313 / 327
最終章
43
しおりを挟むーside 桐生玲人ー
このままカナダにとどまるのか。
それとも一人で日本に帰るのか。
何も決まってはいない。
慶太の元を訪れる事もできなくて。
ただ、あいつが見たいと言っていた風景を見てみたいと思って。
思いついてすぐに、ホテルを出たんだ。
もう夜十時を過ぎたのだろうか。
あたりは暗く、道の両サイドに設置されたライトがその場を淡く照らしている。
「はぁ…これはすげぇわ」
日本では見られないようなスケールの大きさ。
たくさんの木々。
鮮やかな花たち。
太陽の日ではなく、ライトの弱い光で照らし出されたその風景は。
なんか、艶があって、趣があって。
冬になればきっとこのたくさんの木にライトが飾り付けられるのだろう。
それを見ている慶太。
きっとはしゃぎまくってんだろうな。
俺の手を強く引っぱって。
あっちこっち連れまわされてさ。
そんな想像して。
ふっ、と自嘲の笑いが漏れた。
慶太の横に立つヤツ。
俺じゃ、ねぇのかな。
道に沿って、ゆっくりとした足取りで歩いていく。
こんな時間だ、誰もいない。
贅沢な貸し切り状態だ。
こっちに来て初めて観光らしいものをしてるよな、俺。
一人、時間をとって回ろう。
そう思って、足元の光に導かれるまま奥へ奥へと入って行った。
少し開けた場所。
真ん中に石像みたいのが立ってて。
その周りをたくさんの花が取り囲む。
そして、それを見上げるように。
一人の人が立っている。
ウソ…だろ。
そんなわけ、ない。
でも。
俺があいつを見間違えるわけもない。
「慶太…」
99
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる