僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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最終章

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ーside 桐生玲人ー


このままカナダにとどまるのか。

それとも一人で日本に帰るのか。

何も決まってはいない。


慶太の元を訪れる事もできなくて。

ただ、あいつが見たいと言っていた風景を見てみたいと思って。

思いついてすぐに、ホテルを出たんだ。


もう夜十時を過ぎたのだろうか。

あたりは暗く、道の両サイドに設置されたライトがその場を淡く照らしている。


「はぁ…これはすげぇわ」


日本では見られないようなスケールの大きさ。

たくさんの木々。

鮮やかな花たち。


太陽の日ではなく、ライトの弱い光で照らし出されたその風景は。

なんか、艶があって、趣があって。

冬になればきっとこのたくさんの木にライトが飾り付けられるのだろう。


それを見ている慶太。

きっとはしゃぎまくってんだろうな。

俺の手を強く引っぱって。

あっちこっち連れまわされてさ。


そんな想像して。

ふっ、と自嘲の笑いが漏れた。


慶太の横に立つヤツ。

俺じゃ、ねぇのかな。


道に沿って、ゆっくりとした足取りで歩いていく。

こんな時間だ、誰もいない。

贅沢な貸し切り状態だ。


こっちに来て初めて観光らしいものをしてるよな、俺。

一人、時間をとって回ろう。

そう思って、足元の光に導かれるまま奥へ奥へと入って行った。


少し開けた場所。

真ん中に石像みたいのが立ってて。

その周りをたくさんの花が取り囲む。



そして、それを見上げるように。

一人の人が立っている。


ウソ…だろ。

そんなわけ、ない。

でも。

俺があいつを見間違えるわけもない。


「慶太…」


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