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もう会えないと嘆き、それでも誰かと出会って

続く苦悩と柵、暗中の襲撃 後編

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【9】

 トレイドが生きていた、それは魔族ヴァレス達にとって朗報に等しいものであった。士気は瞬く間に取り返され、抵抗する力も同じく。それ処か押し返すほどの勢いを見せた。
 それはオーク達にも微小ながらも影響を与え、攻める勢いも心成しか弱まらせた。
 延いては、戦況に変化を遂げさせた。先の咆哮が一番の原因であろう、侵略する手や抵抗する手の多くが止まり、一点に視線を注がせていた。その先にはトレイドとデゼェルオークの一騎打ち、激戦を広げる姿。
 多くの者が固唾を飲んで見守る。殆どの者が、その決着が今後を決定付けると察していた。

 苛む激痛の中、俊敏に飛び退いたトレイドは難なく着地する。背の傷、流血の感覚など思考から外れ、静かな心境の中で強烈な攻撃を回避していた。
 卒倒して、気絶してもおかしくない傷を負った彼の様は異様でしかないだろう。その動きは攻撃を受ける前以上に良く迅速で不調を思わせない。
 その事に対し、彼自身も僅かながら懸念を抱いていた。だが、今はデゼェルオークとの戦いを終わらせる事が先決、目の前のそれに対する戦略で埋め尽くしていった。
 猛攻を繰り出すデゼェルオークは多少の鈍りが感じられた。それは腹部の傷が原因。それでも、苦痛を思わせない形相で斧と棍棒を縦横無尽に振るう。その速度に衰えはなく、響かせる音も攻撃する度に大きく、鋭くなる。
 二人の戦いは再び拮抗状態に戻っていた。状況はほぼ変わらず、状態も僅差。それ故に、その天秤は少しずつ傾きが平衡になりつつある。傷を負って動きに支障を見せ始める相手に対し、満身創痍であろうと動きのキレを増すトレイド。その彼の執念、強靭な精神が為す業か。
 積雪を礫の如く乱雑に散らし、建物の残骸を更に残骸にする猛攻。夜間に響くその音は周囲から生物を逃げさせるほどに重く響き渡る物々しさ。だが、それに最大の力ではなく、多少弱く、そして遅く。それでも命を奪える攻撃である事には変わりない。
 周辺の空気を震わせる攻撃の合間を、僅かな時差を見定めてトレイドは飛び出す。その動きに合わせるまでもなく武器が振り下ろされる。重ねるように繰り返される攻撃は彼の身を掠める。しかし、負傷にも至らぬもの。構わず前進して懐に潜り込む。そのまま自重を支える太い足に接近する。
 片腕を剣の背に添え、体重を乗せ、接近する勢いも加えて攻撃を行う。厚き脂肪と太い筋骨を包む浅黒い青の肌はいとも簡単に断たれ、内部への侵入を許す。
 途中、少しの抵抗感を覚えながらも踏み込んで強引に振り抜く。抵抗感が無くなってよろめくのだが踏み止まる。赤血を噴出させる傷を横目に、追撃の為に反転する。
 脚を攻撃され、やや体勢を崩したデゼェルオークの横腹へ接近、剣を振るう。しかし、負傷を負うトレイドの体勢も崩れ、振り切った純黒の刀身は鋒を掠った程度であった。
「ッ!」
 振り切る寸前のトレイドは飛び退く。崩れた体勢、その眼前に巨塊が振り下ろされた。風圧と飛散する雪に怯む。
 反撃の一撃、振り下ろされた一撃は棍棒によるもの。だが、振り下ろされたそれは地面をへこませる威力を含まず、地面に到達しただけに過ぎなかった。それは単純に敵を倒す為の一撃ではなく、牽制であったと回避したトレイドは理解する。気付くには一歩遅く。
 束の間、巨体が大きく撓り、力んで膨らんだ巨腕が巨大な斧を振るう。大よそ武器に思えぬ巨大さ、斧のみならず腕さえも一体化した武器の如く。断つのでなく、最早それも粉砕する為のもの。
 刃毀れの激しい、分厚き刃は空を斬り刻みながら音を震わす。狙いは大まかにトレイド、到達点は着地間際の胴体付近。
 目前にする彼の思考を早めるものの、取る選択肢は一つしかない。回避が間に合わなければ、手段は守りのみ。接近する塊から守る為、剣を縦に構えて両手で固定する。直後、両腕に強烈な衝撃が襲い掛かった。
「ぐっ!!」
