居ない場所で落下した場面。その近くで魔族ヴァレスを発見した事。
 思い返すのだがその記憶は再び悪しき方向に転がる。それは記憶に根差した印象が、聞かされた法と秩序ルガー・デ・メギルとしての責務がそうさせて。
魔族ヴァレスだから、人族ヒュトゥムだから、そんな事、する必要あんのか?魔族ヴァレスだから、捕まえるって、変だろ?そいつらの事、気持ちとか、無視かよ」
「・・・危険だからだ!放っていたらどうなるか分からないんだ!もう良い!お前はどの道、人族ヒュトゥムだ。罪云々は後で・・・」
 気持ちの整理が付かず、埒が明かないと追跡を試みようとした肩が再度掴まれる。痛みを感じる程のそれに足を止め、引き剥がそうとするが出来ず。痛みに怒りを再燃させ、睨み付けるとガリードの妙な表情に動きが止まる。
「なぁ、学校に行ってたか?此処に来ちまう前はよ」
「それが関係・・・」
「教えてくれよ」
 切ない表情で静かに憤る様子に気圧され、言葉を呑み込んで返答する。
「・・・学生だよ、高校生だ。それが、如何したんだよ!」
「俺も、高校生だ。何時も通り、言ってたなぁ・・・あの日」
「それが・・・」
「巻き込まれちまった後、俺と山崎は何とか生き延びた。でも、色んな人が、死んだ。魔物モンスターに殺されて、よ。他にも居たとも思う。でも、生き残ったのは、俺らぐらいだった」
 呟くように語られたそれに青年は押し黙る。彼もまた、当時の事を思い出したのだろう。その時は如何だったのか、惨状であった事は薄らと蒼褪め、苦しい表情から読める。
「お前もダチとか居たよな?家族だって居ただろ?・・・もし、知っている奴が魔族ヴァレスだったら、如何してたんだ?お前・・・」
「そ、それは・・・つ、捕ま・・・」
「お前の父さん母さん、好きな人が、そうだったら、お前は如何してたんだよ・・・!」
「っ!」
 詰まりそうな返答は堰き止められた。ガリードの迫力に、仮定でも有り得た状況に言葉を詰まらせていた。そのような場面を前にして、無情を徹する事は出来ないから。
「・・・あれ以降、俺は母さんとは会えてねぇ。でもな、もし、会えてて、俺が人族ヒュトゥム、母さんが魔族ヴァレスだとして、理不尽に母さんが迫害されたとしたら、俺は守る!例え、他の奴が敵になっちまっても!ぶちのめしてでも!!」
 力強い断言を受け、裂帛した気迫に押され、青年はただただ押し黙る。覚悟ではない、当たり前の思いを前に、負い目を感じて。
人族ヒュトゥムとか魔族ヴァレスとか、関係ねぇだろ!そいつは、そいつでしかねぇだろ!それは絶対に変わんねぇんだからよ!」
 力説すれば自然と力が入ろう。止める手には力が篭められ、掴む肩には痛みが生じていた筈。だが、青年は動じず、憤慨と純粋な想いを受け止める。それでも顔は逸れて。
 ふと、肩から手が放され、開放感に青年は振り返ってガリードと正対する。改めて見る悲痛な、悲しみに打ち拉がれた面に更に表情は曇って。
「・・・まぁ、その、なんだ。俺が言いてぇのは、同じ世界?国?で暮らしてたのに、除け者にする必要なんかねぇんじゃねぇの?って事。んで、何にも悪さなんてしてねぇ奴を捕まえんのはおかしくねぇか、って事だな」
 最も言いたかった事を告げると青年は煩悶し、独白を挟む。胸の内で葛藤が渦巻いていよう。法と秩序ルガー・デ・メギルの人間としての責務、けれどよくよく考えて当然に抱える筈の疑問と常識のズレ、それを噛み合わせようとして如何しても折り合いが着かず。
「・・・そう言っても、俺が法と秩序メギルの人間だ。魔族ヴァレスを捕まえるのは、仕事の一つだ。それに文句を言う、お前のような奴も捕まえるのが・・・」
「でも、おかしいだろ?悪さしてねぇのに捕まえんのは、如何考えてもよ?」
「だ、だけどな・・・」
 葛藤がはっきり見て取れる。それだけ、教えられた事と実際との相違が大きいのだろう。強気に、強引に意見を捻じ曲げようとしない事がその証左。
「じゃあ、内緒にしてたら良いんじゃねぇの?報告する事なんて無かった、でさ」
 安直に目を瞑る提案を述べる。それに青年は気分を害する。
「そんな簡単に言うがな・・・」
「簡単だろ?言わなきゃ良いだけだしよ。それに、お前は納得出来んのか?さっき冤罪とか言ったけど、これとかまるっきり冤罪だしよ」
 痛い所を指摘され、青年は困窮した。いや、それこそが決定的とも言えた。だからこそ言葉を詰まらせた。自分の信じてきた思想を覆させられる一言に激しく動揺した。
「・・・もう良い!さっさとどっかに行け!!」
 困り果てた青年は怒鳴り散らした。葛藤に整理が着けず、もやもやとした思いを吐き捨てるように追い出そうとする。
「おう!わりぃな!」
 その彼と異なり、受けたガリードは晴れやかな笑顔と弾んだ声を出して了承し、さっさと立ち去っていく。人を混乱させて置きながら身勝手なものか。それとも、彼の胸の内を察しての事か。恐らくは前者であろうか。
 複雑な面を俯かせる青年を背に、ガリードは踵を返して宿屋に戻っていく。この後、この一件が公になる事は無かった。

「・・・そうか。まぁ、生きてんなら、良いか」
 借りた部屋に戻って数分、封筒に納められていた手紙を読んだガリードは言葉を零す。
「じゃ、戻るか。報告しねぇ訳にはいかねぇしな」
 安堵、友人の安否を知った彼は漸く安心出来た。不安と心配が晴れた事に因り、戻る事を決めたその表情は実に爽やかに。

 雨は降り続く。穏やかに振り続いたそれは、人の感情を助長し、増幅させてしまう。そして、その者を惑わせてしまうだろう。だが、それを穏やかに宥めるのもその雨であろうか。傷を洗い流していくが如く、迷いを濯ぎ落としていく。何時しか雨は上がり、天を占めた雲間から陽の明かりと青々とした快晴を覗かせるのだ。
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