僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

番外編

3

「慶太」


優しく名前を呼ばれるけど、玲人のほうを向けない。

だってこんな事思うの、玲人に対してだってものすごく失礼だ。

まるで僕が迷ってるみたいな…。


「慶太…こっち向いて？」

「……ごめん、なさい」

「慶太？」


ふわりとした暖かさに包まれる。

抱きしめられてるんだ、って。

なんか、しみじみ思った。

自分の手を玲人の大きな背中に目いっぱい回して、ぎゅっと思いっきりしがみつく。


「なんで謝ってんの？」

「だって、僕…」

「大丈夫。…大丈夫だよ」

「……うん」

「きっと分かってくれるから」

「ん…」

「万が一、そんなことしようもんなら、慶太の親父だって構わず俺が殴ってやるよ」

「玲人…ありがと」

「言葉よりも行動で表してくれると嬉しいんだけど。例えば…キスとかさ？」

「もう！人がちょっと感動してたのに！」


バシン、と玲人の背中を一回たたく。

「いてっ！」って大げさに言って、玲人は僕を抱きしめる手に力を入れた。


「行くか？」

「うん」



僕も背中に回した手にもう一度だけきゅっと力を入れる。

お互いの顔をしっかりと見合って。

僕らは二人、家の中へと入った。


「ただいま」

「おじゃまします」