 閃光が散った。周囲を一瞬眩ませるほどのそれは刃同士の接触による火花。驚異的な威力である事の証明であり、デゼェルオークの膂力の恐ろしさが語られた。
 瞬きの一瞬で着地、無理矢理に飛び退いた彼の腕は一瞬にして押し負ける。デゼェルオークの膂力には敵わず、黒い刀身はトレイドの身に押し付けられる。そのまま力に任せて振り抜かれた。
 大きく飛び上がった彼の身は山なりの軌道を描き、地面へ落下する。姿勢は保っていたのだが着地がままならず、勢いに負けて転倒してしまう。その付近に建造物等は無く、暫く無残に転がり、勢いが無くなって突っ伏す。
 振り抜いたデゼェルオーク、体勢を戻すのだが追撃に出る事は無かった。度重なる負傷が行動を阻害した様子。その目が、ゆっくりと立ち上がるトレイドを捉える。
 彼に新たな負傷、目立ったそれは見受けられなかった。代わりに胸甲は胸部や腹部を圧迫しかねないほどに凹む。胸甲が押し負ける剣を留めるストッパーになり、偏に胸甲のお陰で首が繋がっていると言えた。
 必然的に距離を取った形となり、確認したトレイドは全身の打ち身に顔を歪めながら自身も再確認する。正確には、全身に渡る負傷の位置を、感覚で探るだけに過ぎず。
 途端に意識が遠退いた。力が抜け、膝を負ったトレイドだが何とか意識を留まらせて呼吸を繰り返す。蓄積したダメージが均衡を崩しそうになり、それを執念で踏み止まらせていた。喪わせまいと、思考を埋めて。
 それでも、彼の身から力が抜けつつある。執念で踏み止まる彼でも限界はある。命を削ってでも立っている等しい状態、気力が僅かでも途切れた瞬間、その場で昏倒しよう。
 食い縛り、途切れそうな意識下で立とうと剣を支えにする。その最中の目が、ゆっくりと接近してくるデゼェルオークを捉える。
 まさに死に物狂いと言える姿を前に、負傷した足を引き摺るように進まれる。その面は尚も憎しみ等の感情はない。多くの戦いを経験する身、ただ静かに倒す事を考えて進む。それとは別に、何が何でも立ち塞がろうとするトレイドに敬服の念すらも抱くようにも見えた。
 物静かに、しかし戦闘意欲が漲る姿を前に、深く長く、それでも静かに息を吐いてトレイドは立ち上がる。ふら付きながらも立ち、剣を引き抜く。支えを失った身体は小さく揺れる。
 流血も激しく、立っている事もままならないと言う印象を受ける彼。時間を掛けて身体を固定させ、意識を奮起させて前を見据える。その顔から血の気が引き、色は悪く。妙な汗も伝い、絶え絶えの息を繰り返して。
 浅黒い青色の巨体が動き、矮躯の人間は静かに立つ。距離は少しずつ狭まり、互いの面持ちが凝視するまでもなく見える位置まで近付く。歪んだ表情はそこに無く、漲らせる覇気、戦意を物語る面が映し鏡のように向き合う。やがて、デゼェルオークの武器が届く位置まで、二人の距離は縮まった。
 その瞬間、デゼェルオークの目が見開き、力強く踏み出しながら棍棒を振り上げる。的確に狙いを定め、凶悪に形相を歪める。最大限の力を篭められた豪腕は大きく撓り、全身全霊を掛けたであろう一撃が繰り出された。
「ガアアアアアッ!!」
 無心に叫ぶ、咆哮を響かせたトレイド。視界を埋め尽くしかねない凶器を前に、一瞬たりとも怯まず、純黒の剣を振るった。逆袈裟、地下強く踏み出して重心を固定、腰を捻りながら力を腕に伝達させる。握り込む両腕を遮二無二に振り上げる。
 それは無謀でしかなかった。互いの武器は交差する。けれど、膂力の差など重々、再三に言い聞かされるまでもなく承知していただろう。ならば、トレイドの敗北など目に浮かぶ筈。だが、現実は異なる。それもまた執念が為すものか、或いは。
 交差した直後、周囲の大気が震え立った。音以上に、互いの裂帛した気迫の衝突がそれを生み、周囲で立ち尽くす者達の表情を違えさせた。
 その身に刻まれたるは無数の功績。歴戦の中、様々な攻撃をその身で防いで弾き、硬く強大なその身で敵を薙ぎ払い、打ち砕き、叩き潰していた。染み込んだ血液の量など量れぬほどに。しかし、いかに大きく、いかに硬くとも刻まれた功績は他の意味を持たぬ、に過ぎない。更に外面に刻まれた傷以上に内面にも重く深く響いていた。乱暴に扱われ、乱雑に酷使し続けてきた歪みに限界が達したのか。人はこの事を奇跡とも呼ぶのだろう。
