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最終章
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しおりを挟むーside 桐生玲人ー
カーテンの隙間から差し込む日差しが顔に当たって。
まぶしくて目が覚める。
時計に目をやると朝八時を過ぎたところだった。
こんなにもぐっすりと眠れたのはいつ振りだろうか。
そんな事思いながら自分の隣で眠るやつに目を向けた。
すぅすぅと、寝息を立てて。
起きる気配なんかまるでない。
(慶太のおかげ…だよな。)
髪の毛をすっと梳くとくすぐったそうに身をよじる。
こんなにも愛しい存在。
大切な存在。
もう少しで本当に失ってしまうところだった。
怖かった。
慶太のいないこれからを考えるととても怖かったんだ。
一体今まで何に怯えていたんだろう。
ただ一人、自分の愛する人を見つけるなんて幸せなだけのはずなのに。
そしてその自分がただ一人愛する人が自分のことを愛してくれる。
こんなに幸運なことなんてあるはずないのに。
俺はただその事実を受け入れ、自分のもらってる幸せを相手にも返してあげればいいだけだった。
そう、俺のただ一人愛する人。
もう一度その存在を確かめるようにきゅっと抱きしめる。
慶太はそれに答えるように頬を俺の胸へと摺り寄せてくる。
その頬をなでてやると心なしか微笑んだような気がした。
愛してる。
そう口に出すたびに。
もっともっと、愛しさが込み上げる。
毛布の中から慶太の手を取り出した。
自分の首から提げていたネックレスをはずす。
そしてそれに通してあった指輪を手に取り、慶太の指にはめた。
それは。
余ることなく。
薬指にぴったりとはまる。
なぁ、慶太。
この命つきるまで。
死が二人を別つまで。
慶太。
「愛してるよ」
「んぅ…玲人……僕も」
ーEndー
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