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最終章
22
しおりを挟むーside 佐倉伊織ー
マンションに戻り、ソファに腰掛ける。
あーあ。
俺って本気でバカだな。
今日つくづく分かったよそれが。
なんであいつに教えてやったんだよ。
あんな最低くそ野郎に。
あのまま誤解させたままにしとけばよかったのによ。
バカだよなぁ、俺。
少しばかり痛む右手のこぶしをさすった。
思いっきり殴っちまったけど。
これくらい許されるだろ。
ケイが殴れなかった分を俺が殴ってやったってことで。
つーか、痛ぇな。
このこぶしも。
俺の胸のど真ん中も。
ケイがメールであんな事言わなかったら。
絶対教えなかったのに。
まだ俺にもチャンスがあったかもしれないのに。
俺はケイを幸せにしてやれた。
それは自信を持って言えるんだ。
でも。
俺のやれる「幸せ」は
ケイが欲しい、あいつの望む「幸せ」じゃないんだ。
あのメール見たときはっきり分かったんだよ。
「僕はいっつも半分です。」か。
残りの半分。
埋めてやれるのは俺じゃないんだよな。
あぁ、痛ぇ。
マジ、痛すぎて……なんで、俺。
泣いてんだよ。
何かが頬を伝うのを感じた。
「たかが失恋で…24にして泣くとはな…っ」
つぶやいた言葉は誰に受け取られるでもなく空に消えていく。
たかが、なんかじゃなかったよ。
ケイにとってあの恋が、あいつが、取替えのきくような物じゃなかったように。
俺にとってもお前は。
とても…特別だった。
袖口で頬をぬぐって俺は立ち上がり。
机に向かう。
パソコンを立ち上げて
カタカタと打ち込んだ。
「送信…っと。」
イスの背もたれにもたれかかり
俺は上を見上げてから目を閉じた。
「ケイ、楽しくやってるみたいで安心したよ。
忙しいなんて言ってるけど、それでさえ楽しめてるんじゃないのか?
お前の事だからがんばりすぎてないか、それだけが心配だけどな。
無理すんなよ。
じゃ、またメールする。
ケイ、俺からお前にでっかいプレゼント、やるよ。」
俺からお前に送る最初で最後のプレゼントだ。
そう。それは。
お前の「幸せ」だ。
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