 巨大な棍棒、その根元付近が圧し折れていた。際に響いた音が明白に物語る。先端は小さな弧を描き、行き場を失って積雪の地に落下する。何度か跳ねた後、他の残骸と同じように沈黙した。
 己の感触、音から現状を思い知り、唖然としてしまうデゼェルオーク。優勢である状況、体格の差は確固たる勝利を齎していたと言っても過言では無い。トレイドに負けぬ気迫を以って対峙していた筈。ならば、この結果は僅かな天秤の傾きとでも言うのか。
 それを確認するまでもなく、トレイドは動き出していた。迷いなくデゼェルオークへと、やや地面を滑っても力強く踏み出す。利き腕に駆け抜ける激痛を無視して。
 彼は満身創痍を通り越し、瀕死と言える状態。ほぼ意識がないと言っても過言では無い。そんな彼を突き動かすのは護りたいと思う執念じみた確固たる決意、自身を後にした犠牲精神同然の覚悟、それだけであった。常人ならざる意思。常人ならば決して至らぬその精神は驚愕に値した。

【10】

 少し遅れ、我に戻ったデゼェルオークは眼下の彼に向け、急いで斧を振るって迎撃に移る。力のまま振り下ろして叩き砕こうとして。
 しかし、彼は巻き込まれなかった。一歩遅く、降り積もった雪と地の一部を叩き割ったとしても、当てていなければそれは意味のない行為。虚しく、彼の進入を許していた。
 流血する腹部の傷を目指して踏み込み、渾身の力と自重を乗せて剣を突き出す。雪で踏み込み難く、度重なる負傷によって身体は力は出し辛く。意識も霞む中、それでも渾身の力を絞り出して剣を突き出す。
 黒き刀身は防具に当たらず、傷口へ到達、容易に沈み込んだ。体勢を崩してしまう程に柔らかく、微かに異物を断つ感触が伝わり、硬い何かに停められる。骨であろうか。
 トレイドの動きに傷は抉れ、怖気をそそる気味悪い音を立てて血は噴出する。血は攻撃する彼を赤く汚す。
 先の咆哮以上の絶叫を響かせてデゼェルオークは暴れ出す。痛みに悶え、攻撃するトレイドを跳ね除けようと。それに襲われぬうちに彼は次に移る。
 噛み締め、手の平が痛くなるほど柄を握って意識を留めつつ、両脚に力を入れて踏み込む。身体を捻り、両腕を力の限りに振り抜いた。
 黒き剣の鋭利な刀身は鮮血の海に沈む器官を傷付け、切り裂き、引き千切る。出血の量を増加させ、更なる苦痛を与えた。
 鋭き切断音を響かせて振り抜いた彼の傍、新たな切断面から多量の血が噴き出す。それは致命傷であると見て取れる量であった。
 振り抜かれた剣先に鮮血が飛沫、噴出する流血は周囲を赤く汚す。純白の雪が血で淀み、汚されていく光景は気分を悪くさせるには易く。
 返り血を浴びるトレイドは支えを失ったように、糸が切れた人形のように顔から倒れ込む。血の温もり、雪の冷たさに一切の反応なく、受け身も取れなかったと言うのに痛がる素振りも無い。それでも剣を放さなかったけれど、次の行動は出来ず。
 彼はもう限界であった。戦意を繋ぎ止めていた執念は肉体の限界には勝てず、先の一撃が残余していた体力を使い切った。使い果たし、抗えぬまま意識を失ってしまったのだ。途切れる間際も、まだ戦う、守る事を望みながらも。
 死力を尽くし、血に伏した彼の傍、多大な負傷を受けたデゼェルオークは荒い呼吸を繰り返す。止まる事を知らぬ流血を眺め、巨大な手で傷口を塞ぐ。だが、流れを止められず、小さく歪めた面は諦めの色が見えた。少しずつその巨体から力が抜けて。
 血に塗れていくデゼェルオークは足元で気絶したトレイドを眺める。際の面は悲しげでも、淡く哀願するものでも、ましては憤怒にも塗り潰されていない。酷く爽やかな、満足気な表情を浮かべていた。
 一瞥した後、振り返って数歩分歩き出す。衰えを全く見せない足取りで足跡を刻み、周辺で固唾を飲んで眺めていたオーク達を見渡す。その面は長たるものであった。
『グオオオオオオオォォォォッ!!』
 大きく息を吸い、響かせるのは号令の如き叫び。野太いそれは身体の芯を震わせる声量であり、余さず部下の耳に届かせた。
 その後、険しき形相となり、片手にする斧を天高く掲げた。肩から腕に掛けて筋肉が大きく隆起する。ギリギリと音を出すほど握力を篭めて。
 一息を置き、瞬きの間に腕が振り下ろされた。凄まじき速度、腕力を篭められたそれはまさに地を震撼させる一撃を放った。掘削音は爆発音に似て、刃の半分以上が地面に突き刺さっていた。その一撃は驚愕し、息を飲まずには居られない。腰を抜かした者も居た程に。
