僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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最終章

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「で……どうなの?」

「…なにが?」

「いや、生活とか?ちゃんと出来てんのかなぁ、と」

「ガキかよ、俺は。……出来てなかったらお前と飯なんか食ってねぇよ」


本当にこいつはいつも急だ。

今日だって一時間前に電話かけてきて。

「あ、玲人?今日、暇だろ?メシいこうぜ」

まったくふざけてる。


でも、正直一人で食事をするよりは気がまぎれる。

このウザさに今は感謝をするべきなのかもしれない。


「あっそ。ま、げっそりしてるかと思いきや意外とそうでもねぇし。あっちゃん、安心!」

「…自分で自分の事あっちゃんとか呼んでお前空しくねぇの?」

「だって、もう俺のことそう呼んでくれる人いないんだもぉん」

「………」

「慶ちん…なにしてんだろうね」

「…さぁな」

「ふーん。興味もなくなっちゃったんだ」

「…違っ」

「愛想つかされて出て行かれて?そしたらもうどうでもいいんだぁ」

「………何が言いたいんだよ」


一見からかっているようだが実際はそうじゃない。

こいつはいたって真剣だ。


「別に…」

「…どうしようもねぇよ」

「諦めがいいんだね、玲人は」

「……」



諦め?そうなのか?

俺は慶太のこと、諦めてしまったのか?

だとしたら。

この寂しさも。この孤独感も。

なにもかも。

いずれ慣れる時が来るのだろうか?


身体にあいた目に見えない大きな穴。

それが塞がる時は来るのだろうか。


「部屋とか、散らかってたりすんじゃねぇの?」

「…いや、昨日掃除したよ」

「へぇ」

「ただ…」

「……ただなに?」

「引っ越そうかと思ってる。…やっぱ、一人であそこはでかいしな」

「別のやつ連れ込もうとかは思わないわけ?」

「…ない」

「ま、そこまでクズじゃねぇよな、いくらなんでも」


ちくりちくりと敦の言葉にとげがある。

こいつに慶太のことを言ったのは、慶太が出て行って一週間経ってからだった。

自分の気持ちの整理がつかなったのと。

いなくなったと言う現実を言葉にしたくなかった事と。


もしかしたら。

戻ってくるんじゃないかっていうのと。


俺が告げたとき。

敦、俺はお前に殴られるかと思ったよ。


なのに。

おまえはただ寂しそうに笑っただけだったな。

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