僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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最終章

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ごそごそと分別なんかあまり気にもせず。

とりあえず見当たる限りのごみを手当たり次第袋に詰め込んでいく。


たまった食器も洗って。

掃除機もかけて。

次は風呂かとバスタブにお湯を張る。

一息つこうとソファに腰を下ろし。

ふぅ、と空に向かって息を吐く。


しん。


その空間。

たまらなく居心地が悪い。


すっと立ち上がり、俺は迷うことなく一点を目指して歩いていく。

カチャリと、ドアをあけて中に入ってみるも何もない。


最後の二ヶ月間、慶太が過ごしていた部屋。


あいつが出て行ってすぐはこの部屋は慶太の匂いが残っていて。

俺は家に帰るたびにこの部屋へと引き寄せられていた。

でもそれも今は消えてしまっている。

何も残ってない。

あいつを感じることが出来るものは何も。


こんなにもキレイに全て持っていってしまってるのに。

俺はあいつが出て行ったあの日までなぜ気づくことが出来なかったのかと思う。

洋服も、歯ブラシも。

写真もあのぬいぐるみたちも。

全部消えてしまった。


ただあるのは。

目を閉じたときに浮かぶ思い出だけ。

それも今では辛いものなのだけれど。


慶太は今、どうしてるのだろうか。

俺にそれを思う資格なんかないのだろうけれど。

あの男のところに行ってるんだろうな。

そしてあいつのそばで笑って…。


一緒に暮らしていたりするのだろうか。

あの男のために毎日料理を作って。

一緒に飯を食って。

一緒に眠って。



「……引っ越す…かな」


一人で暮らすには少し広すぎるこのマンション。

そして何よりも。

俺と慶太のものであるべきこの家に一人で暮らすのは。

とても、侘しかった。


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