 次は無かった。全身全霊を篭めたと言える一撃、それは抱く矜持を誇示する為にか、自身の存在を残す為にか。振るった後、静止していた巨体はゆっくりと傾き、地面に倒れ込んだ。
 広がる血溜まりと解けた水の中、浅黒い青の巨人は突っ伏して動かなくなる。流血が致死量を超えたのか、先の一撃が命に達するものだったのか。なんにせよ、デゼェルオークは強烈な一撃を行い、絶命に到った。
 最期に、道連れにしようとせず、存在証明に固執する姿勢に戦士としての誇りが見受けられた。
 オーク達を率いる首領が討たれた事に魔族ヴァレスの者達は喜びに包まれた。恐るべき存在が討たれた、一番の脅威が払われた事に歓喜しよう。だが、喜びも束の間、直ぐにも更なる混乱を危惧した。それは統率の崩壊である。
 指揮者を討たれ、我先に逃げ出してくれるならば、それは最上。だが、首領に心酔していれば敵討ちに、後釜に据えたいと思うならば次の挑戦者に、何も考えずに暴れ出す事も考えられた。そして、それを抑制する戦力が無く、最早頼みの綱とも言えるトレイドがもう動かない。絶望の色は濃く。
 しかし、不安に駆られて身構える皆の異なる光景を目の当たりにした。
 オーク達は構えていた武器を降ろし、戦意は消沈していった。もう戦う意思は感じられず、激闘を見守っていた目を閉ざす、小さく頭を下げる、と言った反応を各々に示した。
 二言三言、人語ではない言葉を口にする。それは首領であったデゼェルオークに想いの全てを表現していたのか。小さく示す所作のどれもが悪い印象を持たなかった。悪しき表情にも見えず、激闘の賞賛、今迄の指示に対する感謝、尊敬と憧憬の念を示していたのか。
 数分、まるで別れの儀式のように行った後、オーク達は歩き出した。何と、来た道を引き返し始めたのだ。それに驚くしかなく、魔族ヴァレス達はただ困惑して見送るしかなく。
 あの咆哮は或いは最期の命令だったのだろう。想像出来るのは撤退させる、敗北を受け入れる言葉だったのか。それを知る事は出来ず、その光景に憶測を巡らせるしかなかった。
 何かの企てがあるのかと、目を逸らせない魔族ヴァレスその不安を知らず、オーク達は他に見向きもせず、その場所を離れていく。騙し討ちの概念も無く、群れは首領と同胞の亡骸を置き去りにして撤退していった。
 オークの群れが完全に暗がりに消えるまで警戒は解けず、音も聞こえなくなった事で初めて緊張の糸は切れる。
 途端に歓声が上がった。全滅必死と言えた状況を生き抜き、込み上げる感情は極める事間違いなく。生き残った事を喜んで抱き合う者、呆然と立ち尽くす者、まだ心配の抜けない者も居て。
 けれど、早くに冷静になる。村は悲惨な状態、建物の多くは破壊され、暖炉や台所の火によって火災が起きている。負傷者も多数、喜んでばかりでは居られなかった。
 直ぐにも状況確認や負傷者の手当に奔走する。折角助かった命、それを無暗に喪わせまいとして。

 戦闘が終わり、崩れ落ちたトレイドの元に人影が一つ、ゆっくりと近付く。その者はクルーエ、一番近くで彼の身を案じ続け、最初に彼を助けようとした一人。
 その彼女自身も人を案じる身ではない。意識は朦朧とし、足取りも覚束ない。それは操魔術ヴァーテアスを使い過ぎた影響も然る事ながら、肩付近に負傷を負っている為に。
 トレイドに助けられたとは言え、本当にギリギリだったのだ。攻撃の殆どをトレイドが庇ったのだが、肩付近には刃が届いており、その傷から流血が止め処なく流れていた。
 その状態でも彼女はトレイドを助けようと動く。助けられた、命を賭けた彼を助けたい一心で。だが、懸命な思いも虚しく、傍に着いたと同時に意識を失ってしまう。膝から折れ落ち、トレイドの上に覆い被さるように重なった。
 誰かが二人に気付き、駆け寄ってくる。クルーエを、そしてトレイドを案じる言葉を交えて。数人が駆け付け、二人を安全な場所に、負傷を治す為に運び出していく。もう其処に人族ヒュトゥム魔族ヴァレスなど関係なく。
 この時、とある偶然がトレイドを変貌させる原因となった。いや、それは前々から起きており、それを決定付けたと言えようか。赤い交わりの意味を知る者は少なく、気付いたのは数名だけ。
