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第十話─気づき─
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それから私は、大学に行っては明堂院を探すようになった。これじゃ本当にストーカーみたいだと思いながら、距離をとって相手に分からないように、こっそり観察する。最近それが上手くなってきている気がするのだ。そんなスキルいらない.........。
明堂院は鋭い。下手をするとすぐに気配を悟られてしまう。初めこそ、気配を悟られてしまって観察することが出来ないなんてことが沢山あった。私は試行錯誤をしながら、少しずつコツを掴んでいき、作戦を実行してから1ヶ月、今や振り返られるなんてことはなくなった。これも、私の視線に下心がないおかげかも、なんて思っていたりする。なんて言えばいいかわからないが、彼の弱みを知ってやろうとか、恨みとか、そういう感情をわたしは持ち合わせていない。だから、純粋に観察しているだけなのだ。だから、視線を感じにくいのかもしれない。
彼を観察して分かったことは、本当に彼は毎日つまらなそうにしていること。何だか、全てのことに幻滅している、いや、もう何も感じないような、そんな感じ。私は、彼が怖い。だって、生きていながら死んでいるようなんだから。あそこに彼は確かに立っているのに、誰も立っていない、そんな錯覚を感じるから。それが、不気味で、とても怖い。そんなふうになりたくないって思ってしまう。それと同時に、どうして彼は生きているの、と疑問に思う。
だって、生きることに何の意味も見いだせていない、生きたいと思っているようには、おおよそ思えないのに、彼はその立場の重責に耐え、自分を演じ、そして誰にも彼自身を見てもらうことはない。それは、とても言葉では表せないほど、死んでしまいたいほど辛いのではないのか。私ならそう思う。私は死ぬことが怖いから、どんなに今まで辛くたって、死にたいって思ったって、自殺をしようとは思わなかった。でも、彼は死ぬことが怖いなんて思っていなさそうなのに、どうして生きているんだろう。
私の中で、様々か憶測が巡る。いつの間にか、明堂院を考えない日はなくなった。恐怖心は未だに消えない。でも、ただ、彼を知りたい。そんな欲求が生まれているのは確かだった。
だって、彼のことがわからない。今までだったら、どんな人のことだって、大体の思考回路は読むことが出来た。でも、明堂院にはそれが出来ない。それが、初めてのことで戸惑って、でも、どうしてと、とても思ってしまうのだ。
わからないが増えていく。わからないを消すために、私は彼を見ていたはずなのに、彼を知る度に、分からなくなっていく。知りたいなぁ、彼のこと。
明堂院は一体どういう人間なのだろう。
そうして、私は今日も彼を見る。
─────────────────────────────
視線を感じるようになったのは、何時からだったか。御嘉と初めて対面して、それから少したったくらいからだ。初めは誰かにストーカーでもされているのかと、凛翔は身構えた。だが、相手に気づかれないように視線の先をたどっていくと、そこには御嘉 雪麗がいた。穢れを知らない純粋そうな瞳を向けて、真っ直ぐにことらだけを見ていた。
初めて視線を感じたとき、凛翔は鬱陶しい鈴白 愛姫が媚びを売っていて、とてもうんざりとした気分だった。流石に面倒くさくなってきていて、どうしてやろうかと思案していた。友人はそんな凛翔を見て、内心怯えているようだった。そのときだ、強い視線を感じたのは。まさかストーカーか、と思ってまたうんざりした。相手は誰だとこっそり視線だけを動かして伺うと、そこには御嘉がいた。彼は歓喜で胸が震えた。その瞳には、恐怖で埋め尽くされていて、でも、凛翔を知ろうとする確固たる意思を感じた。ただ、硝子玉のように透き通った瞳をこちらに向けている。凛翔は、御嘉の観察を始めた。
初めては、観察に重きを置いているようだったが、だんだんと彼を取り巻く状況を悟ったのか、その眉間に皺がよる。そうして、心底苦しそうな顔をしたのだ。彼は、彼女が他人の感情を感じ取ってしまっているのだとすぐにわかった。鈴白の気持ちも凛翔たちの気持ちも、どちらも感じて胸を砕いていた。その姿はとても息苦しそうで。涙を今にも流しそうな様子だった。やがて、自分が余計なことにまで心を働かせていると思ったのか、彼女は首を振って、湧き上がる感情を抑制してこちらをまた観察しだした。
凛翔はその様を見て何と美しいのだろうかと思った。自分を砕きそこまで、感情を生み出せる彼女に興味が湧いた。元々、彼女のことは気に入っていたが、もっと、御嘉 雪麗という人間を知りたいと思った。
凛翔にとって、彼女との出会いはとても衝撃的だった。初めは、純粋な興味だったが、そのことにも凛翔は驚いていた。自分はまだ、何かに興味を持つことが出来るのか、と。そうして、彼女と対面したときは、胸がそわそわして、高鳴って気分が高揚していた。あんな感情になったのは初めてだった。凛翔は彼女といると、自分が心を動かしていることに気づき、胸が踊った。
