上 下
293 / 327
最終章

23

しおりを挟む

ーside 水野慶太ー


「…ん……ちゃん……慶ちゃん!」


はっとして顔を上げる。


「どうしたの?…ご飯、おいしくなかった?」

「あ…違います。ごめんなさい。おいしいですよ、すごく」

「そーお?それならいいんだけど…」

「慶太、何か悩み事とかあるのか?」

「いえ…なんでもないです」


僕と冴香さんと父。

三人で食べる食事。


でも僕が気になってたのは佐倉さんからのメールだ。

プレゼントって…。

住所も教えてないし。

てことは送ってくるはずもないし。

うーん、よく分からない。


「慶ちゃん、何か悩み事?あるなら言ってちょうだいよ」

「悩み?…いや、悩みと言うほどでも…」

「あ、もしかして…恋の悩みとか?」

「ち…違います!」

「あー、そんなに慌てるってことは、そうなの、やっぱり」

「お、そうなのか?どんな子だ?バイト先の子か?」

「だから、違うんです。…そんなんじゃ…」

「ふふっ、剥きになっちゃって。慶ちゃん、かわいいんだから」

「…からかったんですね」

「ごめんね?…でも、本当に悩みがあるなら言ってよね?」

「はい…分かりました」

「よし、じゃ、ご飯食べちゃいましょう。…慶ちゃん、おかわりは?」

「いただきます!」

「おい…冴香。俺にもおかわり…」

「あ、あなたは後ね。慶ちゃんが先」


最近冴香さんが前に言ってた事がちょっと分かる気がする。

冴香さんの前だと父はなんと言うか…本当に…うん。

耳垂れてる感じ?

しょぼくれてる父がおかしくって思わず笑ってしまった。


「おい、慶太…何笑ってんだ」

「何でも…ないです…あははっ!」

「はい、慶ちゃん、いっぱい食べてよね。…ほら、あなたも、お茶碗貸して」

「…あ、あぁ」



佐倉さんからのメール。

きっと考えたって答えは出ないよね。

もしかしたら特に意味はないのかもしれないし。


でも。

あの人にそう言われて。

なんかいいことが起こりそうな気がして。

ちょっとだけワクワクしてるんだ。


だから、僕はまだ分かってなかったんだ。

この「プレゼント」の本当の意味するところを。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚をしたら相手が毎晩愛を囁いてくるけど、魔法契約の破棄は御遠慮いたします。

たまとら
BL
魔道具のせいでイケメンハイスペックなのにチェリー道をいくヴォルフと、ちょっとズレてるレイトの汗と涙とこんちくしょうな白い結婚の物語

君が僕を見つけるまで。

いちの瀬
BL
どんな理由があっても、僕はもうここを去るよ。 2人の思い出が詰まったこの家を。 でもこれだけは信じてくれるかな。 僕が愛してたのは君だけだ。ってこと。 浮気攻め×健気受け なのかなぁ?もう作者にも結末、cpわかりませんw

友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。 終始彼の視点で話が進みます。 浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。 ※誰とも関係はほぼ進展しません。 ※pixivにて公開している物と同内容です。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【doll】僕らの記念日に本命と浮気なんてしないでよ

月夜の晩に
BL
平凡な主人公には、不釣り合いなカッコいい彼氏がいた。 しかしある時、彼氏が過去に付き合えなかった地元の本命の身代わりとして、自分は選ばれただけだったと知る。 それでも良いと言い聞かせていたのに、本命の子が浪人を経て上京・彼氏を頼る様になって…

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

処理中です...