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大学生編
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しおりを挟む六年半。
僕は幸せでした。
そんなわけねぇだろ。
お前が幸せだと思えた時間なんてその半分もないだろう。
幸せなんて。
なんでお前が謝る?
どうしてありがとうなんて言えるんだ?
慶太。
『玲人!』
『ちょっと玲人。掃除手伝ってよ。』
『ねぇ、玲人。』
『玲人…聞いてる?』
ふらりと立ち上がり俺は玄関へと向かった。
玄関口のポストを開けると、手紙に書いてあった通りに鍵が入っている。
その鍵を手にしてみて俺は驚く。
「……まだ持ってたのか」
鍵のついていたキーホルダー。
それは、少し光沢があせてしまっていて。
でも傷一つなくて大事に使ってくれていたのが分かる。
初めての俺から慶太への誕生日プレゼント。
キーホルダーなんてダサいはずなのに。
それなのに慶太は涙をこぼして喜んでくれたんだった。
二年目の誕生日にあげた指輪は今俺の手に握られていて。
三年目にやったこの家の鍵も今手元にある。
あいつにやったはずなのに。
全部自分に戻ってきてしまった。
そしてまたリビングへと戻る。
ドアをくぐる瞬間。
『あ、玲人。おかえりなさい。』
「…ただいま…」
そのまま俺はテーブルに着く。
目の前にある料理のラップを片っ端からはがして。
箸でつかんで口に運ぶ。
『ねぇ…おいしい?』
「うまいよ……いつも言ってるだろ…そんな何回も…聞かなくたって…」
これだけの料理を昨日慶太は作ってくれたんだ。
身体が辛かっただろうに。
箸を止めて立ち上がる。
ソファに座って目を閉じた。
(………くそっ!)
横においていた自分のかばんを壁に向かって投げつけた。
ぶつかって、床に落ちて。
その時かばんの中身が零れ落ちる。
いくつもの小さなぬいぐるみたち。
今朝コンビニを何件も回って。
慶太の持ってない、俺の見たことないものを必死で探した。
こんなの誕生日プレゼントにもならないけど。
でも渡して。
謝って。
そして。
「今度は一緒に買いに行こう」
そう言うつもりだった。
「………慶太」
『なに、玲人?』
『玲~人!』
『もう、玲人、野菜もちゃんと食べてよ!』
『玲人』
『ねぇ、玲人。』
『……好きだよ、玲人。』
「バカ……俺は…愛してる。お前も…そう言えよ」
なぁ、慶太。
お前は俺に誰かを守りたいと言う強さをくれた。
愛する人に愛される快楽をくれた。
でも同時に。
愛する人を裏切る狡さをくれた。
そして一人を愛すると言う恐怖感も。
慶太。
弱いのはお前じゃない。
俺なんだ。
逃げたのは俺なんだよ。
そして全てを失った。
慶太。
お前は俺の全てだった。
(大学生編終了)
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