 そんな事は知らず、気絶した彼の面は少しだけ表情は明るくされる。誰かを救えたと言う充実感であろうか。

 天候は人々の営み、問題など知ろうともせず、時間の流れるままに姿を変えていく。夜は更け、次第に明けていけば一つ二つと雪が振り始める。やがて、雪化粧に新たな色を施していく。

【11】

 ぼんやりとした意識の中、トレイドは目を覚ます。ゆっくりと瞼を開き、見慣れ始めた色が、茶色の天井を視界に映し込む。
 身を包む温もりと柔らかい肌触り、寝かされている事から似たような状況を経験した事をぼんやりと思い出す。
「俺は、確か・・・ッ!」
 そう呟き、身体を起こそうとした瞬間、全身に激痛が発し、それに苦しみ悶えた。頭から抜け落ちていた負傷に再び倒れ込み、痛がる動きで更に苦しんで。
「起きたのか。だが、早々に動こうとするとは、静かにしていれば良いものを」
 傍で老いた声が聞こえ、立ち上がって近寄る音が一つずつ。その者はトレイドの意向を酌み、上体を起こそうとする動きに手を貸す。
 激痛に耐え、その力みで乱れた呼吸を整える最中に傍の人物を見る。ローブを身に包み、威厳を強調するような髭を蓄えた老人、この村の村長。その面は今迄の敵意を示す険しさはなく、少し柔らかく。
「はぁ、はぁ・・・村長?此処は?・・・俺は、如何なって?」
 まだ記憶が定まらないトレイドは尋ねながら周囲を見渡す。今居る場所は村長宅であると、見慣れ始めた家具やその配置、雰囲気と村長の存在がその判断材料となった。
「お主はデゼェルオークと相打ちになるように気絶した。それから・・・」
「・・・!あ、あれからどうなったんだ!ッ!!」
 教えられている途中で怒涛のように記憶が蘇った。朧な意識下の中でのそれも、気絶する瞬間でさえも。
 その為に気持ちは一瞬にして昂り、立ち上がるように近寄ろうとした。そうすれば全身に激痛は駆け巡る。失念したそれに襲われ、蹲りそうになりながらも耐えて肩に掴み掛かった。
「あの後、村は如何なった!?あのオーク達は如何なったんだ!?それに皆、戦っていた者や避難していた者の安否は!?無事なのかっ!?如何なんだッ!!」
「お、落ち着け!説明の腰を折るな!急いても仕方なかろう!」
 自身を苦しめる痛みすらも押し退ける勢いに村長はたじろぐ。押され気味ながらも声を少々荒げて言い聞かせ、先ずは落ち着かせようとする。その言葉に少々鼻息を荒くするトレイドは姿勢を戻し、忘れていた痛みに苦しむ。
 解放された村長はやれやれと息を吐きながら乱れたローブを整える。
「全く、あの時と同じような反応をしおってからに。今さっきまで眠っていた事、儂の様子から多少は考えられるだろう」
 その呟きでトレイドは漸く冷静さを取り戻した。憂いが消え去り、安堵に溜息を大きく吐いていた。
 村長の言い分は尤もであった。でなければ、ゆっくりとベッドで寝ている訳がなく、村長も悠長に構えていないだろう。ともすれば、二人共、命を失ってもおかしくない状況だったのだ。そうなっていない事が、何よりの証明か。
「改めて・・・儂はこの村の長をしているサイザだ。お主のお陰で、この村は助かった。代表者として、礼を言う」
 名乗り、深々と頭が下げられた。教えなかった名前を、改めて名乗る。それは信頼を寄せている証であり、素直に感謝を述べるのは敬服している証でもあった。
「・・・俺は、あまり役に立てていないと思うぞ?オークの数体を倒したが、結局、デゼェルオークを倒し切れないまま気絶したしな」
 謙遜ではなく、本気で彼はそう思っていた。あの状況、オークの殲滅以外では首領であるデゼェルオークの打倒しか、打開の手段がなかった。それを果たせなかった事が心残りであった。
 また、自虐的な様子、自信の無さは、目の前でレインを喪った自責が尽きない為に。
「そんな事は無い。あの後、デゼェルオークは地に伏した。お主は見事、倒して見せた。お主が食い止めたのだ」
「なら、良いが・・・」
 偽りのない言葉に少しばかり気が楽になったトレイド。それで自信が付くほど単純ではなく、ただ懐疑的な表情を浮かべるのみ。
「・・・それで、村は如何なったんだ?建物も壊され、負傷者も出ただろう。傷は、浅くない筈だ」
 本題に踏み込むトレイドの表情は険しい。気絶した事を悔やみ、自責の念に心は押し潰されそうに。それは思い上がりでもあり、責任感が強いとも言えた。
「・・・そうだな。簡単に言えば並々ならぬ被害を被った。村は半壊した。多くの家屋が崩壊させられ、火の手が上がって修復不可能となってな。人の被害、負傷者は軽重合わせて多数出てしまった。危うく命を落としそうになった者も居た」
「!」
 予想出来た結果。襲来した時点で覚悟すべき戦果。それでも負傷者が、重傷者が出た事に衝撃を受けて心を痛める。
 その反応にサイザは小さく笑う。既に予想出来ていた反応だったのか、それは本人には気付かれず。
「だが、奇跡的に、とでも言えるだろうな。死者は出ておらん。お主の発見と警鐘が迅速に行われた上、お主が首領であるデゼェルオークと戦い、これを討ってくれた。それで被害はかなり抑えられた」
 加えて言うならば、襲撃に因る被害が少ないのはトレイドとデゼェルオークの戦闘が大きく影響した。あまりにも大きく、接戦が過ぎた為、オークと人の多くが戦いの行く末を見守ったから。
「それに、お主が所持していた医療品、そう回復薬が大いに役に立ってくれた。日頃から用心し、多く備えていたのだな。非常に勝手だが使わせて貰った。御蔭で重篤者の命を繋ぎ止められた。しかし、酷き者から優先し過ぎて、お主に回せる分までは残せず、全部使ってしまった。悪かった」
「・・・それは良い。こんな事態は予期していなかったが、使って貰えたなら俺も嬉しい。寧ろ、使ってくれた事に俺が感謝したいぐらいだ」
 確かに気絶した者の所有物を勝手に使用するのは褒められたものではない。だが、サイザが冷静に機転を効かせた御蔭で救われた命があり、その切欠が所持していた回復薬ならば、批難する余地など無く、寧ろ喜ぶべき事と思って。
「・・・責めは、しないのか?」
「何で責める?俺よりも酷い状態の者が居たなら優先するのは、正しい判断だと思う」
「・・・お主が寛容で助かる」
 会話するサイザの態度はかなり軟化していた。トレイドの犠牲精神を含んだ意志、魔族ヴァレスだろうと命を賭けて守ろうとする誠心に心を打たれたのだろう。いや、見方を、態度を改めるのは当然か。
「・・・クルーエは、大丈夫なのか?俺を、助けようとして、かなり無茶をしていた筈だ」
「クルーエか。そうだな、あの娘も一時期は危険な状態であった。操魔術ヴァーテアスを使い過ぎた上、血を流した。とても危うい状態だったとも。恐らく、一番重篤と言えるのはあの娘、かもな」
「・・・それでも、生きている、助かっている、で良いんだな?」
 彼女の安否こそが一番心配している事であり、聞かされた状態に憂いが強くなる。死者が出たと言われていないものの、その心配に心臓の音は強くなっていた。
「うむ。それもお主の回復薬が大いに役に立ってくれた。縫合も合わせ、傷口を素早く塞げて流血を防げた。造血作用の高い薬草を摂らせつつ、休息させておる。安静にしていれば、じきに良くなろう」
「そ、そうか。良かった、良かった・・・っ」
 それを聞き、張り詰めていた緊張の糸はやっと解けた。脱力してその場に崩れ去り、込み上がる感情で涙は溢れ出した。漸く安堵に至り、彼女の無事を、そしてこの村の人々が助かった事を喜んでいた。
 感極まり、涙を流して静かに喜ぶ。誰も救えなかった彼にとって、命を救えた事が何よりも。まさに、感無量に。
 言葉を無くして蹲る姿を前にサイザは何を思っただろう。助かった事を、魔族ヴァレスが生きている事を喜ぶ。それは嬉しい筈、見つめる老いた眼は優しげに。

【12】

「悪かった」
「・・・いきなり、何だ?」
 トレイドの様子が落ち着くのを待ち、次に語られた言葉は謝罪であった。当然、唐突な言葉に本人は少し戸惑う。
「儂は人族ヒュトゥムだからと、お主を侮っていた。魔族ヴァレスを対等に『人』として扱ってくれ、その命を賭して助けてくれた。その事に感謝し、お主に不快な思いをさせた事を詫びる」
 再度、頭を下げて二つの謝意を示す。深々と下げて硬直した姿勢は心の底からの反省が見受けられ、見せられたトレイドは不本意だと気分を害する。
「止めてくれ。運が良かったんだ。下手をすれば、俺は死んでいた。クルーエも、他の人も死なせていたかも知れないんだ。だから、礼を言われても、謝られても、困る」
