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最終章
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
日本を離れてカナダに来てから。
もう三ヶ月ほど経っただろうか。
慣れない土地。
慣れない言葉。
慣れない人たち。
そんな慣れない事ばかりの状況に自分を適応させる事に必死だった。
だからか、この三ヶ月。
本当にあっという間だった気がする。
いろんなパンフレットを調べてこちらの大学院に通う事にした。
自分でもびっくりだったけど、僕がT大の研究室で読んでいた論文を出した先生がこっちに居る事が分かった。
でもこっちの大学が始まるのは九月らしく、とりあえず言葉に慣れようと僕はバイトを始めた。
意外と有名なカフェらしくて客足が途絶える事はない。
スタッフたちともそれなりにうまくやってるし。
常連のお客さんともちょっと仲良くなったりで結構楽しくやっていた。
そんな時。
佐倉さんからメールが届いたんだ。
「ケイ。
忙しそうにしてるみたいだな。
友達、たくさんできたか?
……好きなやつ、できたりしたのか?
お前は今、幸せか?」
いつもは、ちょっとした冗談とか。
イラッとした事とか。こんな事があったとか。
そんな感じなのに。
急にこんなメールが届いてちょっとびっくり。
なんて返せばいいんだろう?
明るい感じで。
ちょっとおちゃらけた感じで返事すればいいのかな。
「もちろんです!友達もたくさんできましたし、実は金髪のガールフレンドができました。
もう、いますっごい幸せです。」
とか?
でも。なんとなくだけど。
佐倉さんはまじめに聞いてるような気がして。
だから、ちゃんとこたえないといけないような気がして。
パソコンに向かって返事を書く。
送信のボタンを押してから席を立った。
「じゃ、僕行ってきます」
「あ、いってらっしゃい!車に気をつけてね」
「僕…小学生じゃないですよ?」
「あら、大人でも気をつけないとダメなのよ?」
「…はい。じゃあ、気をつけていってきますね、冴香さん」
「もう!ママって呼んでって言ってるでしょ?…なんなら、お母様でもいいけど。って、ちょっと、慶ちゃん、気をつけてねぇ」
後ろで大きな声で叫んでる冴香さん。
ママなんて呼べるわけなくて、照れくさくて聞こえない振りした。
うん。
今日も一日がんばってこよう。
「佐倉さん。
忙しくやってますよ。一日が経つのがとっても早いです。
お友達、っていうか一緒に働いてる人たちとは仲良くやってます。
みんな陽気で、たまにちょっと戸惑うけど楽しいです。
好きな人は……ずっと一人です。
いま、幸せですよ。
でも。
僕はいっつも半分です。」
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