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最終章
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
ガチャっ……バタン!
「はぁ…はぁっ……」
家につくなり自分の部屋に駆け込んだ。
言った。
全部言ってしまった。
もう来ない。
玲人は、二度と来ない。
きっと明日には日本に帰って。
すぐに新しい人見つけて。
僕はここで、一生玲人と会わずに生活して。
これでいいんだ。
自分で言ったんじゃないか。
「話す事はない」
「日本に帰れ」
これで玲人はもう来ることがない…もう会わなくていいのに…。
でも。
もう玲人に会えないんだって。
その現実に。
僕の心は悲鳴を上げる。
「…っ…っく…来なければ…こんな思い…しなくてよかったのに…っ」
(別れても、もし会えば僕はまた求めずにはいられなくなる)
ほらね。
僕は正しかった。
身体が。心が。
僕の全てが。
玲人のことを欲してるんだ。
叶うことがないもの。
それが分かっていてもなお玲人を求めずにいられなかった。
抱きしめられたとき。
キスをされたとき。
このままこの腕の中にいられたら。
愚かにもそう思ってしまった。
壊れる。
壊れてしまうよ。
張り裂けそうになる何かを。
これ以上抑えていられそうにない。
玲人が欲しい。
でも無理。
いいじゃないか、戻れよ。
だって、またあの人は浮気をする。
今迄だって我慢できたじゃん。
もう限界なんだ。
好きなんじゃないの?
好きだ。…だから苦しい。
無理。
無理、無理、無理。
欲しい。
無理!
壊れる。
壊れてしまう。
ううん。
いっそ壊れてしまえたらいい。
だれか。
僕の事を解き放って…
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