感情がわからない凛翔にとって、その感情を引き出してくれた御嘉は、凛翔の中で特別となった。
明堂院は鋭い。下手をするとすぐに気配を悟られてしまう。初めこそ、気配を悟られてしまって観察することが出来ないなんてことが沢山あった。私は試行錯誤をしながら、少しずつコツを掴んでいき、作戦を実行してから1ヶ月、今や振り返られるなんてことはなくなった。これも、私の視線に下心がないおかげかも、なんて思っていたりする。なんて言えばいいかわからないが、彼の弱みを知ってやろうとか、恨みとか、そういう感情をわたしは持ち合わせていない。だから、純粋に観察しているだけなのだ。だから、視線を感じにくいのかもしれない。
彼を観察して分かったことは、本当に彼は毎日つまらなそうにしていること。何だか、全てのことに幻滅している、いや、もう何も感じないような、そんな感じ。私は、彼が怖い。だって、生きていながら死んでいるようなんだから。あそこに彼は確かに立っているのに、誰も立っていない、そんな錯覚を感じるから。それが、不気味で、とても怖い。そんなふうになりたくないって思ってしまう。それと同時に、どうして彼は生きているの、と疑問に思う。
だって、生きることに何の意味も見いだせていない、生きたいと思っているようには、おおよそ思えないのに、彼はその立場の重責に耐え、自分を演じ、そして誰にも彼自身を見てもらうことはない。それは、とても言葉では表せないほど、死んでしまいたいほど辛いのではないのか。私ならそう思う。私は死ぬことが怖いから、どんなに今まで辛くたって、死にたいって思ったって、自殺をしようとは思わなかった。でも、彼は死ぬことが怖いなんて思っていなさそうなのに、どうして生きているんだろう。
私の中で、様々か憶測が巡る。いつの間にか、明堂院を考えない日はなくなった。恐怖心は未だに消えない。でも、ただ、彼を知りたい。そんな欲求が生まれているのは確かだった。
だって、彼のことがわからない。今までだったら、どんな人のことだって、大体の思考回路は読むことが出来た。でも、明堂院にはそれが出来ない。それが、初めてのことで戸惑って、でも、どうしてと、とても思ってしまうのだ。
わからないが増えていく。わからないを消すために、私は彼を見ていたはずなのに、彼を知る度に、分からなくなっていく。知りたいなぁ、彼のこと。
明堂院は一体どういう人間なのだろう。
そうして、私は今日も彼を見る。
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視線を感じるようになったのは、何時からだったか。御嘉と初めて対面して、それから少したったくらいからだ。初めは誰かにストーカーでもされているのかと、凛翔は身構えた。だが、相手に気づかれないように視線の先をたどっていくと、そこには御嘉 雪麗がいた。穢れを知らない純粋そうな瞳を向けて、真っ直ぐにことらだけを見ていた。
初めて視線を感じたとき、凛翔は鬱陶しい鈴白 愛姫が媚びを売っていて、とてもうんざりとした気分だった。流石に面倒くさくなってきていて、どうしてやろうかと思案していた。友人はそんな凛翔を見て、内心怯えているようだった。そのときだ、強い視線を感じたのは。まさかストーカーか、と思ってまたうんざりした。相手は誰だとこっそり視線だけを動かして伺うと、そこには御嘉がいた。彼は歓喜で胸が震えた。その瞳には、恐怖で埋め尽くされていて、でも、凛翔を知ろうとする確固たる意思を感じた。ただ、硝子玉のように透き通った瞳をこちらに向けている。凛翔は、御嘉の観察を始めた。
初めては、観察に重きを置いているようだったが、だんだんと彼を取り巻く状況を悟ったのか、その眉間に皺がよる。そうして、心底苦しそうな顔をしたのだ。彼は、彼女が他人の感情を感じ取ってしまっているのだとすぐにわかった。鈴白の気持ちも凛翔たちの気持ちも、どちらも感じて胸を砕いていた。その姿はとても息苦しそうで。涙を今にも流しそうな様子だった。やがて、自分が余計なことにまで心を働かせていると思ったのか、彼女は首を振って、湧き上がる感情を抑制してこちらをまた観察しだした。
凛翔はその様を見て何と美しいのだろうかと思った。自分を砕きそこまで、感情を生み出せる彼女に興味が湧いた。元々、彼女のことは気に入っていたが、もっと、御嘉 雪麗という人間を知りたいと思った。
凛翔にとって、彼女との出会いはとても衝撃的だった。初めは、純粋な興味だったが、そのことにも凛翔は驚いていた。自分はまだ、何かに興味を持つことが出来るのか、と。そうして、彼女と対面したときは、胸がそわそわして、高鳴って気分が高揚していた。あんな感情になったのは初めてだった。凛翔は彼女といると、自分が心を動かしていることに気づき、胸が踊った。
感情がわからない凛翔にとって、その感情を引き出してくれた御嘉は、凛翔の中で特別となった。
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