僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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最終章

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「離して…離してよっ」

「離さない」

「止めてよ…嫌いなんだから、玲人なんて。嫌いなんだから!」

「もう一回…好きにさせてみせる」

「…っ…バカじゃ…ないの?佐倉さんのほうが…いい男なんだから。僕の事好きだって…ちゃんと…っく。」

「負けない。慶太の事を愛してるの。あいつになんて絶対に負けてない」

「うそつき、うそつき、うそつき!」

「ウソじゃない…愛してる」

「やだ、聞きたくな…もう…離して…離してよぉ」

「ごめん…離せないんだ…ごめん」


なんで。

なんでこんな時まで。

こんなに。

自分勝手で。


手、離してよ。

こんなの嘘なんだから。


この温もりも。

玲人の言葉も。

心臓の異常な速さの鼓動も。

上から聞こえる玲人の泣いてる声も。


全部全部。

嘘なんだから。

二度と信じないんだから。


「信じない…信じない」

「…信じてもらうまで、何度も伝える。愛してると、好きだと。」

「今までいっぱいの人に言ってきたくせに!思ってなくても言えるくせに」

「……言えないよ。愛してるは…お前にしか言えない」

「それも、信じないんだから。玲人の言う事は全部信じないんだから!」

「慶太…俺のほう見て」

「ヤダ、見ない…」

「見て。頼むから…見ろよ」


無理やり顔を上げられて。

玲人のほうに向かされる。


情けない顔してて。

いっぱい泣いてて。

鼻も目も真っ赤で。


でも、その目。

今まで一度だけ見た事がある表情。

絶対に忘れられない表情。


あの日と同じだ。


高校一年のクリスマス。

僕に「好きだ」と言ったあの日。

あの時。

その時と今全く同じ表情で。


自分の中で。

僕の中の中の中で。

閉じ込めておいた。

封印をしておいた。


その扉が一気に崩れ落ちる。


涙腺も壊れたかのように。

ハラハラと落ちる涙。


それを玲人の指がすっと拭う。


その時に気づいた。


玲人の薬指。

指輪。


サイズは大きいけれど。

僕にくれたものと同じものだった。

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