「それでもだ・・・被害者意識が強かった。人族ヒュトゥムだからとお主を警戒した。迫害されたからと同じ目で見てしまった。その愚かさに謝りたい」
「・・・それは、仕方ない筈だ。不当に迫害され、傷付けられたなら、誰だって不信になってしまう」
「いや、そうだと決めつけていた節もある。だから・・・」
「だから、もう良いんだ。俺はもう、気にしていないから・・・」
 面と向き合い、自身の非を認め、詫びてくれるならばそれで良かった。元より魔族ヴァレスに悪い印象を持っておらず、憎しみ等も抱いていない。最初から柵などなかったから。
 変に気を遣わせたくないと余剰な謝意は要らないとする彼を、面を上げて見たサイザは切なげに表情を緩ませる。
「他の者も、お主のような思考を持ち合わせていてくれたなら・・・良かったのに、な」
 視線を逸らし、暖炉を見つめるサイザ。その面、視線は遠くを見つめるようで切なく。昔を想い、別の可能性を考慮して憂いを刻む。戻れないと分かっていても、そうあって欲しかったと思って。
 その横顔を眺め、トレイドもまた物思う。最初期、それを否定する者が居て、寄り添ってくれようとしていたならばと。だが、考えても最早遅い事は分かり切っている。それでも考えは尽きず。
「・・・処で、お主に聞きたい事がある。何時頃ぐらいからか、身体に違和感を感じる事はなかったか?」
 一呼吸を挟んだ後に問いが投げ掛けられた。表情を静め、真剣な面持ちの為、相応の内容である事を察する。
 問われたトレイドは直ぐにも思い出す。この村に来てからずっと身体に違和感があった。右腕が多少痛みが和らいだ事を引き換えに、意識と身体のズレを感じ続けていた。今は無いものの、それを心当たりとして伝えた。
「・・・やはり、此処に来る時にか・・・」
「それが、如何したんだ?」
 深刻な表情を浮かべて一人納得する。目の前に行われて気にならない訳がない。
「お主はもう、人族ヒュトゥムではない。この村に来る前に、その変化は起きていたようだ」
「・・・如何言う意味だ?」
 言っている意味が分からず、その真意を問う。問われたサイザは眉間の皺を益々に深めて。
「・・・あの娘は、お主に『血の代償ディ・ウィワルト』を行ってしまった。それ故に、お主の身体は人族ヒュトゥムから、別の種族に変化してしまったのだ」
「『血の代償ディ・ウィワルト』・・・?」
 定められた名称を告げられたとしても知らない彼は怪訝な顔を浮かべ、思いのままに口に零す。それにサイザは大きく溜息を漏らす。知らなくて当たり前だと、語りたくない思いが吐き出されて。
 途端に空気が重くなり、無意識にトレイドは小さく警戒する。重く沈黙する表情を眺めている内に、重々しく唇が開かれた。
「その前に、お主は混血族ヴィクトリア、と言う種族になった事を覚えておくと良い」
混血族ヴィクトリア・・・」
 新たな種族名、それを焼き付ける彼は妙な親和性を抱いた。それを不思議に思いつつも話に耳を傾ける。
「その名称から分かるように、人族ヒュトゥム魔族ヴァレスの番いの子がそれに当たる。そうさな、種族としては人族ヒュトゥムよりも肉体面のあらゆる点で同等、或いは優れておる。同胞しか受け付けない魔具トゥヴァーセを扱えるようになり、その上、操魔術ヴァーテアス聖復術キュリアティの素質を、若しくはその両方の素質を持つかもしれん逸材だな」
「・・・だが、俺は両方の子じゃない筈だ。魔族ヴァレスでもなく、人族ヒュトゥムだと言っていたのはそっちだ」
「そう、魔具トゥヴァーセが害になるのは人族ヒュトゥム。だが、もう一つだけ、後天的にそうなれる方法があるのだ」
「それが、さっき言ったやつだと?」
「・・・そう。『血の代償ディ・ウィワルト』は、儂等、魔族ヴァレスの血液を人族ヒュトゥムの体内に注入させる事を指す。方法は何でも良い、口等から流すでも、傷口に流し込むのでも良い。多量の血液を必要とし、人族ヒュトゥムの血肉が反応、遺伝子レベルで変化を生じさせる、言わば生物実験のようなものだ」
 血を以って為す異質の儀式。同時に生き血を扱う事から忌むべき所業とも言えるだろう。想像し、トレイドは眉を顰めるしかなかった。
「不思議と、逆では起こり得ない。それが如何言った原因があるのか分からん。だが、前の世界での人智とは掛け離れた儀式として、『血の代償それ』はある。現実なのだ」
