僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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大学生編

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三月二十九日。

慶太の誕生日。

本当なら今頃一緒に過ごしてるはずなのに。

俺がいるのはビジネスホテルの一室。

家には帰れず部屋を取った。


どんな顔して戻ったらいい?

何を言ったって言い訳にもなりゃしない。

誕生日なのに。

きっとあいつは起き上がるのさえしんどいだろう。


ベッドに横になって天井を見つめる。

しみ一つない天井をずっと見上げて。

昨日は一睡も出来なかったのに今もまったく眠くなんかなくて。


帰ろうか。

いや、帰れない。

それの繰り返しだ。


朝が昼になって。

昼が夕方になって。

日が落ちて外が暗くなっても。

俺はその状態から動く事ができなかった。

そして。


ピピッ。

備え付けの時計がなる。


深夜十二時を回った。

三月三十日。

慶太の誕生日が終わった。


なぁ、慶太。

俺のこと待ってたか?

それとも、やっぱり帰って来て欲しくないと思ってるか?


約束だったのにな。

お前がなにかをねだるのなんて珍しいから嬉しかったんだ。


それなのに結局破っちまった。

ごめん。


ごめん。


すまない。


ごめん。


会いたい。


慶太。


ごめん。


顔が見たい。


明日。

俺、家に帰ってもいいか?


謝るから。

お前の顔を見て。

どんなになじられても殴られても。

何度だって謝るから。


「ばか」

そう言ってくれ。


そして。

仕様がない、って。

そんなあきれたような笑顔。

見せてもらえるまで謝るから。


慶太。

ごめん。


でもお前に会いたい。


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