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最終章

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告げられた時間までまだ四時間ある。

一度ホテルに帰って少し休もうかと考えたけれど。

今戻ったところできっと寝れやしないだろうと思い、そこに残った。


カフェの周りをずっとうろつくのも、不審だし。

それで慶太が変な目で見られてもいけないし。

とりあえず何を見るわけでもないがモールの中を歩き回る。


何度も何度も時計を見て。

時間をチェックして。

そして、八時半。

少し早めだけれど、店へと向かった。


閉店が九時というのは本当らしくまだ明かりはついてるものの客はほとんどいない。

向かい側から中をうかがっても慶太の姿を見つけることはできなかった。


そして九時。

外に出ているイスやらテーブルやらを中にしまうスタッフたち。

十五分ほどしてだろうか、電気が消えて店の中から二人出てくる。

そのどちらも慶太ではない。

彼らの元へ俺は駆け寄った。

 
『あの…ケータは?』

『ぁ…ケータね。あいつはもう帰ったよ』

『そう、一時間くらい前かな』

『そう…ですか…』

『あんた、ケータの友達?』

『はい…』

『ケータがさ、自分のこと尋ねて誰か来たら「ごめん」って言っといてってさ』

『……ごめん…か』

『…じゃ、俺ら、行くから』

『ありがとう』


「ごめん」

その意味は?


ごめん、ウソついて。

ごめん、会いたくなくて。

それとも。

ごめん、もう好きじゃない。



七月。

夏は日が長いカナダ。

夜九時半、ようやく暗くなりだす。

気温も下がって、身体がぶるりと震えた。

それでも俺の足は地面に張り付いたまま、なかなか動き出す事ができなかった。


どれくらいそうしていたのか。

モールもすでに閉じてしまって、見渡す限り誰もいない。

いつまでもここでこうしていても仕様がない。

ようやく一歩踏み出そう。


そう思った時だったんだ。

何かの扉が開く音が聞こえたのは。


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