 サイザも解せない思いだろう。だが、それを認めるしか、受け入れるしかない。現実にあり、トレイドは身を以って証明している。そう、だからこその右腕は再び彼のものとなり、不調を来たしながらもデゼェルオークとの戦いは辛勝に納められたのだ。
 また、連日続いた身体の不調、意識と身体のズレは、満身創痍の身でも動けたのは、身体の変化が生じ、過剰反応によるものだと推察される。
「・・・だが、俺はそれをされた覚えがない。魔族ヴァレスと初めて会ったのはあの日、クルーエが最初だ」
「その時にあの娘も傷を負っていたと聞いた。その血が混入してしまったのやも知れぬ。それに、あの戦いの後、お主の上にあの娘が重なるように倒れていたと聞いた。何方にしても、お主が混血族ヴィクトリアになったのは確実だな」
 トレイドは難しい表情で黙り込む。自身の変化に戸惑いは勿論だが、それに彼女を関わらせてしまった事を悔いた事が一番強かった。
「だが、この事は口外を禁じ、忘れて貰おう」
「どうしてだ?」
「壮絶な賭けが存在するからだ。何故なら、それを行ったとして、皆が皆、混血族ヴィクトリアになるとは限らんのだ。強烈な痛みを伴う副作用がある」
「副作用・・・」
「それは言葉では言い表せないだろう。凄まじい、いや惨たらしき姿へと身体が変貌する。遺伝子が損傷してしまうのか、或いは身体が拒絶反応を起こすのだろうな。のた打ち回って苦しみ、身体の変貌に耐え切れず呼吸を失い、掻き毟るような苦しみの中で死に至る・・・これはな、単なる賭けだ。命懸けの、血を与える方も、命を賭けなければならないほどの、危険な、な」
 舌筆には語れない、凄惨な結果と成り果てるのだろう。それを、遺伝子記憶ジ・メルリアで知る彼にしか知らぬ事。浮かべた悲壮感漂う面に異論は言えず。
「同時に、それは急激な力の増加も期待出来る。ともすれば、他を追従させぬ強靭な身体能力や身体機能に加え、操魔術ヴァーテアス聖復術キュリアティを扱える、それがもし、世間に広がってしまえば・・・」
 それに続く言葉をトレイドは直ぐにも察してしまう。今の関係を更に悪化するだけに留まらず、悲惨な未来しか思い浮かばず、悪寒と杞憂に表情が険しくなった。
「だ、だが、それを試すとしても、死と隣り合わせだ。そうそう試す奴は・・・」
「・・・だからこそだ。危険を冒すに足る対価、そう判断する輩も出て来るやも知れん。だから、忘れて欲しいのだ・・・良いな」
「・・・ああ、分かった。公言など、しない」
 その宣言に偽りの一つもない。悲惨な結末を回避出来るなら、自身の命を賭けてでも隠し通す意思を見せて返答していた。
「・・・少し、気分を悪くさせてしまった。身体を張ってくれた事に感謝を述べたかっただけなのに・・・傷が癒えていない身、無理をさせて悪かった。もう休むと良い」
「ああ・・・そう、させてもらう」
 了承を受けるサイザの表情は少々穏やかにされる。トレイドの言動を、信用に値するとものと受け止めての事か。少しの間見つめた後、少し前まで座っていた椅子を片し、部屋を後にしていった。
 出て行く際、扉の位置を知らせる為だけの蝋燭の火が消された。部屋を包んでいた暗闇は深まり、部屋の唯一の光源だけが頼りとなる。部屋を暖める為の暖炉、焚かれた火が小さく揺らめく。薪が燃える音が響くだけとなり、見送ったトレイドは少しの間、沈黙を保っていた。
 薄暗闇の中、小さな溜息が吐かれた。戦いを、死闘を終えた事を実感して自然と零していた。まだ残る痛み、疲れからベッドに再び身体を預ける。部屋に充満する温もり、掛け布団の肌触りの心地良さの中で瞼を閉じる。
 瞼の裏、眠気は無くとも閉ざしていれば緩やかに暖気が生まれ、ゆっくりと眠りに落ちていく。助けられた安心感か、眠る彼の面持ちは実に穏やかであった。

 追加が無ければ緩やかに火力を失う暖炉の火。少しずつ暗くなる静かな部屋、そうそうには消えない温もりが包む。それが疲弊した身を抱き、持続して暖め続ける。僅かながらも確実に、じわじわと身体の末端まで暖めて彼を癒していた。それは人の温もりに近く。
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